富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-12-28

十二月廿八日(木)通信不通依然続く。香港では死活問題的に通信混乱報じるが日本では「東南アジアで海底ケーブル断線による通信不通が」的見方で「中国株取引など停滞」「台湾などへ旅行の際にはローミングが使えないなど不都合があるので注意が必要」と彼岸の火事の如し。今朝の朝日にはこの通信不通について記事もなし。日本ではよっぽど中国株の売買であるとか香港のバンキング活用でもしておる方除けば日本〜アジアへの通信線が断絶しようとほとんど支障なし。アジアにあって、のはずの日本の環境が顕わになる。通信などもいかに国内に閉じた世界か、の証左。これで日本が宗主国たる米国との生命線である日米線が不通になった場合はどの程度の騒ぎと混乱になろうか。安藤更生著『銀座細見』読む。昭和6年、当時『東洋美術』創刊し編集長であった安藤更生が春陽堂より刊行しベストセラー。昭和52年に出た中公文庫版を暫く前に入手(絶版)。初版当時、著者はまだ32歳。『柳橋新誌』の柳北ほどぢゃないが、大正4年、16歳で初めて夜の銀座を散歩してカフェプランタンに入った更生は32歳で「銀座の灯は今でも僕の心を誘って止まない」としつつ「だが、もうオサラバだ。銀座よ、僕は忙しいんだ。(略)僕にとっては懐かしいあの自由主義的な古い銀座の面影は消えてしまった」と、この『銀座細見』を綴る。当時の銀座はまだ若者の街と言う。戦前まで銀座の他に浅草、御徒町、神田、日本橋と賑やかなのは想像に易いが神楽坂が「東京でも有数の」繁華街だった、というのがどうも戦後生まれのアタクシには想像つかぬ。更生も荷風散人と同じく震災で古き良き銀座の全てが失われた、と思う。時代が進むにつれ銀座なら銀座がどんどん賑やかになる、と思ったら間違い。震災前の銀座で市電が止まるのは午前二時。震災後、風紀取締りなど厳しくなりカフェなどが深夜零時の閉店余儀なくされ銀座の夜は早まる。この『銀座細見』は何といって「カフェ細見」が圧巻。ライオン、タイガア、プランタン、サイセリヤなど一軒ずつ、人気の女給の風評、当然、荷風先生ら銀座に遊ぶ文人たちの逸話など興味深い。デパートは震災後、銀座に進出する。三越は国光生命、震災で今川橋の店を焼かれた松屋は徴兵生命の会社家屋の賃貸。キリンビール明治屋資本、とあり。晩に夕飯済ませてから遅くに自宅近所の映画館で独り、007、ジェームス=ボンド物の新作『カジノロワイヤル』観る。ロードショー公開映画殆ど観ぬがアクション物は好き。それでも007など二十年くらい観ておらず、だったが、ふと父に連れられ七歳の頃だったか学校帰ってくると「映画見に行くぞ」と連れて行かれたのが007で、映画など東映マンガ祭りなど除けば幼稚園の時にザ・タイガースのファンでザ・タイガース主演のアイドル映画を見に若い叔母に連れて行ってもらったくらい、それが父に突然、映画に連れて行かれ、子どもながらにジェームス=ボンドとボンドガールの濡場に目の置き場に困りながら「これは大人の映画、だが面白い」と手に汗握り見た記憶あり。映画跳ねてから近所の、父の馴染みの焼鳥屋に連れて行かれ「もう十時……」と翌朝、学校に果たして起きられるか、と気になった記憶、鮮烈にあり。あの007はゴールドフィンガーだったかしら。で突然、父と一生で唯一一緒に見に行った映画の記憶から007の映画が見たくなった次第。(以下、映画の感想につき注意)007、確かDr Noであるとか世界征服を企む悪の集団との戦い、冷戦下でのソ連という悪の枢軸、でだんだんとエキサイトして確かスペースシャトルで宇宙にまで飛び出した、と記憶するが今回は「カジノロワイヤル」という原点回帰で、ウガンダの革命組織やテロ組織から資金調達し、飛行機処女飛行の飛行機爆破して航空会社破産させ航空会社株持つ大口投資家に損させたりモンテネグロのカジノで豪遊する相手が「敵」なのだから、話はこぢんまり。で、その「敵」を倒されたまま終わってしまいそうで一瞬、???であるが、真の敵がテロリストではなく実は「投資家」である、という、投資家ほど怖いものない、世界は投資家のために回っている、という教訓を与える点で面白い。帰宅してウオツカマティーニ飲む。
▼香港の恒生指数が史上初めて20,000の大關突破。香港の好景気に加え大陸企業の香港上場続々で上昇気分。
▼行革相の辞任で後任に選ばれた渡辺喜美君。名前もオバサンっぽいがあのまま喜劇の舞台でオバサン役やらせたら背丈といい体格といい、頸から頭が前に一つ出ている姿勢といい、ミッチーゆずりの訛りでぶつぶつと文句言わせたら適役。安倍三世からの大臣昇格の知らせは深夜だったそうで翌朝になってその安倍三世からの電話について「熟睡体制でしたからあまり記憶にない」と。熟睡体制?
▼数日前の新聞読み返していたら朝日で論説主幹若宮啓文君が連載の「風考計」という月イチの連載が終わる、とあり「マスコミ言論はナショナリズムの道具ではない」と述べる。言いたいことはわかるが
「キミには愛国心がないね」 学校の先生にそうしかられて、落第する夢を見た。
なんてフレーズが同じ「こんな夢を見た」でも御大・加藤周一と比べてしまうとまだまだ。「君が代」に民主的な二番の歌詞を、など四十回に及ぶ連載では珍説も少なからず。どこかマスコミ志望の大学生が書いた「論説委員の随筆」的な青さがこの人らしさ、か。この人だから読売のナベツネさんが朝日の『論座』で対談に応じた、という風説もあり。
▼今日になってNTTコミュニケーションズ(株)が「26日21時30分ごろに台湾南西沖の海底を震源として発生した地震の影響により、台湾南西部の広範囲で多数の国際通信用海底ケーブル群が損傷し、ユーザーの通信サービスが利用できなくなっている」と発表。そんなこともう旧知の事実だろうに。

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