富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-02-22

二月廿二日(木)築地の新阪急はサイト情報では客室ネット接続可ながら余の部屋はモデムでの電話回線での接続も能わず。ホテル側の言い訳によれば「じゃらん、など通してご予約いただたい場合の(つまり廉価提供の)お部屋についてはネット接続ができませんで」と。どうやら33階の(最低階)大川見下ろす北向きの部屋がそれに当たるらしい。ネット接続の提供くらい全館一斉に整備して良かろうものを。で、部屋でネット接続できぬ場合でも昨晩投宿の新橋の某ビジネスホテルはロビーでWi-Hi接続可。広州でもチェンマイでも同じ。「で、それじゃどうすればいいのかしら?」と問うても「あいにくネット接続できませんので」としかホテル側は答えられず。iPassで調べればこのホテルのある聖路加タワーにあるExcelsior HotelにWi-Hi提供あることを知り、朝7時30分からの営業開始に合わせ朝の珈琲とネット接続に参る。Z嬢と八時すぎに散歩して築地の場外。寿司清本店。カウンター15席のうち半数が香港人なり。寿司を好むはいいが「にぎり」コースで一通り食したあともでれでれと玉子を握れだの蟹を巻けだのと居続ける。外にはそろそろ客も並び始めた時間。ふらりとやって来る近所の常連も「あれ、満席だ」。板前もさすがに長居いの香港人らに「もう帰ってよ」とも言えず。さっさと食してお勘定の客には「どうもあいすいません」と親方。香港からの旅行者はどうやら10時の銀座のデパート開店まで暇つぶしの由。日比谷線で上野。国立近代美術館……ありゃ皇居北の丸だよ、上野じゃないよ、で竹橋まで引き返し。Z嬢の好みで国立近代美術館で開催中の柳宗理の作品コレクション展。うちには柳宗理は牛乳沸しのような鍋ひとつだけだが家具や陶器などばかりか東名高速中央分離帯や東京料金所防音壁(1980年)などもあることを知る。同館には荷風散人の?東綺譚が新聞連載の折に添えられた木村荘八による有名な挿し絵のコレクション(全33回の連載のうち初回からの33回分と最終回の下絵)もあり、これを初めてじっくりと見る。昭和の初めの玉ノ井の風情。更に、横山大観の展示部に「生々流転」あり40mにも及ぶこれも初めて直に見る。九段下経由で半蔵門線で渋谷。Z嬢といったん別れ東急ハンズに急ぎ皮用接着剤と好きな皮製眼鏡ケース購入。前者はレモン社製のライカの革紐が長さ調整すると余り部分が邪魔なための接着、後者は数年前に老眼鏡用に購入のものだが使い勝手よく近視用にも一つ。渋谷駅に戻りZ嬢と彼女の母堂と待ち合せ。お昼一緒に、ということで「元祖くじら屋」に食す。今では新しいビルの一角となっており。Z嬢母娘とまた別れ独り恵比寿経由で六本木。新国立美術館にポンピドーセンターの蒐集絵画からの「パリの異邦人」展を見る。かつて住んだ恵比寿の様変わりも驚くが六本木のこの美術館も確か東大の生産技術研究所だった場所のはず。戦前は軍の施設ゆゑの広大な敷地。生技研のあった頃、まだ余が高校生の時に塾の講師で、この生技研の研究生であった東大の院生おり、広島出身のその人に請い何度かここに忍び込みで泊めていただいたこともあり。で「パリの異邦人」はLeonardo Fujitaを見るのが主眼であったがTore JohnsonやWilliam Kleinといった白黒写真もけっこう展示あり観賞愉しむ。だが偶然の収穫は、この美術館の設計者である黒川紀章の作品回顧展がこの美術館の開館に合わせ開催されており、折りから「わけのわからない」都知事選立候補で、この黒川紀章展がかなり「変な意味で」注目浴びる結果に。同館関係者もまさかこの開館記念展の最中に黒川君が都知事選に立候補するとは想定外であったろう。これが新東京都美術館であったりしたらもっと可笑しいのだが。この美術館はコンセプトよろしく美術品の収蔵と展示でなく、まるで見本市会場のメッセの如し。それはそれでいいが開館したばかりなのに仕切りの壁が粗末。内装で用いられたのであろう接着剤の臭い蔓延が不快。せっかくなら内装も日本の木材用いて組木にするとか、工夫もできたでしょうに。大江戸線で新宿。常圓寺に母方の祖母の墓参。東口に出てちょっと遊び早晩に銀座。サンボアにZ嬢と待ち合せなのだが実は蘇州よりいぜん香港在住のI君が帰省中でI君とも待ち合せ。Z嬢には内緒でI君とハイボール飲み始めZ嬢が来て驚かせる嗜好。で三人で面白可笑しく飲む。I君と別れZ嬢と茅場町。天麩羅のみかわに食す。相変わらず美味秀逸。天つゆを全くつけず食すと素材の旨味がじつによくわかる。親方も若衆も揚げ場は全く無言のまま。張りつめた緊張感が、揚げが一段落した親方がちょっと柱のかげにかくれ煙草一服した時にだけ、ちょっと一段落。これほどの店なのに外で待つ客に店を出て来た先客が「この店、そんな有名なの?」だの「おい、領収書もらってないよ、領収書」だの、と野暮な奴ら。この「みかわ」の天麩羅で東都の最後の〆。

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