富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2005-12-01

十二月朔日(木)快晴。旧暦も十一月朔日で暦上では寒さ厳しき季節のはずが冷房が欲しいほどの陽気。陽気といふより狂気の異常気象。「文明」の快適なる生活の享受でもはや引き返すこと出来ぬほどの自然環境破壊に至っているのか。12月に入りふと思えば8月だかに注文予約したタイムシステムの新年版のリフィールが届いておらぬ。香港でタイムシステム扱う会社は何かとトラブル多く昨年も配達のはずが12月24日にだかその会社の事務所まで受領に行けば年末のクリスマス前の慌ただしいなか土曜日だったかの事務所で大量のデリバリー手配に女性職員が小学生の息子まで手伝う様に何と難儀かと感じ入ったが今日も恐る恐る電話すると「今年は扱わないことになりました」と。何を今更、である。注文までとっておいて、百歩譲って今年何かの事情で商品扱わぬ決定があったにせよ、せめて客に連絡するのが道義ではないか?と質すと「注文数が多いので順次やっている」との話。あまり信じられず。もう12月である。PDAだの電子手帳の流行の煽りで従来の、紙の手帖、とくにファイロファクスなどシステム手帖は80年代の全盛の頃に比べると苦戦を強いられているのだろうか。こういう時代だからこそ紙の、システム系の手帖にこだわり続けているが、こういう取扱いの中止など困ったもの。仕方なく英国のネット販売を利用しようと思えば?50余の商品に送料が?60余と驚くばかり。ダメもとで日本の取扱会社に電話すると香港から他にも何人か引き合いがあったそうで事情はお困りでしょうからEMSでお送りします、とありがたい。「ビジネスで忙しいあなたに!」というタイムシステムは我にそぐわないかも知れぬが、確か仙台の丸善書店で店頭プロモーションしていた1986年くらいからか愛用。仙台の丸善といえば84年だかに富士通の当時22万円もしたOasis Liteを衝動買いしてしまったのも此処であった(A4サイズでわずか2頁のメモリとは……)。で日本の取扱会社では英語版のリフィールも数部残っている、とのことで愛用の英語版を得ることになる。早晩に、といってもすでに日暮れてはいるがジムに寄り帰宅。最近の帰路はSudokuをばやり始めるとあっという間に自宅に辿着く。自宅に着いてもドライマティーニを飲みながらSudokuをばまず終わらす事。有機野菜多き晩飯。菊正宗を小一合。ふと思うとほとんど毎日のこの地味な生活。時々は人に会うこともあるが積極的に自分から誰かに「飲みに行こう」などと言う例しもなければ誘われることもかなり少ない。せいぜいZ嬢と日常の延長での「なにが食べたい」かランニングクラブ同志との会食か、最近ではバンコクからY氏が来た時の「定例会」くらい。人づきあいが増えることがないばかりか減る傾向強し。テレビで偶然に北京の中央電視台(1台)を見ると晩のゴールデンタイムに世界エイズデーの特別番組を放映中。他のチャンネルも見るが今日が世界エイズデーでも盛大な特別番組流しているのは中共のみ。エイズ感染の女性がカーテンの向こうで語る姿。国家あげての積極的な取り組みかも知れぬがハルビンでの松花江の汚染問題では事実公表の遅れやマスコミ統制などが問題になり、炭鉱事故の悲劇も絶えず。社会問題は他にも多いのだがエイズは党や国家中央の責任はない。他だと責められるのは党と国家中央。NHKのニュースで紅白の出場歌手発表の「明るい」ニュース。松任谷由実に赤組のゴリエに白組の和田アキ子で「楽しみですねぇ」ばかりの市民の声。一人くらい「受信料払ってないのに見てもいいのかな?」とか「今年もワースト視聴率更新ですかね?」くらいの市民の声があってこそマスコミとして「報道」の気がするが。今井環の「本当に楽しみですね」の紅白が本当に楽しみなそうな笑顔。紅白で一年を締めくくり「ゆく年くる年」で心を洗い元朝参りで、また新しい一年。去年は去年としてきれいさっぱり禊ぎ落としてしまうことが、我が国の最大の悲劇。キース=ジャレットのピアノでヘンデルのクラヴィーア組曲を静かに、静かに聴く。
▼昨日の日剰で書き漏らしたが午後七時半に香港の地上波テレビ2局とケーブルテレビ局に自称政治家Sir Donald行政長官が録画で現れ香港の政府主導の政治改革について市民に理解と同意求める録画映像が5分流れる。ラジオ3局でも流れたそうで香港のほぼ全視聴マスコミでの同時放送。ジョージ=オーウェルの世界。Sir DonaldはBig Brotherか。一昨日録画されたものだそうで昨日の昼すぎに各局に映像が届けられ晩七時半前の放映の厳禁で七時半から番組編成変えての特別放送。ゴールデンタイムでテレビだけでも各局への放映費用は計HK$260万にのぼる。12月4日に普通選挙実施求めるかなり大型の市民デモが予定されており、この行政長官の特別番組は政府の具体的な民選日程出さぬ漸次的改革だが着実安定で世論の支持求めるもの。Sir Donaldの尊大な態度に反感かい易し。このSir Donaldの(視線はどうして似合わない蝶ネクタイに向いてしまうが)スーツの胸章にあるのが「躍動する香港」をイメージした龍の意匠。非常にダサい意匠で政府の専用車と高官の胸章くらいにしかぜんぜん普及しておらず。ちょうど今日の信報に何慶基という人がこの政府のシンボルマークと合わせ12月4日の市民デモのシンボルマークを比べデザインを論じているのが面白い。香港政府のデザインは「飛龍」で漢字で「香港」をモチーフにしているのだが、かなり無理して読まないと「香港」と読めない。しかも飛龍とは程遠い。それに比べ今回の市民デモは「普選」という二文字を用いた鳳凰なのだそう。この二つを比べれば小学生でも「普選」のほうがデザイン的に格調高いことは明らか。「普選」の場合、鳥の頭から首、そして羽と尾まで視覚的にすんなり「普選」と読めるのに対して「香港」は左下に「香」の字があり、それに被さるように右上に「港」で「香」の字も「港」のさんずいも認識できぬ無理やり。この「香港」の字は97年からの「建華八年」の悪夢の象徴か。そのバッチ外せぬSir Donaldか。
シンガポールのLee2世(と書くとシンガポールは本当に世襲制の王政国家)が渡仏し巴里で志らく大統領と会見。Lee2世、シンガポールの首相はいつも白いシャツに青い地味なネクタイ、紳士服の青山で買ったようなスーツと廉装が父君の代から当たり前だが、やはり巴里を意識したような服装の色合い。Lee2世の巴里のセンスはネクタイで失敗。渋いワインレッドのシャツと黒の厚めのジャケットまではいいがネクタイがぜんぜん合っておらず。敢えて濃紺とか。白いネクタイにしてルパン三世とか。いずれにせよ日本では過去に細川の殿様くらいしか出来ぬ芸当。これだけでシンガポールの外交の成果になる。
▼Lee2世で思い出したが今週末に香港在住のバイオリン奏者西崎崇子様と日本から来港の三味線の今藤長十郎(女史)の合奏公演あり。英字紙の紹介でImafuji Chojuro IV とあり、確かに四世長十郎はChojuro IV で間違いではないのだが、とすると中村勘九郎の場合はKankuro XVIII と書くのだろうか。
▼どうでもいいようなことばかり記述が続くが誰もが知ってるパバロッティ氏が明晩だかのコンサートのために来日。入場料は約5万円。貧乏人の僻みと思われるだろうが湾仔のコンベンションセンターで拡声器でガンガンのコンサートに大枚叩く客の気が知れず。で画像は引退も近くMadam Tussaudの蝋人形館に展示されたパバロッティの蝋人形ではない。ご本人である。しかも舞台化粧ではない。
▼畏友よりメールで成田屋さんとの直談内容を聞く。團十郎のサイトでの入院日記を時々拝見しているが「自分も病に臥せっても、あゝありたいもの」と思わされる、成田屋の人柄のにじみ出た記述。役者でありながら疾病のかなり専門的な記述多く(余にはさっぱり理解できないほど)読書など分野も多岐にわたり政治から憲法問題にまで言及。必見。ところで「ご贔屓」の書き込み掲示板に海老蔵の舞台見た女性が「海老蔵様のやさしい目、力強い目素晴らしかったです。今、お腹の中に赤ちゃんがいるので、昨日、声や音を聴けて喜んでいると思います」と綴ると、通常なら「丈夫な赤ちゃんが産まれることを祈っています」くらいに答えるのだろうが、海老蔵君であるから、ここで「とてもいい胎教になるのではないでしょうか」と言い放ってしまう(笑)。この自意識。成田屋以外では許されない思い込み。隠し子発覚の際も相手の女性が「産みたい」というので「どうぞ」と答えました、と言い放っただけのことはある。
▼今年のベストドレッサー賞小池百合子環境大臣というニュースに日本国民のうち2,500万人くらいは「ベストドレッサー小池百合子じゃなくて……」と思ったであろう。主催者も本当は本命がいたのだが敢えて小池大臣への授賞に甘んじたの鴨。