富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

七月廿二日(木)昼にKirti Narainといふ印度の歴史家が中文大学にて研究した香港の印度人社会についての講演会あり。商務印書館より“Co-prosperity in Cross-culturalism: Indians in Hong Kong”といふ書籍上梓し其の記念講演。隣席に香港で有数の印度家族でこの本にもかなり登場のMohan氏夫妻あり。右隣にはRoyal Asiatic Society香港支部の前会長いらっしゃり興味深い話もあり。ミイシャ=マイスキーの珠玉たるバッハの無伴奏チェロ組曲のCDゲットして昏時ジムにてビクトリアハーバーの向こうに夕暮れ迫る九龍の景色みつつの有酸素運動にてこれを聴く。感慨至極。帰宅しチゲ鍋。雑用済ます。一年にわたりかなり時間と労力費やしたこの取り組みからもこれで解放される。殊に土曜日の午後毎週時間拘束されかなり厳しところ明後日よりはこれもなし。マイスキーのチェロ組曲続きを聴けばやはり至極は5番のハ長調、なかでもSarabandeの一曲。殊に和音の完璧なまでの調和。和音に酔ふなど未知。頸に神経痛あり歯茎の奥のほうも痛み珍しく飲酒なく服薬し臥床。
▼香港バプティスト大学の社会学の教授が北京での社会学学会参加の際に行方不明となり「すわ中国政府による拘束か」「台湾だの米国のスパイ容疑か」と話題になりしが実は北京にて買春の廉で公安に連行された事実明らかになり本人は帰港での記者会見にて容疑否定するものの北京にて公安の取り調べに対して買春認める供述書に署名した事実まで当局より公表される。本人曰く学会終わり投宿の北京飯店に戻る途中「マッサージに寄った」が終わってタクシーに乗ると見知らぬ女が教授の乗ったタクシーに飛び乗り追いかけてきた公安に教授も女と一緒に拘束され慣れぬ普通話(国語)でのやりとりで事実関係の釈明できぬまま解放されたき一心にて公安の用意した供述書に署名。その供述書のなかに買春の事実認める文書もあり、と釈明。かなり苛しい釈明ながらこの教授、ソーシャルワークの専門家だそうで、それなら北京にて風俗業の社会工作の実地調査だったと言い張るべき。
▼駐在香港の人民解放軍この軍隊の設立七十七周年記念で八月一日に石崗の軍営にて大規模な水陸空軍の閲兵式典開催。九七年以降四度目。これまで軍施設開放日あったが閲兵に初めて市民招きその数一萬五千人。立法会議員の参加は今回注目は民主党の議員招かれ中央政府との対立姿勢から関係改善で民主党も党主席ら参閲。駐港軍曰くこの閲兵式典九月の立法会選挙意識するものに非ず。だが民主党この閲兵に参加することで民主党が台湾独立など含む国家(つまり中共政府だが)顛覆企図する団体でないことと証し、これに参加せぬ、例えば「前線」の劉慧卿女史など「中央政府との対話は然るべき場所でされるべきでそれが閲兵とは思わぬ」とするが劉女史の「台湾の将来は台湾住民自身が決めるべき」などといふ発言中国側にしてみれば台湾独立支持=国家分裂活動。結局今回の閲兵が謂わば踏み絵となり民主派をば過激派と穏健派に分別すること明白なり。
▼新聞を一日に例えば五紙、余の場合「目を通す」順番で言えば朝日、Herald Tribune、蘋果日報、South China Morning Post、信報となり、これに讀賣とか星島とか「身銭きっては読まぬが」程度の新聞がいくつかあり、結局読み終わらず、新聞紙溜りとくに熟読要すはHTと信報の論説記事。で結局読めぬ新聞溜るのが自宅だの仕事中のふと休憩の時間ならまだしも、乗り物の中だの加えてもそれだけではとても時間が足りず、となると本来ここで新聞読んではいけぬ状況でも読まざるを得ず。何か仕事中はみずからの仕事済ませばならぬが、ただその場にいればよいような場に於いてなら、新聞を読みたい場合どうすればよいか。まさか新聞広げるわけにもいかず。その際の方法は、まず溜った新聞にざっと目を通して気になる記事はとにかく切り取る。それをA4版のクリアファイルにでも入れておく。でその「とにかくそこにいればよい」程度の場なら何か資料見ているふりしてクリアファイル越しに新聞読み。読んだら一枚後方を、と続ければよし。これが他人から見ると意外と「関連資料を見ている」と映るようで先日も本来なら何もせずにじっと立っていなければいけない場で(マネキンかパントマイムだ、これぢゃ……笑)そうして新聞読んでいたらその場の責任者が突然来てしまい一瞬困ったが責任者氏は「あ、すみません、ちょっといいですかお話ししても」と恐縮されるほどに効果発揮。

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