富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-12-25

十二月廿五日(月)聖誕節休日。快晴だが何かと机まわりの雑事片づけカメラの手入れなどして、ふとライカのレンズにフィルターをきちんとつけていない、ということが気になる。で木村伊兵衛はどうだった?と気になり朝から月刊太陽の『木村伊兵衛の目』(1999年7月号)や94年5月号の『土門拳の日本』なんて読む。そういえば赤瀬川原平が香港を撮影しまくった芸術新潮があった、植草甚一翁の愛用したカメラは?などと気になり、いろいろ雑誌など捲っているといけない。あっという間に昼になってしまう。最近は銀座菊水オリジナルのパイプを愛用していたが掃除しようとすると中の真鍮のフィルタの破損に気づく。次に銀座に行くのは来春になろうし久しく使っていなかったStanwellのパイプを出して磨く。吸い口がエボナイトなのでエボナイトというのは万年筆でもそうだが使って手脂がついていないと早く傷む。応急措置で「そんなのあり?」でサンダルウッド樹脂で磨いてみる。エボナイトはもともとは確かゴムに硫黄を混ぜるかしてできた素材なので「こんなのもあり」と勝手に決めつける。パイプを磨いたところで愛煙家の多いFCCですら禁煙条例発令に合わせ今月末で館内全面禁煙。公園もほとんど禁煙になるのでパイプをゆっくり吸える場所など本格的なバーくらいになる。昼過ぎに湾仔。永華麺家で薑葱撈麺。美味。Protrek野外運動用品店冷やかして湾仔の市街をふらふら。銅鑼湾。GRデジタルの専用の皮カバーは上品でいいのだが山へ持って行くにはHeavy Dutyには合わぬので山にデジカメ持参する時のためのカバーが欲しいのだがProtrekにもないから銅鑼湾の山屋へ行っても置いておらず旺角花園街のアウトドア屋へ。沢山種類ある。最初から旺角に来れば良かった。尖沙咀。香檳大廈のカメラ屋は祝日で休みか?と心配だったが間口一間の数件除き大方が営業。朝のカメラ話に戻るがレンズにフィルターを結局付ける結論に達して、ただズミルックス50mm用の43mm、それにズミクロン50mmとエルマー90mmのための39mmのフィルターなんてそこいらぢゃ売っておらぬので香檳大廈に寄った次第。陳?相機公司(David Chan Company)で安物がないか?と物色したが女将に「ライカなら純正があるから、安くするからちゃんとしたの使いなさいよ」と発破をかけられ上品の中古2枚(新品だと言われたら信じるだろう)と新品1枚を入手。中環。中環はちょうど午後三時くらいで、この時季だと陽光が信じられないくらい面白い角度からさすのがいい。普段見慣れた中環の風景が全く別の次元の光空間と化す。ただしそれも三時半くらい迄。もう太陽は大廈の背後にすっかり隠れてしまい写真撮影はお終い。中環のカメラ店何軒か冷やかしてFCCに寄る。『外交フォーラム』を半年分もためていたので通して読む。ハイボール三杯。早晩にZ嬢FCCに来て軽く夕餉済ます。聖誕節にはしゃぐ人々多く満載のスターフェリーで尖沙咀。香港文化中心にて主に瑞西人の演奏家によるピアノ七重奏の演奏会(こちら)あり参観。この演奏会の切符発売の告知を見たのがちょうどマーシャ=アルゲリッチら世界的な十人のピアニストによるThe Verbier Festival & Academy 10th Anniversary Piano ExtravaganzaをDVDで見てしまった直後だけに今回の七重奏の曲目すら注意することなくチケット求めたのだが後になって気づいたのはチケットのMagical Christmas with Piano Sevenという題目。聖誕祝う曲のオンパレードか、と覚悟して会場に赴けば会場には案の定、クリスマス気分の子連れ家族や若いアベック多し。……で演奏始まると「会場の誰もが、えっ、と驚いた」「これって城達也ジェットストリーム?」な感じのクロスオーバーなイージーリスニング環境音楽っぽい曲が延々と続く。確かにピアノは七重奏なのだがバイオリンとビオラに打楽器が入り曲が変わっても「まだ続いてる」というくらいクロスオーバーなイージーリスニング環境音楽が続く。会場の観衆の多くがクリスマスな気分に浸るはずが「こんなはずじゃなかった」と思いつつ所詮イージリスニングなので拒否までもせず楽しんだかしら。あたくしは個人的に全くダメ。帰宅して今日の写真だけ整理して中井英夫の短編を少し読んで寝る。
▼月刊『外交フォーラム』について。外交や国際関係論の専門家相手の硬い雑誌という印象強いが7月号の中東情勢特集など素人が読んでもわかる平易さでかつ専門的に気鋭の酒井啓子鈴木均(アジ研)なんて研究者が書いている横でサラーム海上なんて人が中東音楽を語っている。9月号だったかではサンクトペテルブルクでのサミットが数頁にじつにコンパクトに内容まとめられており薮中三十二がサミット舞台裏を語る。11月号の伊那久喜(日経論説副主幹)による小泉外交の総括も一読に値する。かなり面白い専門誌、と認識。これを出しているのが都市出版。月刊『東京人』も同じ。この『東京人』は3年くらい前に特集がマンネリ化している気がして松葉一清の巻頭言が終わったのを機会に購読を止めた。『外交フォーラム』に『東京人』の広告が出ているのだが06年9月号なんて特集「占領下の東京」は半藤一利井上ひさし五百旗頭真の鼎談、映画『太陽』をめぐりソクーロフ監督が篠田正浩相手に語り、文楽特集もあり面白そう。でもまだ年に一回は中央線特集もあり。

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