富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2005-09-03

九月初三。土。曇。朝寝貪り八時頃に起きてぼんやりと朝食済ませ新聞読んで おれば午前九時より北京にて抗日戦勝利六十周年記念。テレビ放送の現場中継。天安門広場にて人民英雄記念碑に献花式典あり。それを眺む。旧暦は七月も晦かの今日。北京は天高く青空に軍の放つ祝砲が、祝砲ながら救国の戦さに命なくした兵を讚へての数十 発の砲音。静かな北京の空に響く。国家首脳に続き多くの抗日戦のヴェテランの老兵が天安門広場に集ふ。彼ら老兵は抗日戦に戦ひ救国のあと人民共和国の建国 後に反右派闘争、文革にて言葉にならぬ苦労もありなむ(このへんをバカつやな評論家が論はぬこと願ふばかり)。祝勝記念日に敢へてそれを語らぬ。が二十歳 の頃に抗日戦で五旬の齢ひまで<国家>に弄ばれし半生を、この北京の青空に老兵何を反思するか。英雄記念碑での献花に続き人民大会堂にて「抗日戦争・世界 反ファシズム戦争勝利60周年」記念式典開催される。胡錦涛国家主席共産党主導による抗日戦に不屈に戦つた中国人民の勇志讚へ日本の靖国神社A級戦犯 合祀に苦言。日がな土曜。昼まで拙宅にて机まわり片づけ普段厭ふ掃除など。昼に出街。湾仔。三聯書店。中国旅行社に寄る。金鐘で午後遅く会合。一瞬FCC にて一飲と思つたが三夕も続けては、と断じ帰途につく。朝鮮食材の店に生菜、紫蘇など購ひ自宅に先日北角在住のA奥様より頂戴せし仙台の牛舌など焼いて食 す。麒麟麦酒ラガー1缶。眞露二合。NHK特集にて「沖縄、よみがえる戦場」観る。この番組が中国での抗日勝利六十周年の晩に放映されしことも「バカつ や」な評論家が非難せぬこと祈るが。集団自決。一瞬、なぜレジスタンスせぬのか?と思ふが、その発想こそ愚の骨頂。仏蘭西なら敵はナチスナチス傀儡の自 国政権「だけ」乍ら沖縄にては敵は米国とそして皇軍の両者。とても抵抗など出来ぬまひ。驚くのは自決が敵に辱められるのなら、と天皇陛下のためと自決す る、その意思をば育みし教育。明治の二十年代に、幕末からの薩長の田舎侍の尊攘とは一線画す国家主義現れ沖縄にてのこの国家主義教育の徹底は果たしていつ 頃からか。少なくとも半世紀にも満たぬ数十年にて「陛下のため」と死ねる覚悟まで育めし精神が<教育>により培われたりと思へば国家による教育の威力のそ ら恐ろしさ。それゆへ「つくる会」の教科書など断固否定すべき。来春の採用を10%期待のつくる会つくる会だが反対勢力が「つくる会」の教科書採用が 0.4%だかに納まりしこと「良識」などと糠喜びも呆れるばかり。右翼の皇國主義私立や石原慎太郎の都立中高一貫校ならまだしも栃木の在郷ばかりか東都杉 並区でまで採用の事実を深刻に受け止めるべき。番組に沖縄は読谷村にて4歳にて終戦迎えし女性現れる。米軍上陸に脅え洞窟に隠れるが米軍の捕虜となり集団 自決する皇民のなか彼女ら家族は米軍に捕らえられ鬼畜生の米軍に食料与えられ餓え凌ぐ。が不幸はここから、にて米軍に手懐けられし蕃民が米軍のスパイとな ること恐れたる山中に潜む皇軍は無残にも天皇陛下の赤子たる沖縄のこの集落の皇民をば三十数名殺害。この女性の父は咽喉に刃物刺された上に両膝の裏側に 「日の丸だ」と刃物で丸く刳り貫かれた、と。これを見た、この女性の四歳上の当時八歳の兄は衝撃に精神錯乱に陥り戦後六十年、施設にて療養の日々。この自 国民殺害の兵も戦の悲劇の被害者か。その殺害の事実をば手記に残せし老兵の自筆の原稿用紙が画面に映る。もう彼の兵隊は憎むまひ。だが、彼らをば国家主義 の似非神道にて英霊と祀られし「神社」は恒久の平和願ふ処か。これには「否!」と敢えて断言すべき。「日の丸」もこの読谷村の男性の膝の裏側に皇國兵士に より刃物で丸く抉られし深紅の窩が「日の丸」かと思へば我が国の国旗と誇りなど持てようものか。「国歌斉唱、ご起立願います」の際に(といいつつ学校で は、この国旗国歌の「強制」避けるため、入学式だの卒業式では児童生徒入場の際に保護者来賓に「ご起立願います」とやつて児童生徒入場せば全員起立のまま 済し崩し的に、だが)起立して、その壇上の「日の丸」を崇め「君が代」歌ふ際に、己の両膝の裏にぐつさりとこの刃物で丸く抉られし深紅の窩を痛みいるべ き。日の丸になほも哀しき涙あり。「日の丸」を否定するか(つまり革命)、もしくは敢えて自国民の、それも敵国の侵略に抗戦し命落とせし民どころか自軍の 兵に殺害されし民あり、といふ最大なる悲劇に「日の丸」をば敢えて掲げ、それが平和なり自由なり平等なりの旗となるべく自慮努力するか(これも亦た革命) 何れかしかあるまひが、いずれをも知らぬふりの戦後六十年が今日の日本の姿。この秀逸なるNHK特集(受信料であるとか余の場合、月に七千円程NHK視聴 のために払うが、その価値もあり。このテレビ局が自民党だの似非保守右翼の政治力にて偏向せぬこと祈るばかり)のあと「とっさのひとこと」なる英会話の短 い番組あり。米国のスーパーマーケットにて割引のクーポンが使えますか?と“Do you accept this coupon?”の1フレーズが今晩の学習。沖縄にて昭和二十年に、明治二十年以降の国家主義にて「陛下のために」と命落とす国民をば養成に成功し、戦後 も六十年で国旗に頭べを垂れ国歌斉唱を何ら疑問なきものにせし教育が、実は就学率ほぼ100%の義務教育どころか世界でも有数の大学進学率誇りながら “Do you accept this coupon?”すら今さらテレビで教えねばならぬ現状。愛国心よりも何が実際に教育に必要なのか?を真摯に考えるべき。モルト酒 Bowmore12年を二杯飲む。

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