富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

五月十二日(木)曇。ようやく雨止む。晩十時に佐敦で富都餐庁なる、客の大多数が喫煙し従業員はズボンの尻ポケットに競馬新聞、帳場の女将もくわえ煙草で伝票整理といふ環境よき、かなり繁盛の茶餐庁に晩飯食せば隣卓の若衆らの携帯に電話かかり「なんだと?バカヤロー、あなたのオカーサン強姦しますよ」は丁寧に言えばそういうことだが所謂Fuck you!で「せっかく一服しに来たってのに」と突然の敵対する組とのイザコザか管轄の売春宿が摘発食らったか、で出向く若衆。水商売の女も多し。例湯と飲物ついてHK$30の時菜牛片飯食す。帰宅。Bowmoreの12年物飲みながら松本清張『神々の乱心』読了。未完であるから内容にちょっと難儀こそあれ推敲重ねた暁に完成のはずと思えば当時『週刊文春』に連載あり。宮中、華族満州帰りの胡散臭い新興宗教を昭和初期の時世に絡ませるとは着眼は凄いがあれもこれもの盆菜で食感今ひとつ。
▼中環は擺花街の泰昌餅家。このパン屋のエッグタルト。ふと市街散策で立ち寄りしパッテン総督の好物となり在任中何度も訪れドイツの当時のコール首相まで誘ひタルト立ち食い。パッテン総督で注目浴び行列できるほど繁盛するが香港バブルでの家賃高騰だのSARS疫禍だの生きのびたが最近の地代上昇で地主提示の家賃が月三万千ドルから八万ドルへの狂乱ぶり。数ドルのパン売ってはとても商いも営めぬ家賃で営業断念。僅か間口一軒半にも満たぬ店舗で八万ドル払へる商売など真っ当な筈もなく地主咒われるべし。
イラクで拘束されし日本人につき所属する英国の警備会社名をテレビニュースで「ハートセキュリティ」と呼ぶを耳にして“Heart Security”で戦地に武装では洒落にならぬと思へど実は人名の“Hart”で日本語発音で英語読みの紛らわしさ。
▼先週末に鑑賞の雲門舞集につき十日のサウスチャイナ紙に舞台評あり翌十一日のヘラルドトリビューン紙にもこの舞踏団の紹介あり。今月末より東欧公演続き七月五日には愛知愛知博で来日(こちら)。初来日が昨年だったといふ。
カソリック教会での避妊と中絶を認めぬ事。それゆへ避妊具を用いるも能はず。問題はそれゆへのHIVなど命にかかわる性感染症の拡がり。カソリック信者多き南米にて深刻。エルサルバドルを例にとれば初めての性交渉に安全套(コンドウム)もちいる組は交わる者全体の4%に満たず。公式には避妊認めぬが事実上は了解する神父も少なからず。解放の神学とのこともあり。カソリック信者の女性曰く「我が生命は神とともにあり神は我が他者病疫に感染させることを望まぬ故に我が教会の教えに従わぬを許し給ふと信ず」(九日ヘラトリ紙)。

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