富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

三月十五日(水)多忙極まれり。その日の新聞数紙読むも能わず。ふと朝日新聞社会面みればライブドア粉飾決算の記事。ライブドア関連記事は殆ど読まぬが「香港舞台に原資作り」という見出しに、ライブドアで久々に闇金融都市として香港注目集めたことから、つい記事を読むが、何が朝日の記事で嗤えるかといえば記事の書き出しで
「アジアの金融センター」といわれる香港の中心地・香港島北岸。超高層ビルが建ち並ぶ一角の56階建てビルの中に……
と陳腐な文章で、何より可笑しいのは「香港島北岸」。何処かしら。普通なら
アジアの金融センターといわれる香港の中心地・中環(セントラル)。
であろう。確かに地理的には中環は香港島北岸ではあるが、どうも響きが違う。何より中環を香港島北岸という言い方がないこと。これは日本人が年に百万単位で来るのだから日本でも常識の範疇。何よりも書き手(記者とは言わぬ)が中環をば香港島北岸とまで言えるのは土地勘があるからで、それなら余計におかしな表現。香港島でもリパルスベイやスタンレーなどはSouth Sideと言われ、我も日剰で「南岸」と書くが、これはサウスサイドという言葉に明るい太陽と海という、米国のウエストコーストやイーストコーストと同じく「言葉にイメージがついている」から。倫敦のテムズ川南岸のサウスバンクと同じ。セーヌ川から「サンジェルパン・デ・プレからセーヌ川を渡ると北岸にはサマリテンヌ百貨店が……」なんて書き方でお洒落っぽいのだろうし、香港でいえば象徴的なるヴィクトリアハーバーでいえば中環は寧ろハーバー南岸かもしれぬ。繰り返すが中環を香港島北岸なんて言い方は、ない。
▼歴史教科書の「つくる会」も教科書の全国流布をまえにすでに内紛活発。ついに西尾幹二センセイまで脱退の幸甚。まるで左翼の内ゲバの如し、と見る向きも多いが右派もこれだけ一方的に強くなれば最早「右だから」というだけじゃ一致点を見いだせず。かたや左翼とて中核も革マルも仲良く並んで同じ集会に出ている時代。内ゲバの余力なし、と武蔵野の市民運動家D君より。
▼ふだん余の日剰にて他人の言動は紹介せぬことを原則としながらも築地のH君からの話にかぎってはかなり紹介するのは先ずその内容が興味深きこと、亦たH君自身が自ら話題公開する場をもたぬゆゑ、この見識をばせめて紹介できれば、と。H君の言説の他には余がかなり興味あるのが久が原のT君の日記(未公開)。で築地のH君より神戸地裁の「さい銭2円「大切な浄財」窃盗男に実刑」という判決教えられる。
寺のさい銭箱から二円を盗んだなどとして、窃盗罪などに問われた神戸市兵庫区、無職の被告(27)の判決公判が十四日午前、神戸地裁であり、裁判官は被告に懲役一年十月(求刑懲役三年)を言い渡した。被告はほかに乾電池を盗んだ罪や、シンナーを所持、吸引した罪でも起訴されており、裁判官は「結果的に金額は二円にとどまったが、被害者からすれば参拝者から提供された大切な浄財であり、被害額のみをとらえて、その違法性を軽視することはできない」と述べた。判決によると、被告は昨年十月二十四日午前六時ごろ、同市須磨区須磨寺大師堂のさい銭箱から二円を盗んだ。(神戸新聞記事)
と。社会面で読み過しそうな判決にすぎぬようだが、H君指摘するは、まず「被害額のみをとらえて」って裁判なのだから何よりも被害額は争点のはず。かりに賽銭箱に2億円はいってたら懲役1年10カ月じぢゃ済まぬ話。被害額以外の要素を反映させるなら「さい銭泥棒は、ふつうの泥棒より重罪」という法律上の根拠が要るはず。「違法性を軽視」せずとも、では賽銭以外のところから2円盗んでも同じ量刑なのかどうか。かりに2円拾って交番に届けても巡査が遺失物として取り扱ってくれるかどうか。この論旨でいくと「2円だけど、さい銭泥は重罪だ」と言うようなもの。賽銭だろうが財布だろうが法律上の罰は盗んだ金額や被害実態に応じて科せられるべき。このロジックが通れば「ホリエモン粉飾決算といったって、どうせ被害を受けた連中は欲得ずくの投資家連中なんだから、違法性は低いでしょう」ということも可。この裁判官が「心の問題」と法律論を混同してしまっている危険性。
▼同じく築地のH君より、余はWBCと言われても何のことかわからぬほどスポーツ無知であるが、今回のその職業野球の国際大会(主催者が米国で開催地も米国)の日米戦で米国に意図的な誤審?があり(審判の米国側)米国隊をば救済。これにかなり我が国の世論も憤然としたそうだが、H君が思い出したのは大相撲の準場所。仙台での準場所といえば夏巡業の間、宮城県スポーツセンターで7日間の興行。主催は河北新報社で優勝者には河北から優勝旗と賞金が出る。優勝争いは決まって青葉城青葉山の両青葉。北の湖とか輪島に青葉城勝って当然。地元の勧進元が地元力士に勝たせるための興業で観客ももちろん知った上で郷土力士の奮闘に大喜びの花相撲。輪島が横綱相撲したらドッチチラケ。これで考えれば米国主催の野球試合で、もさもありなむの話。ところでこの「インチキ」に我が国の世論が怒るのは当然としても実は朝鮮日報はきわめて日本に同情的。恥知らずなアメリカのふるまいを非難。こういう場合、韓国メディアは日本を「同じアジアの仲間」「同胞」としてくくってくれる事実。荒川静香の金メダルも新華社は「アジアの誇り」という見出しで報じたこと。これは日本人には決定的に欠けてる視点。韓国や中国に対して「同じアジア人」という仲間意識をもってる日本人、メディアがどれだけあるか。むしろ小泉三世を見るまでもなく日米中という枠なら「日米−中」だし、日米韓なら「日米−韓」。右翼をなのりながら親米で反アジアは本居宣長以来の日本の伝統思想か。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/