富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2005-08-08

八月八日(月)朝六時起床。NHKの海外安全情報でテロなど無差別な攻撃で の被害避けるために「安全対策のしっかりしたホテル」に宿泊し「外国人が多く集まる場所、観光地、欧米関連の場所」に近づかず爆弾が仕掛けられた可能性あ るため「ごみ箱には近づかない」ことと「不自然に厚着、大きな荷物」の人には近づかないことなど挙げる。安全対策のしっかりしているホテルとは狙われる対 象の国際的ホテルであり、欧米関連の場所は避けられるが外国人が多く集まる場所の代表格は空港でありホテルも空港も観光地も避けるなら海外に出ることぢた い否定されるべきで「ごみ箱に近づかない」といつた小手先の口上は無駄。何の意味があろうか。ごみ箱もポストも下水溝もすべて爆弾仕掛けることは可能で、 テロで用いられる時限爆弾は厚着や大きな荷物になるものとはかぎらない。そこからわかることは、こういつた安全対策情報が実は実際の安全対策ではなく「世 界がテロに狙われている」といふ危機感の増幅に役立つていること。オーウェル的な世界。朝はゆつくりと朝食をとりZ嬢は私用。Y氏がホテルに来られる。 Suriwong Rdにある、放送作家M氏に紹介いただいた旅行代理店で既にメールのやりとりで予約完了の航空券発券受ける。すでに航空券も用意されておりわずか五分の手 早さ。朝の閑散としたパッポン通り。ロビンソン百貨店も昔は高層の建物が目立つたが周囲の建物が高くなりスカイトレインや自動車の高架道に隠れる。かつて の高級店が今ではダイエー並みの扱い。ルンピニ公園抜け散歩。老朽化したカンボジア大使館隣の広大な敷地が米国大使館員住宅群だとY氏に教えられる。 Thanon Witthayuにある米国大使館と大使公邸、それにこの館員住宅敷地合わせたらルンピニ公園の半分くらいの土地をバンコク市街中心部で米国が占拠。Y氏 宅はFour Season Hotelの横を入った高級マンション。警備万全。場所がらテロ遭遇の可能性高い、と苦笑。Y氏のマンション訪問。ちょうどNHKのテレビ放送で参議院で の郵政民営化採決で投票終わり否決される瞬間を眺める。バンコクで偶然。自民党から予想以上の離反。自民党がこれだけ割れても郵政民営化に一枚岩で推進の 態度とれる公明党の凄さ。国会議員とは本当に楽な仕事。国会に登院し議員席に坐り数分の間に衆議院解散。万歳三唱で笑顔で握手しながら退場。これで仕事に なる。スーパーのパートのおばちゃんの仕事のほうがどれだけ技能職で大変か。築地のH君は加藤紘一君や福田康夫君も自民党公認で出る以上「小泉首班」で戦 わざるを得ない選挙で自民党を勝たせつつ小泉続投を阻止することは相当困難、と。そこまで計算した戦術が小泉三世にあるのかどうかは疑問だが。柏村武昭防 衛政務官のおかげで余のサイトの閲覧数伸びる(笑)。柏村武昭といへば地方民放局(広島放送?)のアナウンサーでありながら東京12チャンネルだったか 「お笑い漫画道場」だかの番組司会で中央進出。オバサンにウケるマイルドさが持ち味であつたがイラクで人質になつた民間人に厳しい態度示し「イラク派遣に 反対するのは非国民」とタカ派ぶり発揮(こちら)。今回の政務 官罷免でかなりマスコミに露出してすでに選挙活動万全。イラクでの一部支持者の反感も払拭。当選確定。世渡り上手。それにしても郵政民営化ばかりが目立ち 靖国は何処へ。8月15日に強行に参拝して総辞職といふ噂もあつたが衆議院が先に解散してしまつた。もうやけつぱちで15日に参拝だろうか。参議院散会の あとの閣議での小泉首相の嬉々とした表情。覇気すら感じられる。いよいよ本番、という熱気。サミットから帰国した時の憔悴しきつた様が嘘のやう。首相公邸 で干からびたチーズなど肴にビールを飲む孤独感を癒す、こういう事が本当に好きらしい。しかも自分自身が主人公での国を挙げての大騒ぎ。心地よかろう。さ まざまなこと思いながら国会中継に続く報道番組を見る。昼になりY氏夫妻とマンションを出てCentral World Plazaまで歩く。Z嬢と待ち合せ。四人で伊勢丹百貨店の上にあるMKな るタイ式すき焼きチェーン店で昼食。参議院での否決で衆議院解散といふ不思議。首相が切腹とか?。首相が公邸で公約遂げられぬ無念で切腹、は美学かも。ご 本人が「殺されてもいい」と宣われたといふが後世に名を残すには自害もあり得る。ホテルに戻り36階のスパで入浴。「船 に乗りたい」といふZ嬢のたつての希望。夕方遅くスカイトレインチャオプラヤー川岸のSaphan Taksin駅まで行きSathornの波止場から水上バスで港湾局(Harbour Dept)まで昏時の船遊び。波止場から歩き出せば、 市街「再開発」進むバンコクでこの一角はかなり取り残された感あり。ス カイトレインや地下鉄もこの旧市街には入り込まず。で20分ほど歩いてHualamphong駅。この駅から始発の地下鉄で Sukhumvit駅まで行き地下鉄と連絡するスカイトレインのAsok駅でY氏夫妻と待ち合せに合流。バンコクの地理に明るい方ならアホか!の移動で InterContinentalのあるのはスカイトレインのChit Lom駅でここからスカイトレインで真直ぐAsok駅までわずか三駅。五分とかからない。それを八の字書くようにスカイトレイン、徒歩に地下鉄の移動で小 一時間。だがこの複雑な移動が交通渋滞の都バンコクで出来るのも99年のスカイトレインと昨年の地下鉄開業のおかげ。Asok駅から暫く歩き「咲乃や」といふ日本料理屋に食す。経営者のO氏は十年ほど前に全盛時代 の香港北角の順寿司におられ数年前にバンコクでこの料理屋を開業。一瞬、創作料理風だがしつかりとした酒の肴多し。マグロが美味く廉価なのはタイらしさ。 「鉄幹」といふ芋焼酎一本飲む。O氏と少し物語りする。店に古い映画のポスター多くカウンターには小津安二郎の大きな写真が二枚。帽 子かぶつた撮影中の写真は有名だが帽子脱いで酒を眺める小津安二郎の写真は初めて見る。終わつてタクシーでホテルに戻る。恐いもの見たさ、で見てしまふ NHKの海外安全情報。「ウランバートルでは日本人が被害に遭う強盗事件」多く「日没後は歩かない、タクシーを利用」がお勧め。「海外旅行の際にホテルな どで法外な料金を請求されるケースが『最近』多い」そうでベトナムではメコン川クルーズで一日一人100米ドルのはずが(これでも十分に高いが)客がこの 日本人二人だけだつたため船頭から一隻の貸し切りだと1,000ドル要求され支払ったケース。「韓国では」タクシーで運転手に安い土産物屋を紹介され安い はずが割高、タクシーは土産物屋とグル。「日本人はお金持ちという印象」で見られているので注意しましょう、と。アホな話ばかり。ウランバートルで「日本 人が」被害に遭うのは現金持ち歩くから狙い安いから。タクシーに乗れば安全かどうか。日本人が法外が料金請求されるのは最近に始まつたことぢゃない。タク シー運転手が土産物屋とグルというのは観光地でよくある話で「韓国では」と強調される話に非ず。日本人はお金持ち、なのではなく現金を持ち歩く騙しやす い、脅しやすいカモなのである。「海外で日本人だから、と相手を信用してはいけません。最近は日本人旅行者を騙す日本人も増えています」と。明治時代にす でに巴里や倫敦で日本人の渡航者騙す日本人などいた事実。金子光晴の『どくろ杯』読めば昭和初期の東南アジアも然り。
▼英国元外相Robin Cook君、六日に蘇格蘭にて野山歩きの最中に心臓発作で倒れ逝去。享年59歳。香港の97年「祖国回帰」の際の英国側外相にて香港では印象強し。特異な 表情に温和な人柄。ブレア率いる与党・労働党の重鎮でありながら03年にはイラク征伐直前にブレアの進める追米イラク侵攻に反対し閣議メンバーである下院 院内総務役を辞任。立派。夏の日に夫人との山歩きの最中の逝去。追悼。

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