富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十月廿四日(月)香港日本人倶楽部からの紹介で、と突然Oさんといふ方から電話をいただく。唐突な話ですが、と聞けば落語のLPを、香港の某大学で落語の話芸について語る機会あり、そのLPの音源をば使いたいのだがLPをテープに落とす作業ができず、で余を紹介された、と。で落語のLPは?と尋ねれば「桂文楽の「寝床」と「素人鰻」でございまして」とO氏。思わず「ようがす。如才なくできるかどうかお約束しかねますが、アタシがやってさしあげやしょう」と半七は、素性もわからぬ相手に答えると電話を切った……と岡本綺堂ならこうなるが、さっそくO氏にお会いすることになる。LP持参で来られたO氏ご自身が圓朝圓生のような噺家の顔を少し優しくしたような風貌で話される日本語の、これまた噺家のような声と口調の見事さに驚くばかり。昔からのとてもきれいな東京言葉に心洗われる思ひ。暫し落語談義。LPはNHKの落語名人選。文楽志ん生、可楽、三木助、金馬などのシリーズ香港でお持ちだそうで圓生以降はO氏もテープなどでお持ちだが古いLPを楽しめず、と。今はまたDJなどでアナログレコード復活しておりターンテーブルなど入手容易なことお伝えする。とりあえず、でLPを借用しテープにダビングにする件、承る。早晩にFCCにて海南鶏飯食し晩に尖沙咀に薮用。休肝日とぢまんしたいところだが休肝は二日続けないと意味ないとか。晩十時半にかなり草臥れ帰宅の途につくが新聞に(いぜんから気になってはいたが)Sudoku あり。ついつい始めたら嵌ってしまい難度1のだが帰宅までにどうにか終わらす。なぜか「すどく」がブーム(こちら)。帰宅してついSCMP紙にあった Kokonotsu Super Sudoku 始めると疲れも睡魔も忘れるほど熱中してしまい「これはマズイ」と途中で止め難なきを得る。
東京国際映画祭開幕記念上映作品「単騎、千里を走る」については月本さんのサイト(こちら)で読んだが築地のH君より主演の高倉健さんが張藝謀監督を「息子にしたい」とまで発言、と報せれる。上映前のインタビュー(こちら)で「男同士の強い友情・心のつながりを感じさせるような高倉さんの一言」は「(満面の笑みを見せながら)こういう、張藝謀監督のように本当に一生懸命に働く人を、僕は息子にしたい」と。小泉三世のおかげで日中関係冷えきったなかで健さんの張監督へのこの感情。これも……また美談?か。たとえ話だろうが、すごいなぁ健さん淀川長治先生でも「お気に」を「養子にしたい〜!」発言はなかったと思う。それにしても、この「壇上から降りられる時も、お二人で譲り合いながら目があう度に微笑み合うその表情からは、本当に二人で作り上げてきた映画をやっと完成させた事、そして皆様にご覧頂ける事に対しての、力を合わせてやり遂げた満足感、そしてこの日さらに深まったお二人の絆の強さがひしひしと伝わってまいりました」ってオフィシャルサイトでのこの扱いは皇族か。目に浮かぶような光景だが、例えば六代目歌右衛門梅蘭芳も出会った瞬間にこのような華やかさであったのであろう。
▼月本さんのその日の日記で六本木のハンバーガー・インが明日、五十五年の歴史を終える、と知る。古き良き六本木。

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