富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

七月廿八日(水)なかじまらも氏逝去。享年五十四歳。元首相橋本龍太郎日本歯科医師連盟より1億円貰ったと新聞に見出し踊っても「えっ……まさか、そんな」などと思うわけもなく「あって当然か」と思うばかりで「橋本君も歯医者から1億円貰うまえに橋本君愛煙の「チェリー」のヤニで真っ黒のあの歯、漂白すればよかったのに」などと嫌みの一つも言いたくなるが今朝の朝刊社会面「中島らもさん死去」とあって「えっ、まさか、そんな」と思ひ「飲酒後、階段から顛落」の見出し読み「あって当然か」と妙な納得。まだ膨よかな顔のらも氏の写真見て思わず涙。カネテツデリカフーズの啓蒙かまぼこ新聞は八十年代確か月刊『宝島』で連載だったか朝日の「明るい悩み相談室」は面白くもメジャー化する中島らもにどこか戸惑い最近は『牢屋でやせるダイエット』読み拘置所での入手希望図書にフーコーコレージュ・ド・フランスでの講義集『Les Anormaux(異常者たち)』であるのが、「さすが、中島らも」と納得。刑務所に社会規範から逸脱した者=異常者らは収容され精神鑑定される、その政治装置=権力の異常がフーコーによって暴露される本を、まさにその現場で読む自慰する者(=らも)。この突然の「らもの死」をいちばん悲しんでいるのは「らもの拘置所」の看守のはずで、看守は「お前はどうせここのことを書くんやろうけど、言うとくぞ、わしのことは面白おかしく書くなよ」とらも氏に言ったことで『牢屋でやせるダイエット』でその一言があまりに事実のみ語られたために頗る可笑しい情景をば描写され結果的にらも氏により「いちばん面白おかしく書かれて」しまった看守。きっと泣いていることだろう。早晩にジム。拳闘系の鍛錬1時間。帰宅して自家製コロッケ食す。『牢屋で』の頁ぱらぱと捲る。
大麻取締法違反という罪状は、愛と平和と希望を希求したものに与えられる勲章である。
ただし、勲章というのは国家から与えられるものだ。そんなもの謹んでご辞退申し上げたい。(中島らも
思わずThe TimersのCD“Timers”を聴く。深更迄眠れず。
▼財団法人アジア女性基金の調査によると「性的関係強要された経験」「高校女子生徒5.3%「ある」と回答」といふ新聞の見出し。実にいやらしい。フーコーが嗤ふこのいやらしさ。高校生の性暴力被害者調査の結果。この基金の委託受け調査したのが大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンター。
東京都内9校と九州3校で女子生徒1463人、男子生徒883人が調査対象 ( )内は「ある」の回答率
相手の裸や性器をわざと見せられたことがあるか (女35.1%、男12.7%)
無理やり体を触られたりしたことがあるか (女37.2%、男13.6%)
無理やりセックスされそうになったことがあるか (女13.2%、男2.7%)
無理やりセックスされたことがあるか (女5.3%、男1.5%)
この研究班では「夫婦や恋人間でも同意のないセックスはレイプ(強姦)としており、この「性被害」の「加害者」は恋人35.9% 知合い34.6%、友達29.5% で相手が教師や家族という回答もあり。調査した大学教員は「高校生の間でも、親密な関係の中での性暴力が多いという実態をまず知ってほしい。夜道は危ない、痴漢に注意などのメッセージでは被害防止にほとんど役に立たない」と宣ふ。勿論、実際に被害にあった若者がいることは事実であろう。が、裸や性器は「わざと見せらる」以外に見るのは偶然か能動的に「見た」かしかなく、この年齢では自然に見ることが稀であり、高校生は一応、能動的に「見る」ことは「好ましくない」のなら、それ以外の唯一の普通の性体験としての「わざと見せられた」は異常だろうか。孔雀が羽を広げる例を挙げるまでもなく<性>性をばアッピールすることが本能なら裸や性器は「わざと見せる」ための性的シンボルであり「わざと見せられる」ことが犯罪なら源氏物語もありゃ犯罪レポートか。「無理やり」の言葉ばかり並ぶが、だいたい大人が経験として知っていることは「いいだろ?」に対して「やめて」のはず。今回の調査は「夫婦や恋人間でも同意のないセックスはレイプ」とする調査班が最初から「性的関係の強要」=犯罪の調査をしており、調査された高校生が「ある」と答えた数字をそのまま「被害」とすべきなのかどうか。実際にその高校生らに「で、そのセックスとか相手が加害者で自分は被害者だと思ってますか?」といふ質問の回答を見たいところ。このテの調査、平安時代と江戸時代でも質問がこの形式であれば「被害」多いはず。何を被害と思い何に心理的影響を受けそれがどう将来にまで影響するのか、でそれがメンタルサポートの意義なのかも知れぬが「性犯罪が多い」「実は夜道での変質者や痴漢でなく身近なところで性犯罪が!」と指摘されたところで、それじゃどうすればいいのか。それこそ「被害防止にほとんど役立たない」と思うのだが。世の中、何かへんな方向に神経過敏。(追記)翌廿九日の蘋果日報にこの調査結果「日本女生20個有1個被強姦」とセンセーショナルな見出し踊る。結局こういった波紋となるのが事実。
全人代香港代表も兼任の立法会議員某氏(無所属)が9月の立法会選挙での立候補取り消し。苦戦確かな親中派・民建聯の候補者当選狙いの調整か。すると今度は同じく親中派で四名の議員有する港進聯は党解消。港進聯は九四年に親中派商界の新香港聯盟と自由民主聯會が新華社香港分社(現:中聯弁)の肝煎りにて合併し成立。九七年返還時の臨時立法会には八名の議員送るが返還後初の立法会選挙では五名となり現四名も親中派団体や企業などの後押しなければ得票難しき者ばかりにて民建聯はじめ親中派にて少ない票の取り合い避けるがための一手か。惨状極まりなし(笑)。
▼昨日綴った、久が原のT君よりの折口信夫の「ふけやくになるまでいきし佐野川のごとくあらむとわれはおもはず」という歌。佐野川、佐野川とどこか江戸の相撲取りの如きこの名、佐野川、佐野川……「そうだそうだ」と三島の新潮文庫(花盛りの森・憂国)。小説「女方」で増山が憧れたがこの女形・万菊で姓が佐野川。市松模様で有名は佐野川市松でこれは別と戸板康二の本で知る。で、その佐野川万菊は「はじめ美しい役者だったのに、後年役柄を変え、老年期には、むざんにも、老け役をつとめ」といふ話あり(戸板康二による)、折口信夫はそれを「ふけやくに……」と詠む。で、その万菊であるが、今では戸板康二の本にこの折口の歌があるばかりで、それもT君ほどの人がこの物語などしるばかりだろうが、調べてみればこの万菊は近松門左衛門と時代同じくする上方の女形近松の眠る尼崎の広済寺は生前の近松らの寄進で本堂など建立するがその寄進者にこの佐野川万菊の名もあり。ところでこの広済寺なる寺、もともと禅寺で南北朝に頃には荒廃し、それを日蓮宗の寺として復興した日昌上人とこの近松の関係も興味深し。この寺が尼崎なら同じ日蓮宗の寺で宝塚には鉄斎の清澄寺もあり機会あらば是非両寺とも訪れたきところ。

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