富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十一月十五日(月)雨。梅田より地下鉄御堂筋線で難波。近鉄線快速で西大寺経由西ノ京。少し時間あり薬師寺参観。修学旅行でごった返す境内想像せば閑散。入場口のおじさんらの好意で本日移動のためリュックなどある余とZ嬢のため荷物は置かしてくれ傘持参なき一名のため傘は貸してくれる厚意。午前十時に唐招提寺。平成廿一年迄の金堂修復工事中にて旅行前に今回のツアー目的説明し奈良県文化財保護事務所の厚意で修復現場内部の参観許可を得たり。同事務所唐招提寺出張所の技師Y氏が忙しい中九十分に渡り金堂のすっかり建物取り除いた現場の地層から石灰岩と柱下には花崗岩用いた床、檜の柱の構造、版築という工法、笹繰、和釘用いる理由、瓦の製法の奈良でも僅か五十年での工法の違いなど説明頂き曾て五重塔があったと言われる寺社東の柱などの修復工事場所の内部も見せて頂く。模型も見事な作り。雨あがりの庭に黄葉も映える。新宝蔵にて金堂に据えられた仏像拝み何といっても白眉は特別陳列の國寶「金堂の隅鬼」と一対の鴟尾。隅鬼は奈良の金堂建立当時の実に見事に木心をば知ったじっくりと坐る三体の鬼に比べ江戸期の修復で取換えられた一体はあまりの粗悪さ。今回の平成の大修理も屋根は百年、建物も三百年後には建て替えが必要で、この見学を通して知ったのは金堂のあの見事な建築は屋根の張りの豊かさも、その張り出しでいかに大きな力が柱にかかり建物の構造の負担になるか、それゆへ建て替えが余儀なくされ、日本建築の美しくも恒久性なき如何ともし難き現実。ふと思い出したが金比羅宮で感じたことだが神仏に熱心に参るはいいが、それに未来の安泰など願い、一番の問題は現実の生活の中での問題について改革をば考えず自己に課題与えぬこと。神仏祈願より現実で己の考慮と実践が必要なこと。唐招提寺で今回ご一緒せし一行と別れ独り近鉄西ノ京駅より橿原神宮前。タクシー自動車雇い岡寺。天智天皇岡本宮の跡地。弘法大師による建立の岡寺に塑像仏拝む。庭の紅葉見事。坂の茶屋にて蕨餅と善哉。歩いて坂を下り岡本寺。父母も懇意にさせていただくお寺にて宿坊にご挨拶。ご住職は普段は岡寺に勤められるそうでお会いできず、だが岡寺の本堂に確かにK住職らしき方あり。奥様に自動車で送られ橿原神宮前駅。急行で一路京都。天気すっかり晴れる。寺町通の桜湯に浴し酒場サンボアにウイスキーソーダ二杯。客は余のほかにおらず。同じ寺町通の小野数珠店に寄り手首につける数珠の紐の端解けた際の結び方を習ふ。Z嬢は唐招提寺より奈良市街に出て先に京都に来ており、がんこ寿司の経営する和食屋河原町店にてZ嬢とZ嬢の妹夫婦息子君らと再会。鍋。午後九時にZ嬢妹家族と別れZ嬢と祇園。若松に食す。いつもながらに京野菜、刺身、焼き魚に炊き込みご飯まで食すに満悦。酒は金鶴。若松の女将さんに送られタクシー自動車雇いZ嬢先にチェックイン済みの京都ブライトンホテルに投宿。Z嬢曰くタクシーにてホテルにつけばドアマンの対応から名前を聞きフロントに先に走る職員の機敏さ、フロントではすでに予約確認済みで対応素早く部屋の広さも使い勝手の良さも格別と。実際に部屋に入ればその通りでリネンからベットの作り、寝心地まで実にお見事。