富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農歴八月初一。快晴。すつかり秋の気配。昼に食欲なく目眩こそあれ午後回復し身体の冷えもだいぶなくなり寧ろ靴のなかで足の蒸れる気すら数週間ぶりにあり。早晩にジムで筋力運動。晩にZ嬢録画のNHKの市川海老蔵襲名のドキュメンタリ観る。父の團十郎がまことに才気濫れる人だと感じる。海老蔵は踊りはいいがカメラだのインタビューアに向つて話と全く駄目。饒舌で話も軽く言葉数多いのは父親似だが父は頭のいい人だと思わせ時々長嶋茂雄的天然呆けもあり面白いが海老蔵は単なる横柄さに映る。役者といふのは而も尊敬するのが十一代目團十郎なら寡黙に芝居していればよろし。
▼一昨日の立法会選挙の結果。董建華は「良好(good)」で「令人舒適(comfortable)」と述べる。首相が自民党総裁の議院内閣制ならまだしも香港の行政長官が実質的に北京中央の信任制であると思えば直接選挙で択ばれし首長でないからこそ広く市民の支持が必要なわけで行政長官たる者、立法会選挙での政党の議席の多少にこう易々と感想述べるべからず。粗忽。
▼親中御用政党民建連、港島選挙区で民主党が李柱銘当選求める「告急」策略が上手く李柱銘と民建連の福建婆・蔡素玉の対決の仮象をば作り民主派支持者票をば民主党に集め実際には何少蘭の落選が蔡婆をば当選させる策略であったこと民建連が承認。ったく余もそれにまんまと騙された有権者の一人と思ふと悔しい限り。だがこれが選挙の面白さ。競馬ならこんなのは八百長。それが堂々と通じるのが選挙。
▼余若薇はこの「香港民主の父」李柱銘への多くの支持票について「このマーチン李への賛同は市民がいかに民主制を支持しているかの証拠」と積極的に理解。そうでも思わねばやってられまひ。
▼今回の投票では投票箱が一杯になり投票所で投票箱が開けられ投票用紙をば畳み直したり、選挙開票で朝の三時頃から三時間余り開票速報が公開されなくなり、その間、開票見守っていた候補者らは選挙管理の政府官僚と連絡も出来ず。不思議なことも少なからず。投票用紙については華君も日記に書いていたが見開きA3版のカラー印刷の投票用紙。記名性でなく名前と写真見てV印のスタンプ押す投票用紙は文盲者や選挙に連れ出され民建連に投票せよと唆された八旬の老婆には親切な投票用紙だが資源と資金の浪費。
▼この選挙について新聞の論評はSCMP紙は社説で民主派の落胆について現状でこの議席維持はけして悪い結果ではなく寧ろ中国政府の後押しや組織票で半数維持の保守派与党に対して冷静な現実直視を求め民主的選挙の完成は一日にして成らず、失敗も含め大きな一歩であるとする。信報も社説で、この選挙制度で民主派過半数ならず行政主導体制がじゅうぶんに維持され親中派が影響力もつ議席数保持できたことに「特区政府放心、中央政府安心」だが支持多くも議席とれぬ民主派と職能別枠含め議席維持容易な与党との間で力の均衡維持の容易な現状のシステムが維持できる筈もなく、これについては中央政府の楽観ありと指摘。比例代表制と職能別選挙枠で民主派勢力を打破して「愛国愛港」の議員が多数を占めるにせよ、今後、この比例代表制と職能別選挙枠といふ二つは要検討。中央政府にすれば民建連がついに悲願の第一党となったことで嬉しかろうが実際の得票率で民主派に六割が集まっており、自由党も政府与党ではあるが昨年の二十三条立法で見せた「謀反」ぶりなど資本家利益に敏感で自由党は北京との関係を見ながら無条件に政府支持でないこと。課題多きことを示唆。紐育タイムスも民主派の過半数確保ならずも議会では李Baby國寶や?培忠など中間派の動きなど考慮すれば今後面白い展開ありと述べる。だが最も大きな問題は朝日新聞も指摘していたが民主派のこの選挙対策での失敗での内部反目などであり、現在は立法会からは退いているChristine Lohも"This was a very selfish and stupid mistake, and it's going to cost them a lot of friendship"と述べている。まさにその通り。民意こそ後押しになったものの民主派、殊に最大派閥の民主党が実はかつての日本社会党の如く単なる反対政党で終わらぬためには試練の四年が始る。
▼劉健威氏が信報の随筆で「拒絶娯楽化」と題して中国の金メダル選手らに歌など歌わせ芸能マスコミが追いかけまわし挙句の果ては選手生命短い彼らに芸能プロダクションが娯楽圏入り唆す様に「李麗珊を見習え」と一言。九六年のアトランタ大会にて香港初の金メダル獲った李麗珊女史は香港に戻ってからも一人の運動家としての尊厳守り自己の私生活を大切にしてマスコミとも距離置いた日々。それを劉氏は理想として「香港精神」と呼びたい、と。御意。
▼08年のオリンピック開催に向け建築ラッシュ續く北京で二年越しの懸案であつた中央電視臺の新社屋建設承認される。總工費五十億元。高さ230mの八十階建て。たかだかテレビ局になぜ?といふ氣もするが一黨獨裁政府にとつて政府プロパガンダ放映の國營局の存在の重要性。建物はその象徴であるべきか。本來はテレビ局といふのはテレ朝の新社屋にせよ日テレにせよスタジオなど制作現場は扁たくあるべきで建物も高層建築で目立つ必要なし。フヂテレビは目立たなければならぬ社訓あり例外(笑)。NHKの放送センターも目立つのは日本代表する氣負ひもあらうが實際に高層建築部は音樂藝能だので、報道局や報道スタジオなどテロ對策なども考慮された部分は扁たい部分に地味にあり。それを考へるとこの北京のCCTV社屋は實際の番組制作よりも權威、象徴としての意味あいが強いものといへやう。

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