富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-11-10

十一月十日(金)晴。ずっと晴れの日続くが数日前の爽やかさに比べ今日は無風の暑さ、且たヘイズの蒙霧あり本日今年のTrailwalker開催で参加者にはさぞや過酷かと察す。晩に尖沙咀東の一平安。核攻撃受けても此処なら助かるのでは?というくらいビルの地下奥まったところにあり。かつては確かビルの半地下に入ると吹き抜けでこの地下二階のラーメン屋が見えた気がするが。更に地下三階も構造的にはあるが数年、此処は虎塚古墳どころかチェルノブイリのように棺のように厳封されエスカレーターすら「なかったことにする」ような封印ぶり。此処にかつては屯する若者がかなりおクスリ関係で警察のご厄介になったディスコあり。一平安ではZ嬢と待ち合せ湯麺を食す。科学館にて寺山修司の映画特集で今晩は『書を捨てよ町に出よう』観る。何といっても美輪明宏の地獄のマヤ役が絶品。口跡の良さ。わずか二、三分のシーンだが本当に素晴らしい。あらためてこの映画観て、結局は「私」が大人になろう、男になろうと足掻き、結果的には最後、父に買い与えた屋台が警察の取締りに遭った時に警察に反抗しショッぴかれる、その時にようやく大人に、男になれたこと。大人になる、男になるために先輩でも娼婦でも父殺しでもなく実は<警察>が要る、ということの象徴的意味考え面白いと思う。寺山修司について、ふと思ったことは、天井桟敷や『書を捨てよ』で登場した寺山を同時代的に知るには私は当時は幼すぎ、作品こそアトから観ても、実際に寺山が目の前に具体的に現われたのは1980年のアパート「のぞき」事件での逮捕で新聞の社会面に顔写真入りでの報道。これが最初。そして寺山本人よりもタモリによる寺山修司の模写「例えば此処に灰皿があります。灰皿は灰皿ですがここに宇宙があるわけですね。宇宙というのは……」に親しんでいた。この『書を捨て』の映画の制作者にせよ、寺山ばかりか作中ピンクフロイドのように流れる音楽のクニ河内テレビ朝日の」夕刊タモリこちらデス」(同局で筑紫哲也キャスターデビューした「こちらデスク」日曜午後6時から、のパロディ番組で6時半より放映されていた、確か1980年くらい)にクニ河内が出演していたから、であり、それに中島みゆきの歌う「わたしはカモメ」で荘厳なパイプオルガンでの編曲もこの人であった。それにこの『書を捨てよ』の映画の美術担当の榎本了壱萩原朔美に続く雑誌『ビックリハウス』の二代目編集長であり余は彼の主宰するジャパベン合衆国?だかの国民証を中学校の生徒手帳に忍ばせていたもの。何かと懐かしい。映画撥ねて一平安と同じ飲食店街にある五味鳥。焼き鳥数串とチューハイ二杯。
▼教育改革に向け民意汲み取り意図したはずの政府主催タウンミーティング文科省側が質問案作成や出向者ら関与の「やらせ」かなりの数が発覚。市民の声として政府案への積極的な発言演出など悪意露骨。ただ安倍三世など「やらせ」発覚でも「国民との信頼関係を危うくしてしまったことは大変残念で遺憾だ」としつつ「二度と(やらせが)起らないように徹底しながら、タウンミーティングを大切な対話の場として生かしていきたい」と宣う。最初から国民との信頼関係などないし対話の場などもない。ただ既成事実としての場の存在さえ「あったもの」でよいのだそう。国民もこのような「やらせ」に憤慨するほどの意欲もないから安倍晋三教育基本法改正とこのタウンミーティング「やらせ」問題は別、として「教育改革を進めていく上においても、速やかにこの教育基本法の成立を図りたい」などと宣うし自民党国対委員長の二階堂某も教育基本法を60年ぶりに改正しようとしていることに比べたら「タウンミーティングでやらせがあったなんて、やる方もやる方だが、誠につまらなん」とまで言い捨てる。ここまで民意など形骸化するなかで(それが事実としても)政治家が民意なんて関係ない、と言い放ち、それを放置しておくのだから最終的な責任はバカな政治家でなく国民にあることは明らか。
▼米国でラムズフェルド国防長官辞任。実質上の更迭。ブッシュ二世のスケープゴートとして葬られる、か。それにしてもこのラムズフェルドの発言
As we know, there are know knowns; there are things we know we know. We also know there are know unknowns; that is to say we know there are some things we do not know. But there are also unknown unknowns - the ones we don't know we don't know.
という珍紛漢紛や、小泉三世の「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だ」発言に勝るともおとらぬ
We do know that he (Osma bin Ladin)is either in Afghanistan, or in some other country, or dead.
も珠言に値しよう。だがいずれにせよ中間選挙の結果を見てあっさりと国防長官更迭するところが民意反映といえば民意の反映。紐育タイムス紙は8日の社説で“Post-Election Job Number One”と評す。中間選挙といえば、同紙でThomas L. Friedman氏が“this needs to be our last election about Iraq”と述べているが米国民の本音であろう(勝手に征伐に行っておいて今更、と憤慨も感じるが)。同日のもう一つの社説は民主党の勝利は反ブッシュ、反共和党への a negative victory であるとして民主党は具体的な政策の建設が急務、と指摘。昨日の信報でも林行止専欄は、民主党の勝利とて(イラク問題などでなく)米国が好景気で株価など上昇するなか給与所得階級が何ら恩恵得ぬ現実に与党共和党の票が民主党に流れたもので民主党の免費午餐=TANSTAAFL(There ain't no such thing as a free lunch)的な福利主義をもってしてもブッシュ政権がいくら弱体化しようと拒否権行使ができるわけで余り大きな改善は観られぬだろう、と冷やか。御意。
▼数日前の信報に葉劉淑儀(元保安局長)の「恥辱之柱」という文章あり。香港観光業の弱点につき述べるが「恥辱之柱」は六四、天安門事件で香港で建立されたモニュメントで現在、現物は香港大学にあり毎年の六四追悼の象徴。その「恥辱之柱」を文章の題にするあたりが葉女史らしい。で内容は、といえば、先日報道された中国からの旅行社に高い買い物させてそのバックマージンで旅行費用から収入得られぬガイドらが糊口を凌ぐ実態取上げ「捕虜市場」と呼んでみせる。香港政府は観光事業振興と大型投資続けるが実際には、広東省からの日帰りでは多くホテルなど恩恵は得られず、旅行団送り出す旅行社とて、それも机一つに電話とPC一台の個人営業が多く、そういった零細代理店の収入が増えたところでそれがどう経済に反映するの?、と。弁舌ぶりは相変わらず。ただしこの一文、最後は、観光は観光でいいが、そんなところに公的資金投資するよかハイテクへの投資のほうがよっぽど経済効果あり、とちょいと結論は安易。

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