富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

七月廿八日(木)朝早く目覚め小林よしのり『ゴー宣』第4巻読む。4巻まであつたのでこれが最後。もう「ガウラ〜」である。著者はもう神だそうで。テレビのニュース見れば米国の国威発揚たるスペースシャトル無事打上成功乍ら断熱タイルだかの剥離あり前回打上ではこれが原因で宇宙船爆発し乗組員死亡事故もあり。今もつてこれほど難儀なる宇宙事業が1969年に米国アポロ号での月面着陸が出来たとは今更乍ら驚き。35年も前の話。あの当時の科学技術で月旅行とは。あれが実は米ソ冷戦での国家威信かけた計画のため月面着陸は「嘘」といふ噂や小説、映画もあり。当時、子どもら夜になると月を見上げ宇宙船が見えたの見えないの、と夢中。大人も交じる。大阪万博で数時間並び月の石を見た子が学校で話題の中心。ベトナム戦争など「局地的」惨劇あり過激派の軍事関連企業狙つた爆破テロなどあつても今から思えば市井の民が今ほど迄に「何か」に怯えることもなく月を眺めていた、米ソ対立といふ「均衡と調和」の佳き時代か。……で本日。早晩にジムに寄ろうかと思いつつ足は自然と市場へ。家庭預かる主婦の如し。畏友William登β達智君が新聞の随筆で「トワイニング紅茶といへば特筆すべきことないがト社のCamomileなるハーブ茶は、午後以降はこれに蜂蜜滴らして飲むのが最好」と紹介。W君の言うくらいなら、と早速お試し。普段ならまずドライマティーニの時間にハーブ茶に蜂蜜垂らして、とは我ながら苦笑。「最近こういう閑かな生活がW君にしろ歐陽應霽君にしろマカオの鐘偉民君にしろ、みんな好きなのだ」とZ嬢に言うと「ただオヤジになつただけでせうが」と一笑に付される。晩に水菜のサラダ、豚肉のつみれ汁、とろろ芋に麦飯。NHKで世界文化遺産のヨルダンはペトラ遺跡を見る。人類は進化しているのかどうか。NHKの現場訪れた若い男性のSといふアナウンサー、ヨルダンの現地の少年も流暢に英語話すのに対してロクに返事もできず。古代都市で水道設備があつたところ見せられ水道管が「続いていたの?」でlaid onを用いるのはピンとこなくてもせいぜいcontinue用いて水道管の方向示しTThis water pipe continued in a straight line for one mileはちょっと難しくてもcontinued?くらい言えるべきところ、ぶっきらほうにkeep?と宣つた。これぢゃ「保存するの?」である、相手にとつては。NHKのアナウンサーともなれば一流大学出てかなりの倍率で入社のエリート。常識として日常会話くらいの英会話はできないと困るし(コネ入社とかで)中学生レベルの英語も出来ない輩を海外取材させるばからず。国辱的。その番組見ながら愛用のシャープのノートブックMM-1から秘蔵画像ファイルなどCDに焼き保存作業。二年半前に日本で購入し今は亡き父が来港の折運んでもらつてから二年半酷使の愛機ながらキーボード表面の摩耗はいいがキーボードのタッチも不安定になり最近は突然のシャットダウンや立ち上げで一度でHDD動き出さず。ハード的にかなり草臥る。いつなんどき不能になるか怪しく取敢えずバックアップ作業。それに比べアップル社のPowerBookG4の作動ぶり。見た目の美しさばかりか機能が美しく動く。シャープの愛機はこのG4への浮気が原因で不調来したかも。G4があと500g軽ければ理想的なのだがとても持ち歩けず。
▼香港は「夫婦共働きが殆ど」「家庭の専業主婦が少ない」ことは誰もが知る事実。住宅費が高いため夫婦で働かないと生活できない。夫婦共働きが多いから家政婦(アマ)を傭う。だが香港に生活していると「けつこう主婦が多い」と感じる。平日の昼間に市場で買い物する中年の女性は就業者で「偶然その日が非番」の人もそりゃいようが殆どが専業主婦に見える。実際に周囲の男性の配偶者のかなりの数が専業主婦。もしかすると「家庭の専業主婦が少ない」のは虚像でないのか、とかねがね疑つていたのだが。偶然に新聞で女性の就業率の政府統計を見る。(ここで細かい分類については述べぬが)就業者147.8万人に対して専業主婦は64.8万人。この64.8万人は「退休」つまり老後のリタイア44.4万人は別。就業者と専業主婦の計での専業主婦の割合は30.5%となる。これに対して日本の厚生労働省の統計(平成16年度)を見てみると就業者数と専業主婦を同じ比率で見た場合39.2%である。香港が10人中3人が専業主婦たのに対して日本は4人と1人の違いだけ。しかも日本の数字は「退休」者はなく香港の専業主婦に「退休」者加えて再計算すると香港の率は42.5%と日本より専業主婦多いこととなる。なるほどガッテンである(笑)。なるほどガッテンといへば制作のCPが東京にいた頃にかなりお世話になつた氏であることを先日の「ニラ特集」の番組最後のクレジット見て気づく。いま手許にあるモンブランの万年筆の一本も「クイズ百点満点」ととても小さく刻名されているのは当時の由縁。で話は戻るがこの「共働きが殆ど」神話に近い話が香港の自然楽しむ山間のトレイルコース。山歩き楽しむと必ずのように「いや〜、さすがイギリスの植民地だっただけあって、イギリス人っていうのはこういう自然の遊歩道とかよく整備しますね」と気分はスコッコランドでCWニコル氏など想像して英国人誉めるのだが英国の自然道の多くが狩猟のための歩行路。で香港といへば香港島も新界も現在のトレイルやハイキングコースのかなりの路線は日本軍の侵攻路か英国軍の野戦のための山路である事実。自然愛好に非ず。日本人ばかりでなく香港人でも、この英国人によるハイキング路整備信じる者多し。
▼昨日「女性になりたい」願望強く女装が常の中年の男が湾仔堅拿道高架道下の女性公衆便所にて思い詰めカッターナイフで「自宮」つまり去勢し激痛に耐えきれず報警求救。これだけなら三面記事だが香港で現在、性転換手術を受け付けるのが公立の律敦治医院(Ruttonjee Hospital)なのが興味深いが、この病院で性転換手術するのが単に政府医療管理局の決定で律敦治医院と何の因果もなければそれまでの話だが、この病院の名が一風変わったルットンジーといふのは元々この病院が香港に住まふパルシー(Parsee)のうち名門一族でるルットンジー家が自らの家族のために医師を雇い医療設備を整えたのが始まりで、確か百四十年だか前に親類縁者らに医療提供始め私設診療所となり施設拡充。徐々に外来患者受け入れるようになりルットンジー家の邸のあつた高台の肇輝台(Shiu Fai Terrace)から湾仔モリソンヒルの現在の地に移転。その後、政府の管轄に移行し軍用病院であつたが1949年に一般の診療所となり1991年に現在の規模に拡張し総合病院となる。で去勢でふと気になつたのがルットンジー家がパルシーで、パルシーはゾロアスター教を信奉。確かゾロアスター教にかつて神官が去勢するような話があつたような記憶。不確か。それだけ。
▼先週末の新聞読んでおらず香港競馬の元調教師Bruce Hutchisonがマカオで廿三日逝去していたのを知らず。享年六十三歳。豪州の出身でメルボルンのCaulfield競馬場で調教学び1978年にから職業競馬となり日の浅いの香港競馬で調教師を01年まで23年務める。通算300勝。00-01年の馬季に年間10勝で、この馬季から香港ジョッキークラブが導入の調教師に課せた年間最低勝数の12をクリアできず。翌年の調教師としての契約更新できず。年間勝数の他にジョッキークラブが基準とした年間最低賞金獲得額(600萬ドル)と調教馬数はクリアしており2着のレースが20もあるため僅か2勝の不足での免許剥奪に抗議したが許容されず。他の調教師への見せしめ、と当時言われる。1996年には朝の調教帰りにベンツ運転中に自爆で自動車大破し生死逍遥い左目失明だけで奇跡的に復帰。01年に引退し二年静養ののち昨年よりマカオ競馬にて調教に復帰。息子の一人はサウスチャイナモーニングポスト紙などで競馬評するClint Hutchison君。廿三日の朝の調教のあと体調急変での死亡。香港競馬が近代化されるにしたがい引退余儀なくされた前時代の調教師といえるかも。
▼朝日で中曽根大勲位に象徴される旧・保守「取り込み」作業が続くなか「やはり」と思わせるのが金子勝慶應大学教授)による論壇時評。「靖国論争と天皇制」という題で<靖国>の構図に変化あり、といきなり渡邉恒雄君の、靖国参拝に「反対どころか、僕は拝みもしないし賽銭もあげない」「あの軍というそのもののね、野蛮さ、暴虐さを許せない」と渡邉発言の原文(オフレコ!こちらぢゃなくてこちらだ)見ていないので「ここだけ引用していいのだろうか?」ちょっと不安だが大胆な発言とその引用。この発言知つたら読売新聞読むの辞めるオジーサン、オトーサンたち少なくないのでは。で金子教授は続いて文藝春秋八月号の「決定版日vs中韓大論争」「靖国参拝の何が悪いというのだ」対談で中国側に徹底的に論破された櫻井よしこ田久保忠衛を「基本的な事実認識の誤りを窘められており、読む者を哀しい気持ちにさせる」と哀悼の意迄表し(笑)中曽根大勲位の小泉靖国参拝は「要するに、ポピュリズムなのだ……日本の総合的主体性を持つた姿はない」といふ指摘(中央公論八月号)取り上げ靖国神社に代替する国立追悼施設の建設についてシンボライズの不健全さについての言及をまとめてダワーの『敗北を抱きしめて』にかなり近い内容だが平凡社新書の『象徴天皇制の起源 アメリカの心理戦「日本計画」』を取上げCIAの前身であるOSS(米国戦略情報局)の公開された機密文書から、これはダワーの著書にはない重要な指摘だが既に1943年に!「戦争に導いた日本の軍部と「天皇・皇室を含む」国民との間に楔を打ち込み」「天皇を「平和のシンボル」として利用する計画」があつた事実。年表見たらこの文書の日付1942年6月3日はミッドウェー海戦の二日前で日本はまだ気分的に「破竹の勢い」お祝い騒ぎ。その時すでに戦後日本の青写真が出来ていたとは。金子教授も「その後、東京裁判天皇の戦争責任を免罪し、軍部・指導者たちをA級戦犯として処罰した。もし東京裁判を見直し「押しつけ」憲法を改正しようとするなら天皇の戦争責任を含めて全てを見直す必要が生じてくる」と指摘。御意。で金子教授は続けて「ところが」「いまや現天皇象徴天皇制を規定した「押しつけ」憲法を順守し、戦争中から米国が意図したとおり「平和のシンボル」たろうと努めている。事実、現天皇靖国神社を参拝せず、日の丸・君が代を強制しないようにと発言し、第二次世界大戦の激戦地サイパンを訪問した際にも、韓国人や沖縄出身の戦死者の墓参りをした。気がつけば、皇室が憲法改正の最後の歯止めになっている。何という歴史の皮肉であろうか」と結ぶ。「その通り!」である。であるから改憲が根本的に「おかしい」のだが、この大切なことが国民に理解されておらぬから改憲ムードとなる。事実、朝日新聞にこの論壇時評が載つても、である、金子教授のサイトは昨日も今日もヒット数がわずか六十台とは。朝日の論壇時評を国民はぜんぜん注目しておらぬ現実。朝日新聞の政治部の巻き返しも遅すぎた感あり。自民党のなかにようやく小泉アウトが公言できるようになつての後追いにすぎず。問題は小泉三世を国民の八割が支持したこと。だが、もしかすると小泉三世自身が衆院解散で公約通り「自民党をぶっ壊す」可能性もまだあつて、どころかその可能性が高まつており、その場合は小泉三世支持した八割の国民の良識の勝利。
▼「ノーベル経済学賞も取れたかも知れない経済学の奇才で米国での骨董品商内での脱税で米国当局からインターポールに指名手配通告されており米国に戻れば収監間違いなしで中国国内に潜伏中の」張五常教授が蘋果日報の週一の連載で「感謝林行止」と蘋果日報紙面で信報の社主・林氏に讃辞。朝日の論壇時評がナベツネの言論評価的に紹介したり、よくわからぬ。で何を感謝かというと張・容疑者が七旬の誕生日前夜に突然、林行止より信報への寄稿依頼が届き、思えば1978年以来の友情で在野で新聞発行するが経済学の専門家としても超一流の林行止は奇才の張・容疑者も一目置く存在。実際に二人は香港代表する名文家。で張・容疑者が回想するのは1984年から信報で三年にわたり連載された張教授(当時はまだ骨董疑惑などない)の経済評で、中国の当時の経済開放を鋭く分析したこの評論は三冊の本として出版され中国でもかなり読まれた事実。で張・容疑者はその当時この本を貪り読んだ若者らが今では四十代。その多くが中国で活躍しており今でも中国国内で(ってそりゃそうである、中国から出られないのだから)あちこちでこの著作に署名を求められ晩餐に招待される、と張・容疑者は自慢。中国の経済勃興は五千年の歴史の奇跡でありその功労は当然、中国共産党の幹部だが林行止の文章も北京でかなり読まれ参照されたものであり、我ら二人も中国の経済勃興の功労者として中央幹部の後ろに並ぶくらいできるのではないか?と。読後暫し唖然。経済学の奇才もここまで陥没したか哀しいかぎり。確かにこの二人が中国経済に与えた理論的影響は大きい。が自分で誉めるな。これが信報に掲載されないのは当然。林行止がこのような野暮な文章を掲載許す筈なし。で蘋果日報。中国がWTO加盟の際に刑事事件犯人の国際引き渡し条約だかへの加盟がWTO加盟の交換条件にされていたら張・容疑者は今頃シアトルで懲役数十年で実質的な終身刑

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