富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2005-10-08

十月八日(土)快晴。気温は摂氏三十度近いが日陰に入れば風も心地よく少し肌寒いほど。初秋なり。海岸ででもぼんやりと過ごしたき日なれど薮用あり午後に 至る。湾仔でZ嬢と待ち合せ集成中心(C.C.Wu Bldg)の展廊にて明日まで開催の湾仔利東街の建築物の写真展参観。婚 礼案内や正月、聖誕節などに用いられるカードなどの印刷屋や小料理屋の並ぶ湾仔の細い通りだが戦後建てられたビルの老朽化著しく香港政府は「都市再開発」 着手。この利東街の建物取り壊される運命にあり。その破壊の前にと「民間博物館」の人々がこの通りの全貌をば写真や記録に残す作業に挑み半年かけた結果が 今回の展示。何より圧巻はこの街路の建物の平面写真なのだが利東街の幅は一車線で歩道をいれても8mほど。つまりどんな広角のレンズ用いようが8階建ての 建物を完ぺきに正面から撮影することは不可能。そこを特殊撮影と電脳の技術で一枚の平面写真に完成させる。敬服。香港政府といへば「西九龍」の埋立地につ いて文化地域建設と意気込むが所詮「箱」作る土建以外に何ら発想もなき小役人の発想で当初は大手デベロッパーのコンペで一社選び「丸投げ」の予定が一社丸 投げが恐くなり数ブロックに分割しての各デベロッパーへの小分けといふ「さすが小役人」と感心するほどの陳腐なる発想。同じビルにある木田のジェラート食す。西 湾河。香港電影資料館にて夕方、宝田明招いての座談会あ り。タクシーで急いだが時間間違え結果的に観衆多く三十分並んで正解。宝田明氏の話上手は大したものだが尤敏との逸話は昨日よりさらに真相?に迫り尤敏が すでに他界していると思ふとよくわからず。宝田氏の話のなかで映画制作にかぎらず日本人と中国人がお互いに違う文化や考え方、アイデアをそれぞれ出し合い お互いに自分にないものを相手から学び協力して作り上げてゆく……と力説される。今日の日本と中国の関係を見ていると相手への誹謗だのばかり目立ち相手へ の尊敬の念も何か学ぼうといふ謙虚さも感じられず。尤敏との映画撮影当時の写真をスライドで上映しながらエピソードなど語られるが映画での場面が映画を離 れ宝田氏が尤敏とプライベートでの出来事の如く語られたりするのも<記憶>と<物語>の面白さ。座談会には昔からのファンら多く集まり会場に入りきれぬ観 衆はロビーで場内で撮影のビデオ同時上映で参観。当時のスチール写真や映画雑誌など宝田氏に見せる熱心な方少なからず宝田氏もこれほど香港で当時の映画を 愛した皆さんが集まってくれて、と感無量。驚いたのは宝田氏本人が『最長的一夜』の完成版をこれまで見ていなかつたといふこと。ラッシュか何かでしかご覧 になつておらず、その話を知つた今回の映画特集の主催者が『最長的一夜』の映画をビデオに録画し宝田氏に贈呈。最高のお土産ができた、と宝田氏。座談会終わりZ嬢と西湾河の二記に食す。蝦蛄と元貝(帆立貝?)の二皿。かなり雑多そうに見える海 鮮料理屋だが美味い上に従業員の親しみと丁寧な接客は実にありがたいもので昨晩の見た目だけの坦々麺屋とは大違い。電影資料館に戻り宝田明&尤敏の最後の 共演作となつた『ホノルル・東京・香港』 見る。この映画での宝田明は銀座の真珠扱ふ宝石商(御木本がイメージらしい)の御曹司。前二作と同じく、今度は紐育、ハワイ、東京、香港、東京と飛び回り 相変わらず仕事せず(笑)。『香港の夜』では二人とも初々しく、宝田明は最後は戦場に死す報道記者、『香港の星』では商社マンで尤敏は女医。東南アジアで 貧困と対峙する医者と商社マンといふ立場の違いで社会性もあつたが、この『ホノルル』となるともはや半ば喜劇。加山雄三がハワイに遊学する次男坊。喜劇ら しく三木のり平や祖母役の名前失念の女優の好演。この上映でも宝田氏は上映に先立ち挨拶。ファンサービスもここまで徹底。この上映で唯霊氏に邂逅。ご挨 拶。晩もかなり過ごし易くなり風が心地よし。
▼米国でブッシュ二世とチェイニー副総統、ライス国務長官の写真に“Meet the Fuckers”なる言葉刷られたTシャツ着た女性が他の乗客から苦情受け飛行機から強制退去させられる。羅府より南西航空機でオレゴン州に向かつた女性 で、この言葉は映画“Meet the Fockers”のパロディであるが不愉快であるとされ経由地のネバダ州リノの空港で乗員から「Tシャツを裏返しに着るか飛行機から降りるか」迫られた結 果。テロの恐怖より恐いこの米国ファシズム社会。だが不愉快、と思われたのは言葉の汚さでも政治的言語への拒否でもなく、たんにブッシュらが罵られること がブッシュ支持した、或いは支持してしまつた自分たちが「くそったれ」と罵られていると感じるから、といふ実に低レベルの感情であることはほぼ間違いな い。ところでこの記事、朝日新聞にもあつたが映画が「ミート・ザ・フォッカーズ」(放題はミート・ザ・ペアレンツ2)でTシャツには「ミート・ザ・ファッ カーズ」(くそったれに会う)と書かれていた、とカタカナばかりでは英語以上に何のことかわからぬ読者のほうが多いのではなかろうか。カタカナ書きは日本 語として定着した単名詞にとどめるべき。

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