富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2005-07-31

七月三十一日(日)雨。午後ホンハム。二日も続けてホンハムに来たが週末のこの賑わい驚くばかり。15年前には殆ど出来上がつた市街で商業施設規模は当時 と変わらぬ筈だが当時に比べ賑わいは段違い。集客力あるのはせいぜい蔡瀾美食坊くらいで何より不思議は交通の便の悪さなのだが。この「新都市」は平地レベ ルに商業施設があり楼上に高層住宅という造りで香港では地下鉄のTsuen Wan線の開通にともなう美孚の都市開発が先鞭だと思うが美孚は見事に失敗。交通の便から言へば地下鉄と、それに美孚に本社を置く九龍バスのターミナルも あり地下鉄とバス路線のリンクで集客力があるはずだつたのだが。それに比べバスだけに依存し、尖沙咀からは渋滞もひどいホンハムがなぜここまで発展したの かかなり不思議。ホ ンハムのフェリー波止場から見上げる高層住宅(馬頭涌公立小学校の背後にそびえる)は政府が建設したものの住宅供給政策の変更で売り出さぬまま放置。それ が財閥系民間デベロッパーに売却されビクトリアハーバーに面した一等地にありながら公共住宅用の規格と設備では「販売価格に見合わない」といふ理由で一旦 は取り壊し決定。愚策。資金と資源の浪費、環境問題など世論の反発で計画見直しで既存の建物の改修のみと決定。見上げるとその改修工事がすでに始まつた模 様。ジムで一時間の有酸素運動。フェリーで中環。プリンスビルでシャネルの旗艦店オープンのための改装工事中で巨大な看板。ランドマークのLVといい Swire Houseのアルマーニといい高級ブランド店が「これでもか」の店構え。銀座も同様か。「これでもか」ぶりに品がない。紐育のPolo & Ralph Laurenであるとか倫敦のDunhillであるとか本店なのに「何処にあるの?」と一瞬わからぬくらいの奥ゆかしさが大切。そのDunhillの店 (プリンスビル)に白い綿の帽子が街頭に展示あり。Dunhillだが製造はデサントの夏用の帽子で新素材だかで流水に濡らして水切ってかぶると涼しさが 持続といふ。いぜん見たがHK$790ぢゃ買わぬと思つていたら夏のバーゲンで4割引き。購入。ランドマークの地下のトイレで濡らしていたらトイレ詰のオ ジサンに怪訝な表情される。わざわざ帽子を濡らしているのは確かにヘンである。FCCに向かいIce House街の坂の途中に香港電力の変電所あり。誰も意識にも止めぬ施設だが中環の一等地に、と思えば不思議。この変電所の向かい側、Lower Albert Rd(ヴィクトリア女王の夫君のアルバート公の名を戴く。Upper Albert RdとこのL.A.R.にはさまれた由緒ある一角が「近いうちに自称政治家 Sir Donald が住まう」予定の旧総督府)との分かれ道下の古い石積の壁に H.E.C. Cable Ductという嵌込みの看板あり。H.E.C.は香港電力でかなり昔から此処に送電線が埋め込まれていることがわかる。実は此の送電所のある場所は香 港の早期(19世紀末)の発電所。Ice House街は文字通り「氷室」で中環の埋め立てがされる前はこのあたりが海岸線。で此処に発電所あるのも火力発電で当時は石炭が船でここに陸揚げされた 由。発電所は市街拡大と電力需要増で北角に移転(現在も香港電力の「電燈中心」のビルあり。城市花園西側)。その後、島南の鴨利洲に移転して現在は南Y島 に巨大火力発電所あり。鴨利洲の発電所跡地は現在、サウスホライズンという住宅地であるが此処の中央に今でも香港電力の本社施設あり。香港電力の本社とよ く誤解されるのが金鐘の山あい、ケネディーロードに異常にひっそりと佇む不思議な設計のビル「港燈中心」だが、この施設は発電所が鴨利洲に移つてから当時 のビクトリア市(中環の市街)に電気供給する際に建てられた変電所。現在も南Y島から海底ケーブルで香港仔から送電線がピークを跨ぎ、このケネディロード の変電所を介している。香港をテロで襲おうと思えばこの送電線であるとか変電所を襲うのも策。中環の市街にひっそりと存在するこの変電所は普段は職員の常 駐しておらずテロリストがこの施設破壊すれば中環一帯は停電で大パニックなのである。FCCでホンハムからの喉の渇きも我慢してきてのStella Artoisを1パイントぐいぐいと飲み干す。韓国対中国のサッカー中継の後半最後。1対1である。日本と同じ中国の衛星国として韓国応援していたのだが 最後ロスタイムで惜しい一瞬あつたが試合は引き分け。Glenfarclasの12年物を飲む。ダブル。『世界』の七月号の読者投稿で兵庫県のYといふ高 校の先生が教育現場の「劣化」の原因は、家庭と地域の「劣化」が学校の役割を変質させた、と指摘している。家庭が果たしてきた「しつけ」や地域の「行事」 を学校が肩代わりして取り入れざるを得なくなり本来の学習活動の割合が低下し学校本来の機能を低下させ学力が低下した、と。それに対して私立学校は受験教 育に特化することで学力低下食い止めて成功。塾の補完性も実は学校の役割の変化で、いい意味での「詰め込み」型、知識教育が塾に任された結果であろう。こ の先生に続いてTといふ名古屋大学の名誉教授が佐藤優『国民の罠』の読後感を書いているがT教授の文章に日本は小泉政権成立後、内政的にはケインズ型公平 配分から新自由主義、外向的には対米一辺倒のナショナリズム強化(よく考えると対米一辺倒のナショナリズムとは矛盾しているのだが実際にはこれが存在す る!)に構造転換しているという佐藤優氏の分析を紹介しているが、ふと思つたのはY氏の投稿にあつた教育問題だが、よく戦後教育は「日教組の左傾偏向教 育」と悪口を言われるが実際には、戦後の学校教育は機会を公平分配する近代教育であつたことのほうが左傾よりも重視されるべき(左傾は、少なくとも学校教 育ぢたいの右傾化と対照にあることで平衡に作用していたのだから)。午後六時すぎFCCを出てLower Albert Rdに入ると久々に「中環の魔女」の一人と遭遇。「中 環の魔女」とは十年ほど前に我らごく一部で話題となつていた中環からミッドレベル界隈徘徊する恐らく一卵性双生児のコーカサス系の老女二人組。ホームレス ではないが失礼ながらかなり傷んだ服や靴で近づけば悪臭もあり。だが出自がいいのか、かつてはかなり裕福であつたのか、薄化粧で身だしなみはそれなりに整 え品あり。十年ほど前まではこの周辺の公園などでかなり頻繁に見かけていたが数年さつぱりと見かけなくなり最近また遭遇するが気になるのは一人であるこ と。かつていつも一緒であつた相方の不在。病身なのか亡くなつたのか知らず。通り過ぎたところで失礼して画像一枚。政府総部の前を通りかかる。731で梁 國雄君が陣頭指揮とつていた表現の自由を訴えるデモ行進は午後三時にヴィクトリア公園出発して政府総部に向かつたが政府総部前はすでに閑散。ふと足を止め 閉鎖された鉄門の張り紙を見る。政府総部内の自動車の駐車規定について。この英国統治時代は政庁の敷地は周囲に鉄柵もなく深夜も出入り自由。気軽に通り抜 けられたが香港祖国回帰後は通り抜けもできず敷地内に入るも厳しくなる。でその自動車駐車の規定だが英文と中文で書かれており中文のほうに「これは英文の 訳文であり内容に差異のある場合は英文の内容に準じる」とあり。祖国回帰された今でも英文が主。法律は(厳密には地方自治体で「条例」だが)百数十年の英 国領としての法治の完備で法律が英文で書かれ司法が英文を基本とするため香港が祖国回帰したからといつて司法と法律を易々と中文に出来ぬのだが、政府敷地 内の自動車駐車規定まで英文が主とは。で英文のほうには「これは英文の原本であり中文訳に原本との内容の差異がある場合は英文の内容に準じる」という一文 がないのが興味深い。何故かと考えれば原本は原本であり法律(条例)であるから中文はあくまで訳本であり原本に訳本の存在について規定など書く必要もな い、ということなのだろう。……などと考えながら張り紙を撮影していると政府総部の警備員がかなり警戒。アホな時代である。午後六時半で聖ジョン教会の晩 鐘が鳴り響く。日曜晩のミサの始まるところ。ふと教会を覗くと係員に今晩のミサの案内と賛美歌集渡される。我は敬虔なる真言宗徒。酒臭いかも?が多少気に なつたがまぁいいか。教堂に入ると十数名の信者。お香がもくもくと焚かれているのは寺と同じ。十数分ミサに参加してタクシーで湾仔。基本料金の距離で運転 手には悪いが慇懃な若い運転手で快く応じられ湾仔で降車の際もきちんと礼を言われHK$15にHK$20差し上げる。お互い気分よくサーヴィスとはこうい う関係であると痛感。六國ホテルの粤軒。トレイル仲間のI君 夫妻に今年春に女の子生まれ夫人マダムJは日本で出産しそのまま滞日のところ数日前に来港しマダムJ囲み1卓12名で晩餐。かなり久々に粤軒に参つたが黒 服諸氏に覚えられていて「日本に帰つていたの?」と質される。かつては一時頻繁に来たこともあつたが、この粤軒の料理はホテル中華らしく「誰にでも好まれ る」つまり悪く言えばクセのない味つけ。香港ジョッキークラブや香港カントリークラブ、中國會などのクラブ料理も同様。で12名で1卓、とかだとベストな のだが、なかなか来る機会なし。日曜晩で常連の家族連れでかなり盛況。久々の正当派広東料理のフルコース。かなり満腹。
▼注目の(って誰も注目していないが)仙台市長選挙は梅原克彦君が当選。公明党公認で自民党県連も支持し市営地下鉄東西線も推進で対立候補乱立を背景に組 織票で楽勝。落選組では衆院議員辞職でくら替えの鎌田さゆり嬢が予想以上に票を伸ばし浅野知事と民主党に近い菅間、市民運動の小野寺、共産党の伊藤と続 く。本来この市長選に出る筈のなかった鎌田を除く菅間、小野寺、伊藤の「真ん中から左」の票合計が10.9万票で鎌田票が8.2万で当選の梅原が14万 票。投票率が43.67%で単純計算すると梅原市長への支持は有権者数の17.8%にすぎず。候補者絞り込みに失敗の民主党市民運動団体と「共産主義 者」にも責任はあるが、この程度の支持で政令指定都市の市政が行われると思うと自治とは何なのか、と考えさせられる。
深センの推定人口はついに一千万人を越え1035万人。深センに居住権のある公式の人口は171万人で、それ以外の大多数は居住権のない工場労働者など など。つまり更にこれプラスで「怪しい居住者」も少なからず。問題は深センの都市機能で実質の人口に対応するだけでのインフラや電気水道などの提供とコス トかかるが正規の市民からの所得税地方税)と工場など雇用者企業から徴収する居住権のない被雇用者の代替での謂わば人頭税では収入不足。かつては政府の 経済特区建設でかなりの資金が中央から投入されたが今では経済特区の繁栄で政府資金導入がないどころか中央への所得吸い上げも懸念されるほど。いずれにせ よこの正規な居住権ある市民とそれ以外の居住者数とのアンバランスは世界でも屈指。
▼マレーシアのリゾートでの中国人侮辱につき陶傑氏が言及せぬはずもなく29日の蘋果日報で「一頭の豚について」を書く。このホテルのウェイターが中国人 宿泊客のカード上に「可愛いブタの絵を描いた」ことから辱華躁狂な事件となつたが偉大なるアジア作家・魯迅がまさに描くであろう、この「愚蠢なる民族主義 分子」の姿。イスラムのアラビア人の生活は悉く衛生的でどんなに生活に窮するところでも便所の臭さもない、と陶傑氏は指摘して(多分にこれは気候風土も影 響している気もするが)それに対して「中国人社会與糞溺同在」で鳥禽ウイルスから四川省の養豚場などなど。香港特区もご他聞に漏れず回帰祖国してみれば公 共プールに人糞が浮遊し「報道の自由」で他のプールも連鎖反応、プールには赤虫も泳ぎ政府の衛生食物Fook利局長周一?が責任を問われる中国的なニュー スとなる(Fxxk利は本来は「福利」で周一「?」wookは周一「嶽」ngokであるのを揶揄。「?」は古代中国の極刑の刑具の一種)。ディズニーラン ドは「中国の国情を尊重」して香港鼠楽園にトイレは農村式の蹲厠(所謂、和式)を設ける。糞漏に関するニュースが事件となりスキャンダルとなり政府役人の 責任問題となる、この奇っ怪な民族はいつたいどんな病気に罹つているのか?と陶傑氏。中国広西師範大学出版社から刊行された孫隆基博士の学術書歴史学家 の経線』に「中国の現代革命は人に例えれば「口腔段階」から「肛門段階」に進展するもの。毛沢東は人々に「吐苦水」と言い、演説や文章では「放屁」という 言葉を用いるのを好んだが、これは「解放」そして排泄の意味合い。この種の攻撃的な解放は天下大乱を生んだ」とある。中国人民の「解放」は人々が一ヶ所に 集まつての排便か? これは三聯書店(中共系)が発売する「祖国」中国の書籍だが、この表現は辱華ではなかろうか。四川省資陽の刃物で割かれても糞溺の中 に横臥して未だ息絶えぬ「瘟猪」(疫病に罹つた豚)あり。マレーシアのリゾートホテルで給仕が描いて客に渡したブタの絵はディズニーのミッキーマウスと同 様、悲しいかな見事と誉めるべき「創意神来之筆」である、と陶傑氏。この中国人侮蔑事件あり陶傑氏ならマレーシアでのブタの絵でイスラムの忌猪にもつてい くか、と想像したが四川省のブタの連鎖球菌にもつていつた次第。翌日の文章でイスラム教が漏溺のブタへの嫌悪について少しだけ述べている。

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