富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月初五(日)晴。風邪。九龍湾に昼過ぎまで薮用。九龍湾に若者多く何事かと思えば日本語能力試験開催で一万人近い受験者あり会場は香港国際展貿センター貸し切りだそうな。香港で日本語学習者は二万人とか。今年能力試験受験者多き理由は政府の持続進修基金の始りで成人の学習継続者に対して授業料の七割までだか基金で補填される制度。これぢたいはいい事だがコース修了した上で何らかの試験合格が補填受ける基準となり日本語の場合この日本語能力試験。午後帰宅して雑煮。テレビつければ本日マカオラソンに参加のI君に頼まれた早稲田対立教のラグビーの試合NHKの放送を録画中。Z嬢に「これ何の試合?」と尋ねれば唖然とされ質問の意味は「野球でいう六大学とか、学生対社会人とか、天皇賞とか皐月賞とか、そういう冠は何か?」のつもりだったがZ嬢は余がひょっとしてラグビーとサッカーの区別もつかぬのでは?と勘ぐる。それほど余のスポーツ音痴なり。いずれにせよラグビーも見てもトライという動き除けばどういうルールでどう展開しているのかもさっぱりわからぬのは事実。夕方『ブルース=リーの生と死』なるVCD観る。確かに『ドラゴンへの道』の西本正のキャメラワークは他のどの作品よりも秀逸。ローマのコロシアムでの戦いぶりなど拍手したきほどの「瞬間」の芸術。早晩Z嬢と油麻地のブロードウェイシネマティクにてカナダのGilbert Kwongのビデオ映画“A Moth and A Butterfly”観る。今年の香港レズビアン&ゲイ映画祭の一つでトロントだか舞台に当地に移民し中華レストランで働く兄頼ってカナダの大学へと留学せし弟の物語。黙々と働く兄と苦労も知らず兄をば恋人の如く慕ふ弟。まさに蟻と蝶の如し。先日SCMP紙に好意的な映画評あり“The gorgeous cadences of 王家衛 and 小津安二郎”といふのをどう解釈するか?が問題だとZ嬢と苦笑していたが淡々とした物語のなかの芸術性か単につまらないのか。確かに小津的な予定調和、少なくとも王家衛よか物語があり。今回の映画祭では終幕上映に選ばれたQuentin Leeの“Ethan Mao”が注目か。映画終わって中環。摂氏廿度下回る寒さで蛇羹でも食そうかと蛇王芬に向かえば当然のことながら同趣の客で爆満。京味居はどうにか卓あり北京刷羊肉で火鍋。胡麻タレでまあまあ美味ではあるし鍋の最後に具にした餃子の飴は確かに絶品。だが唯霊、劉健威の両氏絶賛するほどこの店が美味かどうか。帳場に坐って無愛想な、何も気配りもせぬ主人、お世辞にも綺麗とは言い難いどころか難点多き衛生、機転のきかぬ女給数名で、かなり廉価であることと厨房の作る料理だけがこの店の売りかと思えば調理人逃げでもせば一巻の終わり。グルメ諸氏の絶讃に胡坐かいてはおらぬだろうか。帳場に坐ってお勘定以外何もせぬ料理屋の主人といふと余はかつての三十年も前の銀座更科のご主人思い出すのだが少なくとも銀座更科の主人の愛想のよさは祖母がよく「ほんと呆れるくらいに愛想がいい」と褒めていたがその通り。それに比べこの店の主人は客が帰るのに帳場の前を通っても礼の一言も言わず。唯霊氏はこの主人が次々と唯霊氏も驚く料理をば提案と褒めるが。余がこの主人が何かしているのを観たのは帳場除けば唯霊氏が信報の随筆でこの店の料理褒めた日にその日の昼にすでに拡大コピーして店の内外に記事張ったことだけ(笑)。ケッタイな店、といふことだけは確か。世界支配目論むハーゲンダッツ社の新種カスタードプティング味のアイス購い帰宅。

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