富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

五月七日(土)曇。朝寝貪れば右足脹脛の筋肉強烈に痙り激痛に目覚める。昨晩といふか今朝未明「壊れかけ」帰宅。バーSよりバーYに向かう道で同行のB君にやたらぶつかる自分いたがバーYでは起きたまま寝ておりB君のご馳走になっった記憶も鮮明。十時間に及ぶ痛飲も不思議と宿酔なし。昨晩は食が進まずただ焼酎を飲み続けた「だけ」の結果か。本日午後は九龍の知る湯屋に浴し垢抹りと按摩。旺角花園街の楽園にて牛丸粉麺。花園街のアウトドア屋など素見す。通菜街の萬成カメラ店。他の量販カメラ店とは質の異なる混雑。Cotaxのカメラ製造中止発表されたが今までの場所に在庫きちんと並ぶ。唯一余の購入せしU4Rのみ売切れ。Prince Edward站近くの南風餐庁にて海南鶏飯食す。バスで尖沙咀。文化中心にて台湾の舞踏集団・雲門舞集(Cloud Gate Dance Theatre of Taiwan)の公演・竹夢の舞台観る。香港には二年に一度で公演ありこれまで見逃し続すばかり。実は今回も昨日の切符購入後に抜けられぬ宴会入りZ嬢のみ参観。昨日の切符捨て本日一人で参観。台湾の誇る現代舞踏の世界的演出家・林懐民率いる廿数名の男女の踊手。舞踏としては演出は極めて単調。踊りぢたいもけして奇を衒ふこともなし。それが何故に世界的評価得るかといへばひとえに林懐民のイメージを徹底的に表現するために踊手の身体が修業に修業層ねた結果、個性であるとか踊手一人一人の踊りの解釈などをすべて削ぎ落とし身体が表現体に物象化した結果。その身体表現の見事さにただ息を呑むばかり。但し最後の楽屋落ちの如き演出が許されるものか甚だ疑問。Z嬢が昨晩漏らした感想でエストニアの作曲家Arvo Partといふ人の全編に流れる音楽は確かに飽きる。今晩は所属するランニングクラブの定例会もあり。昨晩の宴会で雲門舞集が今晩にづれ込み雲門舞集の公演は明晩迄だが明晩は明晩で予定あり今晩の定例会失礼する。蘇州よりI君の参加もあり二次会必ずとのことで二次会からの参加約す。舞踏終わり電話するとまだ火鍋屋で食事中。銅鑼灣で時間潰しにと昨晩、否、今朝未明に参ったバーYに寄りドライマティーニ飲む。若いバーテンダーT君が経験浅くも真面目な様が若役者の芝居観るが如し。ふと思えば二次会は十名余のはず。銅鑼灣で賑やかなパブで呶鳴りあふより、このバーYであれば快適な板の間あり。他の客も少なく一人で店番するバーテンダーT君には突然十数名の客は大変だろうが電話で二次会組を招く。三更に歓談。深更にもうお開きと思ったが大陸から出ていたI君には香港の夜は楽しく今晩の幹事K氏や余も含め六名残る。この時間でどうかと思ったがバーSに参れば丁度早客が一気に退けたあとで六名でカウンター。K氏とZ嬢と鼎談。そこに今朝まで一緒に痛飲のB君現れ今朝ご馳走になったお礼。K氏もさすがに壊れ始め散会。I君まだ残る元気ありI君と二人快飲。閉店時間となりI君に更に誘われるが二晩続けての痛飲避けたくI君をご主人に托し帰宅。
▼築地のH君より。五四運動で反日デモ不発につき、当局は大学生のデモ参加を厳しく規制、参加者は放校処分を徹底、更に教授に対しても学生が参加した場合は処分をするという方針を明らかにしたことを「民主化が進んだとはいえ、やはり共産主義の国、まだまだ厳しい」とする認識がマスコミにあり。それはそれでいいが東京都教育委員会が国旗国歌で何をしているかといえばまさに中共と同じ。共産主義を先取りか。日本が民主主義の国なのかどうか。
▼築地といえば某新聞の畏友によれば、労組主催の五三集会では山室信一先生が登壇。涙ながらの訴え。「反日」を増幅させているのは日本側に多くの原因あり偉そうに相手をを非難する前に自省をすべきところは自省をした上で隣国との真の協調関係を気づきあげていく努力が必要である云々と指摘。御意。これは中国も同様。陶傑氏など日本の歴史認識非難する前に中国政府は自らの過去の歴史見直し反省点を明らかにせよ、と。野中広務先生もこの集会に参加。会場からの「国旗国歌法制定の当事者として、現在の状況に感想は?」に答え「たいへん遺憾なこと。私の意図していたものとはまったく違う。こういう事態にならないために、内心の自由を縛る物ではないという説明を何度もして、義務や尊重の規定も盛り込まなかった。私が考えていたのは、校長先生が組合との交渉で矢面に立たされたときに、法的な根拠をつくってあげようという程度のことだった。いまやられているような強制ということにつながるとは全く考えていなかった。石原さん(都知事)は思い違いをしている。」などと心中を語ったといふ。野中君ほどの百戦錬磨の政治家がいったん動き出した日本社会がどこまでエスカレートするか本当に読み切れなかったとすれば甘すぎるとしかいいようがない、がこのテの良心が歯止めきかぬ流れに溺れてゆく怖さ。
▼小泉三世についても日中関係に関連して靖国参拝を猛烈に批判。あの靖国参拝は信念があってやっているものにあらず。総理大臣になる前には一度も参拝せず。単なる票目当て人気取り。国会議員や大臣が靖国にお参りすることに反対するわけではないが、なにも八月一五日にみんな揃ってぞろぞろ行く必要なし。反対するのは、靖国神社というのはA級戦犯を勝手に祀ってしまい、そのために天皇さえもお参りすることができず。天皇さえも参拝できぬのに総理大臣が天皇をさしおいて出ていくとは何事か、と指摘したといふ。「天皇陛下」と言わず「天皇」と言い切ったところが凄い、が、これが京都の凄さと理解すべき。
▼武蔵野の市民運動家D君によれば革マルと右翼の衝突について某所で耳にした会話は「三日って建国記念日だっけ?憲法記念日? 有楽町で憲法改正だかに反対の人たちがビラくばってるとこに右翼がつっこんですごかったの。それが反対の人たちは、なんかアキバ系で弱っちいけど、右翼はみんなガタイがいいのよ。でもアキバ系もけっこうちゃんと応戦してたよ。なんか車でバックしたら右翼をひいたとかいって大騒ぎで」。革マルはいまや一般市民には「アキバ系」と認識される。昨日驚いた「この平和な時代に……」といふオジサンの述懐も寧ろ「この非常時に、反対反対ってけしからん」といふのならまだわかる(思想的に立場は違えど)。だが「この平和な時代に」といふ平和ボケは右翼からも「貴様のような脳天気な連中がおるから、共産主義者がはびこるのだ!」とか殴りかかられたはおうがいいかも知れぬ。

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