富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

五月廿三日(月)眠れずまんぢりとせぬ儘に未明となれば遠くより雷鳴襲ひ日の出の頃に落雷猛々しく窓打つ雨音も太鼓に張つた皮を炒つた豆撥ねる如し。さすがに午後眠気さし銅鑼灣エクセルシオールホテルG階に出店のillyの伊太利珈琲初めて喫す。確かに美味。この場所はホテルのエレベータのどん詰まりにて隠れ家的だが問題はソファもなくストール六つだけでインターネットはホテル提供の三時間百数十ドルのサーヴィスでは客も寄りつかず。これなら近くの星巴珈琲の不味い伊太利珈琲でも環境で選択の客多きはず。早晩にジム。小一時間の拳闘系の有酸素運動。銅鑼灣に出てバーYの開店襲ふ。店の掃除も終わらぬうちに顔を出し口開けの客気取り。開店の準備で忙しいだろうからとウォッカをばストレイトでまずは一杯請ひ「ウォッカは何が?」の問いかけに冷凍庫開けて一番手前にあるのをお呉れと告げればフィンランディアならさつぱりめ。この早い時間に客もなければ若いチーフのH嬢とT君相手にお茶引きだの檀家参りだのと古い花柳界の隠語など語る恥かしさ。花柳界の言葉といへば芸者遊びでの畳算だの水を指す玉川だの売淫婦を達磨といふ事などもはや死語となりぬ。フォアロゼズの黒ラベルソーダ割一杯。これで腰落ち着くのが怖いからねとソーダ割飲み終わらぬうちにお勘定願ふ。酒場はまだ飲みたいと思う半時間で出てこそ気障。ふと思い出すは荷風散人。玉ノ井の私娼家に早い時間にふらりと立ち寄り遊ぶでもなく茶一杯喫すれば女に「祝儀はつけておくれ」と請われるも最初の客に茶一杯とはいへ供しカネもとらずに返しては今晩商売あがつたりになりそうで怖いとの験担ぎ。他の客も来ぬうちに早々に酒場辞して車に乗れば東方に見事な満月上るを愛でる。帰宅してドライマティーニ一杯。今晩はかなり久々に自宅で夕餉。名古屋のオリエンタルカレーの所謂カレーライス。Z嬢と、もし天気良ければカレーライスをタッパーに詰め裏山で満月愛でてカレーも美味いかもと昨晩笑つていたが黒雲立ちこめ月は雲に隠れたり。残念至極。ワイルドターキーをロックで並々一杯。日曜日の晩にケーブルテレビで放映の、台湾の雲門舞集と香港のCCDC取り上げた短い番組見る。続いてNHKの朝の生活ナントカといふ番組で「ロック曾根崎心中」といふ文楽阿木耀子&宇崎竜堂の音楽つけた「催し物」の紹介もビデオに残っており眺める。ロックといふよりモダン演歌の音楽で「お初」踊ればどこか梅田は堂山のゲイバーの和服似合ふママの一人踊りの如し。この番組とてまずは紹介に文楽の舞台構成と曽根崎心中の話の筋紹介せねば視聴者に理解されぬ時代となりぬ。ジャックダニエル。そろそろ飲み過ぎだろうが早い時間の酒場での一杯と自宅書斎での深酒ほど心地よきものはなし。
▼来日の中共呉儀副首相本日午後遅くの首相小泉三世との会談急遽取消し帰国。本国にて嗇かならぬ公務と中国側。昼には経団連田豊太君との昼食会談迄は日程済ませての帰国は明らかに呉儀女史来日前日の衆院予算委での小泉三世の政府も外務省も呆れた靖国参拝の「どこか悪いのか」発言への竹箆返しか。勿論中国の金融対策など呉儀女史おらねば話進まぬ内政事情もあろうが日本の首相相手の会談を取り消して迄の急用に非ず。明らかに小泉三世への不快感の明示であろうが更に明らかなことは小泉三世と会談したところで明らかに共通言語抱ける筈もなく経団連田豊太君よか小泉三世など取るに足りぬ相手であるとの中国側よりの三行半と理解すべき。中国側のこの為打ちに産経、読売など明日の朝刊で非礼詰り憤るであろうし実際に外交慣例上非礼であるが中国が胡錦涛温家宝にも物言える立場の呉儀といふ人をこの日中関係ぎくしゃくのこの時期に日本に遣ることのどれだけの日本に対する敬意かを充分に理解できず呉儀女史の来日前日にあれを語つた小泉の外交上の粗忽ぶり哉。だがもつと呆れるは安倍二世(岸三世)の「まるですべてわかっております」的なる記者会見でのパフォーマンス。中国側にしてみれば安倍二岸三(あべにきしぞう)こそ小泉三世以上に中国側には「不快」だが次期首相候補とは。嗚呼……。