富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-06-25

六月廿五日(日)朝六時に目覚め濃いめの珈琲煎れ珈琲飲みながら今週溜まったメールいくつか返信済ませネット支払いの決済など。美空ひばりの「真っ赤な太陽」思わず口遊むほどギラギラとした陽射し。朝のうちに雑誌の整理。アサヒカメラならアサヒカメラのうち残す必要ないと思う200頁くらいバッサバッサと頁を剥がす。勝手に植草甚一流と思っている。アサヒカメラ六月号で残ったのは銀塩フィルム特集、ベッサのレンジファインダー機、ニコンMFレンズ、銀塩スキャナー特集、ニコンD200で撮る風景写真、といった具合で土門拳木村伊兵衛のグラビアなどはきれいに剥がして保存。土門は路上でベーゴマで遊ぶ子どもら(1953年)で木村伊兵衛は明らかに神谷バーデンキブラン三杯に酔って心地よくウトウトとする帽子に背広姿の老紳士の姿。表紙と背表紙はそのままで開くと必要な頁だけが残っている感じ。保存するならそこまでしなくても一冊とっておきたいが引越になると雑誌の重さが三分の一なのはかなり大切。昨日に比べればまだ陽射しも(弱いとは言わぬが)少し柔らかそうで午前十時くらいに勇んで家を出てみればやはり陽射し辛辣。裏山から登りMount Parker Rdも涼しい季節なら小走りするがさすがにヘトヘト。大潭を下り満水の大潭ダム眺め灼熱の太陽の下かなりや坼ぁい暑さだがどうにか走り続け島南の海岸の木陰に辿着く。木陰でフランシス=フクヤマ『歴史の終わり』下巻通して読む。読了。「歴史の終わり」が言及される迄、哲学史としての部分ではヘーゲルであるとかニーチェの解釈など教科書としていい部分もあり。但し米国が民主主義の完成形の如く節操なく前提とされ語られることが遺憾。そして何の脈絡もなく「歴史を脱した地域」(脱歴史世界)と未だに歴史にしがみついている地域(歴史世界)という見方が表れるのも余りに唐突。世界はフクヤマ氏が考えるほど簡単に脱イデオロギー化もせぬし伝統や宗教の束縛も寧ろ近年強まっている事実。反共主義として共産主義の終焉まではフクヤマ氏も見据えられたが冷戦後に非常にプリミティブに原理主義だの民族主義が沸く世界。そう簡単に歴史は終わらぬし民主主義と自由主義の恒久なる脱歴史世界に世界をせぬよう歴史世界に固執するのが米国なのかも知れない。夕方までに麦酒二缶。Stanleyからミニバスで柴湾経由でジムでひとっ風呂浴びて帰宅。枝豆と麦酒。お好み焼きしながら踊る大捜査線「秋の犯罪撲滅スペシャル」DVDで観る。
朝日新聞の教育面で「教育基本法、着地点見えず」と今国会で五十時間審議の教育基本法改正が次国会に先送りされた経緯まとめ「文科省シナリオ狂う」と。早稲田大学憲法学の西原博史教授が改正案は(愛国心などが注目されているが)二条で「教育の目標」を掲げ十六条以降の「教育行政」規定を使って文科省が「教育とは何か?」を定義し学校や社会に貫徹していくという戦略に基づいた文章、と教育基本法の改正案を分析し、その文科省の意図を野党どころか与党の委員も理解しておらず。子どもの心をどう育てるか、それを官僚組織が定義して教育現場に「下ろす」怖さが浮かび上がっておらず、と。その上、この怖さと逆に何より面白いのは小泉三世の発言。福岡市の小学校が社会科の評価項目に愛国心を入れたことに対して「あえてこういう項目をもたなくても良いのではないかというのが率直な感想であります」「小学生に対してね、愛国心があるかどうか、私はそんな評価なんか必要ないと思いますね」と発言に、西原教授はすでに学習指導要領に入っている愛国心なのに小泉三世が必要ない、と答えてことで文科省のシナリオに狂いが生じた、と。この小泉発言を今国会で唯一の建設的なやりとり、と西原氏。小泉三世を「何を言われても靖国参拝を続けた「内心の自由の大家」、小泉さんならではの発言」と(笑)。

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