富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

四月十四日(木)東シナ海での瓦斯田試掘に日本着手では折角平穏の中国反日運動に油注ぐやうなもの。国境問題は外交上の難題で而も海底資源の絡む問題程解決厄介なものなし。三十年も開発会社の申請を凍結してきて、この時期の手続き開始とは驚くばかり。何がそれ程の自信か。米国が背後にある、これを背米主義と呼ぶべき。昨晩読む吉見俊哉『万博幻想』に興味深き記述あり沖縄海洋博は実際には沖縄海洋「開発」博で海洋の自然保護に非ず。この海洋博開催の意図の一つに尖閣列島の海底油田開発も十分に視野に置き参観者に東シナ海の海底資源の豊かさとそれの「日本による」開発計画の啓蒙であったこと。観衆は無意識のうちに博覧会見物で東シナ海の海底資源が「わが国」の開発領域であること認識させられる妙。成程。諸事に忙殺され晩十時に佐敦で麥文記麺家に雲呑麺食す。美味。雲呑の作り方が十年以上前に比べると洗練しすぎの感もあり。隣家の豪州牛乳公司にて杏汁燉蛋。築地のH君に朝日朝刊の京大教授山室信一君の中国反日デモに関する論説が秀逸と昼に報せあり自宅に帰り漸くそれを読む。山室教授曰く、我々がいま問われているのは戦争責任ではなく戦後責任。戦後処理(と山室氏は書いているが誤解ないように言えば戦後の国家経営)をどう果してきたかを真剣に問うこと、と。余が思うに小泉・安倍のOSでは「ですから山室先生の言う戦後処理がこれまで蔑ろにされてきたから私たちは現実主義でその戦後処理をやっているんです」と言いそうだがいまやっていることは「國體」の再構築のようなもの。國體はずっと「あるべきもの」として認識されてきたが今ではこの國體が日本古来の伝統とは全く異なる明治もだいぶ経ってから半世紀でできた発想であることも明白で「國體」だけならまだしも単一民族だの了見の狭い発想が戦後になって國體に上乗せされてしまったから始末におえぬ。

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