富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

七月十一日(日)朝晴る。午後遅くまで薮用あり。溜った新聞論説、切抜きの類い読む。先週の報道はイラクでも米国大統領選挙でもましてや日本の参議選挙でもなく世界の注目はバンコクで開催の国際エイズ会議。ソマリアなどアフリカでの深刻なエイズ感染は従業員雇う場合に専門職なら一人雇用の際に二、三人分を見ておかねばならず軍隊の人件費は50%増となる現実。アジアは九十年代初頭のHIV疫禍治ったもののタイでは依然69万人(成人人口の1.8%)が感染者にてタイの男性の死因のトップがHIVという現実。なぜ今回これほどにHIVが報道されているかといえば国際企業協賛のため。世界の名だたる企業協賛に見事に日系企業の名前もなし。天晴。週刊読書人の特集でこの夏が中上健次の十三回忌と知る。早晩に銅鑼灣に下れば強烈な驟雨。バス折りて地下鉄口に逃げて灣仔。ジム。マシンにて運動しつつ岩波『世界』八月号読む。隣りのマシンの御仁が「憲法改正」とか「多国籍軍参加」とか「皇室皇太子妃殿下」といった文字に「落着かぬ」様子(笑)。いちいち内容綴らぬが日本の現状がいかに緊迫しているか。一つだけ綴れば「言論の自由」が「自由であるはずの」日本は世界で四十四位。国境なき記者団によるランキング。東チモールエルサルバドルパラグアイエクアドルより下位でイスラエルと同位。次がマダガスカルカボベルデ、ガーナと続く。言論の自由があるといふ認識の中での言論の不自由を国民は理解しておらぬから故の不自由。原因は国民の意識も低き個人情報保護法の立法化、赤報隊による朝日新聞襲撃の時効、記者クラブ制度、『歌舞伎町アンダーグランド』の著者染谷悟の殺害や『フォーラム21』での乙骨正生氏の弾劾などが日本が四十四位に位置する要因と『世界』述べる。いずれにせよ国民がこの言論の不自由を理解しておらねば問題にも値せず。日本の問題は言論の自由は「言うのは自由」「但し言った上で何か弾圧だの喰らった場合」に「それを更に糾弾するほどの言論の自由の貫徹に対する社会意識なき」こと。イラクの復興支援などする前に自分の国の人権だの自由の蹂躪に本来抗するべき。それもわらかぬ知力の不足。小一時間鍛錬のうちに晴れる。帰宅して晩にNHKにて参議院選挙開業速報見つつZ嬢の酒肴にて二本松の「大七」の純米酒。美味。酒の肴も唐墨、きねかつぎ、冷蕃茄、豆腐に茄子など。参院選挙は自民不信民主躍進とはしゃぐが現実には民主の議席増など共産の失席数そのままだと思えば単に二大政党制といふ寡占に走っただけで現実には自民に対する国民の審判など下っておらず。小泉三世は与党過半数維持を理由に続投を宣ったとか(嗤)。前回小泉支持が今回は民主党の「日本はこのままぢゃいけないから政権交替」訴える松下政経塾的な若手保守に支持移ったもまた事実。つまり国民は自民党に対して拒否権発動などしておらず寧ろ左翼政党の拒絶→民主党も含め自民&民主といふ「所詮同じ窩の狢」選んだといふこと。祖国日本済ふが為の大同団結もなきにしもあらぬ、そのような茶番の中でおそらく最も真当である筈の中村敦夫氏は落選か。残念。ところで青島幸男君落選はあの「無責任」に都民もさすがに呆れたから故だろうが、青島君の無責任の拒絶→石原支持と思うと怖い怖い。大方の選挙状況見えてテレビをZ嬢入手のビデオからテレ朝開局45周年だかのドリフ特集見る。あちこちに当世では放送禁止のブーが入り廿余年前のアグネスチャンにいかりや「お名前は?」「陳美齢」「なんだか覚えにくいからアンタは陳来々」と。東村山音頭など今聞くと何が面白かったのか全く分らぬがZ嬢が子供の頃に東村山まで友達と自転車にて志村けんの実家探検に行った話など知り笑ふ。
▼今頃になり6月29日のHerald Tribune紙の“Ground Zero's past of blood and hope”なる二面の論説読み紐育の9-11にて壊滅したWorld Trade Centreが単に現代の米国資本主義の象徴に非ず十七世紀の和蘭陀人の植民からウォール街に接した此処の地がいかに紐育の、米国の象徴たる場所だったかを読み、これまでもアメリカ原住民の焼討ちくらふなど怨念の対象だったことを知る。

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