富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-01-11

一月十一日(水)晴。ついにインテル搭載のMacbook Proが発売。思わず「今すぐ購入」ボタン押しそうになる。iPodの宣伝(こちら)とかもセンスいいなぁ。一歩間違ったらApple社のイメージぼろぼろにしそうなのに。諸事忙殺され遅晩に至り帰宅。ドライマティーニ一杯。葡萄酒一杯だけで鶏肉のシチュー。芸術新潮光琳特集を続けて読む。紅梅は中村内蔵助、白梅は光琳、流水は光琳のレコの「さん女」と見る小林太市郎の説などの更なる新解釈など面白く読む。J.T. Leroy(詳細は後述)のペーパーバック本を書棚で捜していたらRem Koolhaasの『錯乱の紐育』(筑摩書房)見つける。奥付みたら95年の初版。いつになったら読めるのだろうか。
▼香港政府教育統籌局の常任秘書長(政府の事務次官級)のFanny羅范椒芬(元・教育署長)が数日前、先週二人相次いだ教員の投身自殺について教育制度改革でのストレスとする見方に対して「もし原因がそうなら、なんで二人だけなのかしら?」と暴言吐く。この羅太、SARSの時には政府の学校休校措置やマスク着用に従わぬインターナショナルスクールがあることについて「インター校に通う家庭は衛生観念の水準が高く」等と例外認める発言など政府高官の中でもかなり「?」な人物。でこの発言。一昨日のラジオ番組でも発言の撤回や謝罪はせず、電話で現役の女性教員が嗚咽ながらに教育制度改革はかなりプレッシャーであり、もし自分が遺書にそれを認めて自殺したら……と訴えたら、ようやく謝罪を言及。このFunny羅(このFunnyという英語名は嘘ではない)もFunnyなら教育統籌局長の李國章教授(東亜銀行頭取の李Baby國寶の実弟)もFunny羅の発言を弁解するどころか「制度改革に不満なら早期退職の制度もある」と追い討ち。政府高官のこの為体。こんな連中の高給のために納税している誇り感じ入るばかり。
▼信報を李嘉誠(の長男)が買収に意欲、という噂流れていたが蘋果日報で李八方がこれを事実と断定。悪夢。李嘉誠財閥の粗野なる市場独占で新聞マスコミも欲しいのは当然であろうし、億万長者でも黎智英氏が蘋果日報であれだけ個性だせば李嘉誠なら下手な新聞出せず信報なら、なのだろうが、信報の良さは資本的に独立していることでの報道の自由と不偏不党。中共要人も愛読し、発行部数は少ないが中国政府の経済政策にも影響を与えるというほどの、所謂クォリティペーパー。であるからこそ、李嘉誠など財閥傘下では台無し。中央公論が読売傘下になるが如き惨状。李嘉誠の財閥もかつては香港の経済成長の象徴であったが、今ではもはや何でも食い尽くす暴獣である。
▼昨日のSCMP紙に米国の若手作家 J.T. Leroy に関する紐育タイムズの転載記事あり。Leroyは彼の処女作“Sarah”と“the heart is deceitful above all things”を余も(信報の読書欄の批評が面白く)03年の秋に読んだが、この“Sarah”のブックレビューをそのまま写せば「アメリカ南部の田舎町でトラック運転手相手の娼婦や男娼たちが住むこの町に母の愛情に飢えた12歳の少年あり、少年は娼婦である母の真似をして女装、その美しさ忽ち噂となり、母の名である“Sarah”と名乗りナンバー1の売春宿で働き始め、故郷の町を離れ……」と。これがほとんど自伝。幼い頃に受けた虐待の話などを続編“the heart is...”で生々しく綴る。日本では角川書店から『サラ、神に背いた少年』で邦訳あり、こちら。で、その少年はサンフランシスコで出会ったLaura AlbertとGeoffrey Knoopという男女に地獄から救出され、ぼろぼろになった少年の手記に類い稀な文才を見た二人が少年を文芸界に送り出し、その著作はたちまちベストセラー。ただ少年は精神を切り裂かれた過去から少しずつ回復中とのことでマスコミにも登場せず写真も大きな帽子にサングラス姿。世間はこの傷ついた少年に優しい愛情の眼差し……ということであった。……のだが、何が「ありゃま!」かと云えばネット上に掲げられた一人の少女の画像が、そのLeroy少年に瓜二つ。そればかりか、その少女はLeroyを世に送り出したKnoopという男の義理の妹。Leroy少年の著作の出版社の編集者、Leroy少年のエージェントの担当者、この著作を原作に映画化したプロデューサーなどの誰もが、その少女の写真を見て「Leroyに間違いない」と。Laura AlbertがLeroyという架空の人物に成りすまし物語を綴った、という昨年10月の『紐育』誌の記事がこの疑惑の先鞭となり、The Times がLeroyが紐育タイムズに寄稿した巴里のディズニーランド探訪の記事をもとに取材したところ、巴里でLeroyに遭遇しているディズニーランドやホテルの職員は口を揃えて、Laura Albertと思われる女性がLeroyと名乗っていた、と報道。ホテルの職員にLeroyは「3年前に性転換の手術をした」と語った、そうな。いやはやなんとも、な作り話。日本でも「逸材」「天才」と称賛され、Leroy関連サイトでは「1980年、ウエスト・ヴァージニア生まれ。 サンフランシスコ在住。5.5フィ?ト・130ポンド」 とまで取り上げていたが当然、サイトは消滅(こちら)。それにしても、あれだけ注目されたのにウエスト・ヴァージニアで「こんな娘、いたけ?」と話題にならなかったのだろうか。
自民党では山崎拓さんが自民党内の中国脅威論や小泉三世提唱の国民参加型の党総裁選、安倍晋三の「靖国は総裁選の争点にならない」という主張などに苦言呈す。さすが山崎さん、の良識。森さんと並んで余はかつて山崎さんを「自民党の非常識」の最たるもののように思っていたが、それは撤回。同志社大学の華(笑)、村田晃嗣センセイも週刊朝日で「中国・韓国が現に『外交問題』にしているのですから、小泉さんの論理はまったくナンセンスです。主張を認めるかどうかは別にして、相手側にも『心の問題』があるのですから」と。

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