富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2005-10-14

十月十四日(金)快晴。首相官邸の幻覚キノコはやはり本当の話であつた(徳島新報)。小泉三世ご本人このキノコ話を本日配信のメールマガジンで言及(こちら)。幻覚キノコだと判明する前の記述だが
昨日、秋晴れのすがすがしい朝、いつものように公邸から官邸に歩いて向かう途中、公邸の前の植え込みのなかにキノコが生えているのを見つけました。カサが大きく開いたキノコや下草のかげに隠れるように生えている小さなキノコなど、よく見るとあちらこちらに何種類かのキノコ。食べることができるのかどうか、早速調べてみたいと思います。
と小泉三世。食べていたらどうなっていたのだろうか。常人が幻覚おこすのだから小泉三世の場合は真っ当になるとか。この小泉三世の凄さは何よりも毒茸と判明しても一旦公開のメールマガジンになんら訂正も削除もせず。おまけにご丁寧に公邸産違法キノコの実物写真(左がテングタケ、右がヒカゲシビレタケ)まで。これは小泉首相の了見なのかも。これが21世紀、平成の教養。われわれは小泉首相をいただき歴史の大きな壁を越えたのかも知れない……ってこれぢゃ「近代の超克」。今回初めて小泉内閣メールマガジン読んだが、この文章、ここまで平々凡々のほんと普通の作文で、それゆへ寧ろご本人がお書きになっているか、と察す。小泉三世のクールビズと同じで「あれなら俺と同じ」感覚がウケるのかも。難しい言い回しだの読めない漢字だの皆無、小学生でも普通に読めて書ける内容。しかも官邸でキノコを見つけて「早速調べてみたい」は理科好きの少年。本当に調べさせる、というのはある意味立派。「気味悪い」とか言って踏んづでもしたら冷徹な権力者だが郵政民営化決議の真っ直中でキノコに関心をもつ純朴さ。さすが純ちゃん。だがキノコに詳しい余の知人はテングタケは間違えようもなくテングタケだったがヒカゲシビレタケはテレビでの画像ではシカゲシビレダケに見えなかった、と。確かに図鑑にあるシカゲシビレダケ(写真右下)と首相官邸のを比べると明らかに違って見える。小泉首相に「これ、調べといて」といわれた官邸職員が「わ!これテングタケですよ。幻覚性の毒キノコじゃないですか!」「じゃあ、こっちのはこれですよ!ヒカゲシビレタケ!」とか一知半解で騒いだだけかも。だが訂正してはいけない。幻覚キノコが見つかったことこそ話題性といふもの。結果的に話題になればよいし。こうして歴史は作られる。ところで「引っこ抜いて調べさせた」のだとしたら麻薬取締法違反(麻薬指定物の不法所持)で逮捕されるべきかも。本来なら「不審なキノコが官邸に」の段階で警察に通報すべき。内閣官房の職員が勝手に抜いて調べたりしたら非合法であるし、それを示唆した首相も参考人として事情聴取。総選挙で自民党大勝で郵政民営化衆議院通過、あとは参議院決議だけ、というその参院決議の前日に郵政民営化をライフワークとする首相が幻覚キノコでラリってしまい麻薬取締法違反で逮捕されたり参考人で事情聴取されたりしたら前代未聞。フツーの人の家で自宅敷地内にヒカゲシビレタケが生えていたら「かなり深刻」だが小泉三世だと、それが、どこか「朗らかな」話題、になってしまう。自民党は本当にすごい人物を総裁にして国民はそれを首相に担いでいるのかも知れない。で郵政民営化参院通過。万歳。これで日本は変る。晩のニュースで栃木県の山あいの人口650人の村、その村の唯一の金融機関である郵便局。その村に住む老婆が郵便局が廃止されたら困るが「国でやることだから何も言えねぇし」とつぶやく。この老婆が二十歳くらいの頃が敗戦か。国でやることだから国民が言う権利がある、と、それが戦後の日本であったはずだが、国民主権から六十年経てもまだこの魯迅が嘆きそうな共同体あり。
▼一昨日、文芸春秋での写真のキャプションが気になったのは勝手に物語作る点であったが今日の朝日新聞はその逆で「もう少し物語れ」と思わされる写真のキャプション。パキスタン地震で亡くなった日本人の母が現地訪れた写真。「倒壊現場を訪れ、口元をハンカチで押える母の○○ さん」って確かにそうだが見た写真そのままの描写。「悲しみに暮れ」とか「泣き崩れ」が感情で「口元をハンカチで押える」のは単に行為。行為でも「悪臭がひどく」とか「嘔吐感があり」とか「笑ってはいけない場面で笑いそうになり」などの理由があるのなら、写真には写らないその理由を書いた上でなら「口元をハンカチで押える」と続くと「あ、なるほどな」と納得。だがこの場面は誰が見ても悲しい場面。その写真を見て「口元をハンカチで押える母」と書く感性の乏しさ。「倒壊現場を訪れ、悲しみに泣く母の○○さん」でもいいが「倒壊現場を訪れた母の○○さん」とだけ書くのが実は最も写真が生きる、と思う。

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