富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月五日(日)今季の競馬開幕。日差し多少厳しいが競馬日和。パドックの有蓋工事未だ終わらず。開幕日恒例の行政長官杯といっても董建華来場は97年から二年だけ。競馬場に詰めかけた熱漢の紳士的な罵声浴びるは必至で姿も見せぬが恒例。例年代理役の曾蔭権政務司長も野犬の群れに放られるを恐れたか財政司長唐英年君ら来場。行政長官杯は02/03年に鳴り物入りでデビューしたわりにパッとせぬがすでに五歳で安定といへばいいのかThe Duke(星運爵士)が本命の五冠二亜〇負の芙蓉鎮を二位にして優勝。写真は日曜日にリトルマニラと化す中環のフィリピン女中対手の携帯電話屋のセールス風景。FCCに一飲。中上健次の紀行本『紀州』少し読む。「牛を虐殺する者は、それを生命を持った牛としてとらえ屠殺する(略)。牛は苦しさにあがく。あがくことによって体内から血が出る。従って、われわれの口にする牛肉に血の味はない。牛肉のみならず豚もニワトリも血を抜く。山で狩ったイノシシの肉が、くさみがあり荒い味がするのは、往々にして血抜きが不十分だからだ」と。馬の鬣で芸者の鬘を作り尻尾から毛を抜いて弦楽器の弓を作る。肉のついた尻尾の生臭い臭いただよう作業場で尻尾は塩漬けにされ尻毛に虻が集る。中上健次の筆は小説に比べるとこの随筆のような紀行文はたどたどしくすらある。それは、紀州の、そして出遇った人々のエネルギーに中上健次ですら負けそうで、懸命にそれに立ち向かって書いているといふことか。
▼台風多く浅間山噴火や地震など天変地異少なからぬ日本。こういった場合に古来日本では元号改めるなど易断は必須。平成も長引いた不況だのあり元号改め総理を交替させるなども一考とか。
▼陶傑氏が蘋果日報日曜版に「雅典奥運會留給中国的難題和挑戦」といふ文章あり。雅典でのオリンピックは希臘が西洋文明の発祥の地でありオリンピックもこの地に生れ現代のオリンピックが博愛、平和と寛容に基づくものであること世界に改めて告げたのに対して中国は張藝謀の「八分間で世界を震撼させた」閉幕式での発表もさることながら、問題は張藝謀の発想の貧困さではなく、中国が08年のオリンピック開催で“Welcome to Beijing”といふ合い言葉と中国がいくつ金メダルが獲れて世界に中国の成果を見せつける以外に何ができるのか?が問題と指摘。ハード面では具体的には北京の大気汚染や十数万人に及ぶ観光客を受け入れた際の会場と市内を結ぶ公共交通の問題があり、ソフト面では日本など「敵国」チームに対して罵声を浴びせ喧嘩売るような態度をどうするのか。雅典では閉幕の式典で希臘の古代の農民が春耕秋収の豊饒をテーマとした表演を行ったが、中国ではこの農民といふ階層こそ経済発展での大きな鍵となっており、とてもオリンピックでの表演のモチーフにできるようなものでなし。総じて、08年北京大会に向けて欠如するは「文化的主題」であり、金メダルがいくつとれるか、よりこの主題の検討こそ最も大切と。

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