富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十月初三(日)快晴。昨日インターネットのセキュリティをば強化せば突然、余のサイトのうちカウンタだけが表示されなくなり(他の電脳でならカウンタ表示は問題なしで)何かと思えば「Webサイトから広告コンテンツを削除」といふ機能が有効になっており、何故カウンタだけなのに広告コンテンツとされるのかよくわからぬが、ひとまずこの機能無効にしてカウンタ見れるようになる。絶好の競馬日和。滑稽……ぢゃないよ国慶賽馬日。Z嬢と二人で今季初めて沙田競馬場に参る。キュセイパシフィック航空のマルコポーロ倶楽部のメンバー用ボックス席(写真)。空港のビジネスクラスのラウンジと同じコンセプトでなかなか快適。一昨日「登攀」の馬鞍山の山なみ一望(写真、黄色線は一昨日のコース)。R2(クラス4芝1800m)にてフジキセキの子八戦未勝で前走は14尾着のフジサンライズが何故か6.9倍のオッズに支えられ初勝。馬主は次期行政長官の噂もある唐英年財政司長。雨の中山競馬場よりの中継でスプリンターズステイクスは昨年の覇者・多旺達(デュランダル)が一番人気で余はこれに武豊君騎乗の黄金駒(ゴールデンキャスト)と香港より参戦の喜望峰(Cape of Good Hope)で連複狙い。喜望峰はご祝儀に非ず国際レイティングで115と今回の出場馬の中では互角に競えると期待。金鎮之光(カルストンライトオー)が雨の不良でぶっちぎり一着。ゴールデンキャスト二着で喜望峰三着とやはり善戦。國慶盃(精鋭班、芝1400m)はSnippetsを父とする、昨季の登場から八戦五冠三亜〇負の芙蓉鎮(Town of Fionn)が一番人気で辛勝。二着にMerridian Starで三着がBowman's Crossingと暫く勝ちから遠ざかっていた二頭続き馬券外す。R11(クラス3芝1800m)も期待のSize厩舎の汕頭之星がコケて今季好調の筈が本日は惨澹たる外れぶり。競馬終わって國慶記念の花火あり(写真)。鉄道が競馬場に直結しKCRの列車も一等車なら必ず坐れる快適さで十数分で市街に戻りバスで香港島にすぐ渡れといつもながら香港の競馬場の便利さありがたし。ジムに浴し帰宅。三更に巴里ロンシャン競馬場より凱旋門賞の中継あり。こうして一日に日本の中山と巴里ロンシャンの競馬中継あり賭けられるのは嬉しいが売上げではいずれのレースも単勝で百萬ドルほど。香港の通常のレースが二千萬ドルだと思ふと、いくら権威ある国際レースでも「知らない馬ばかり」で而も単勝複勝に連複だけでは香港では関心低くサイマルキャストがどこまで続くか多少の不安あり。英国のWinhillではFallon騎乗のNorth Lightが一番人気でDettori君はMamool、日本からはタップダンシシチー参戦。余も馬主C氏と伍調教師の縁で知己なるEric Legrix(李格力)君は昨年は凱旋門賞にこそ騎乗せぬものの凱旋門賞の日の最終レースで勝ち今年は九月初旬にロンシャンでのG1戦でフランスに戻ってから初のG1勝利を得て当日に次男誕生と幸事ありロンシャン競馬場宛に余とZ嬢からお祝いのカード送ったが届いたかどうか、で本日は好調のValixirに騎乗。今月は海老蔵の襲名披露巴里公演もありロンシャンで観戦できれば最高だが、せめて馬券だけでもLegrix君に祝儀もこめて単勝とValixir軸にMamool、タップダンスシチーNorth Lightに流す。懐かしきロンシャンの競馬場。レースはNorth Lightが出足よくタップダンスシチーが好位置につけて最終コーナーで勝負に挑み一瞬ハナをとりまさか?と思った瞬間に体力尽き、そこにCherry MixでSoumillon君の二年連続凱旋門賞制覇か?と驚けばBagoが競り勝って一着。李格力君は六着くらいだったろうか。香港ではBagoは12.5倍、Cherry MixとのQの143倍はじつに馬券として魅力的でSoumillon君贔屓ならそこから総流しといふこともあったのだろうか。余の得た配当乏しくも競馬三昧の日気持ちよく終わる。
蘋果日報の随筆頁は左肩の一等席が蔡瀾でその右隣が陶傑、蔡瀾の下が左丁山と一流処が並ぶ。今朝の随筆では陶傑北京での國慶節での国家首脳と香港代表団との「接触」について得意の薀蓄、左丁山は立法会議員に当選の民主派の弁護士・余若薇女史について述べ、それぞれかなり読ませる随筆だが、蔡瀾氏は“Sony Ericsson S700i”といふ題で単にこの新しい携帯電話の性能を述べる。誰でも書ける、別にわざわざ「蔡瀾の」随筆で読む必要のない内容で「携帯を買う時は自分のニーズが何なのかよく考える必要がある。もし撮影が好きならこのS700iはピッタリだ」と結ぶ(笑)。これの何処が随筆なのか、書く本人よりも書かせる新聞社側に問題あり。誰もが実は呆れているが蔡瀾にも王家衛の場合と同じく指図できず。
▼一昨日の國慶節より始った中国の十連休で一昨日は二十八万人!が深センより羅湖経由で来港。羅湖からだけでこの数字。ツアーは五百組とか。
▼昨日の蘋果日報の社説「蘋論」で主筆・廬峯氏「共和国は歴史の教訓を汲めるのか?」と敢えて國慶節の祝賀にこの国家がこれまで損った多くのものの代償がいかに大きいか、今後この反省を活かして国家建設ができるのか、を論ず。具体的には章立凡・編の『記憶往事未付紅塵』といふ書籍から引用。建国後の国家建設への貢献が報いられなかった知識人、文化人の回顧録で、例えば三十年代に米国で治水学学んだ黄萬里といふ学者は建国後に中国に戻り国家的革命事業としてソ連の協力で計画された黄河上流の三門峡ダム建設に反対唱えたが反右派闘争で批判され文革期には三門峡ダムの便所の穴掘りまでさせられる。六十年代にこのダムの完成以来陜西省だの黄河中域の砂泥の堆積甚だしく長期に渡り水害の脅威あり川沿いの住民が移住強いられ、かつて黄河流域といへば肥沃な大地が豊饒なる農作物をばもたらしたものが田畑も耕せず。今日の黄河を見ればその河の土砂の堆積すさまじく普段は枯れたが如く細く水が流れ、それがいったん大雨となると大量の河水が川から濫れ〇三年の水害は五百万人に被害あり。このほか建国後すぐに人口抑制策提唱し当時の「産めよ増やせよ」の革命思想に反したとされた馬寅初や大躍進政策批評した章乃器だの。廬峯氏曰く、もし共和国政府が未だ人民に真実を、そして体制とは異なる意見を語る権利をば認めなければ中国の未来は成功にはまだ遠く人々の払う代償が大きい、と。御意。

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