富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

六月十五日(火)朝に驟雨あり。昼に中環卑利街の京味居に食す。唯霊氏、劉健威氏らの紹介で繁盛の四川風味なり。炸醤麺、水餃に京焼羊肉。秀逸。店の主人劉健威の信報連載の随筆を店に貼っており眺むれば「奇菜」と題した昨日の文章にて劉氏店の名を語らず知人と食した「附近的京菜小館」として此処で食した「黒々と焼かれた濃厚なる風味の羊肉」供され知人それを「爆糊」と呼びこの羊肉爆炒をば初めに作った料理人も大したものと劉氏賞め香港にて食すを喜ぶが、昨日それを読んではいたがこの京味居とは知らず偶然にも注文した京焼羊肉がそれ。卑利街の少し上がった処には陳成記あり伊湯麺も食したくもさすがに我慢。炸醤麺といへば初めて食したのが盛岡。盛岡の友だち尋ね県庁近くの白龍といふ店に食した味未だ忘れ難し。大蒜のきいた肉味噌の濃厚さに驚いたが麺食し終わったところに白湯を注ぎ飲むスープの美味さ。冷麺も盛岡は本場にて市街の有名店もよいが連れて行かれたバイパス近くの普通のバイパス沿いにありがちな食堂の冷麺の美味なること。何故に盛岡に炸醤麺、冷麺かと想像するに戦前に半島より強制連行された朝鮮人士より広まったのか、同じ北緯38度線にて厳寒の気候ゆへかなどと語りつつ舌鼓み打ったも早二十年の昔のことなり。香港のこの店の炸醤麺は麺が「手拉」の手作りにて歯ごたえ格別。晩にFCCにて天安門事件のドキュメンタリ映画の上映今晩より連続三週火曜日にあるが急ぎの仕事あり見られず。Z嬢とQuarry Bayのインド料理Mother Indiaに食し遅晩まで急件済ます。荷風先生の日剰昭和16年の春までを読む。日に日にます軍事の臭いに荷風先生、自由に生きること覚悟する日々続く。
▼香港通信の元編集長吉田一郎さいたま市長らの給与是正に反対しハンスト中(こちら)。香港の頃に比べ写真見るとまことに精悍なり。ハンストでも食煙(喫煙)は続けるだろうか、きっと。
▼蔡瀾氏蘋果日報連載の随筆にて自ら主宰の旅行団宣伝ばかりか本日は遂に自らの秘書の募集。本人「既然我有一個專欄、就能公開假公濟私、不然寫來幹甚麼?」(連載欄で「公ヲ借テ私ヲ済ス」書くのに何を躇おうか)とは呆れるばかり。求人広告の掲載料ももったいない、と言うがちなみにこの随筆(笑)の題は「女秘書」で香港の条例にて当初より女性に限った求人広告は掲載できず。
岡山県選出の自民党代議士平沼赳夫教育基本法改正の必要性強調する中で「教育基本法では個人の尊厳が強調されている。日教組の教育とあいまって、個人の尊厳が行き過ぎて教室破壊が起こり、生徒同士が殺し合いをする荒廃した状況になってきている」と述べる(朝日)。暴論甚だし。養父は戦時中の首相・男爵平沼騏一郎君にて妻の父は貴族院議員で公爵の徳川慶光君(慶喜嫡孫)といふ平沼二世。養父は敗戦での東京軍事裁判にてA級戦犯とされ終身禁固の服役中に病死(昭27)とあっては戦後の「民主改革」で生れた教育基本法だの日教組だの「家訓として」憎むも理解に易いが個人の尊厳まで罵倒とは。これでは所詮ファシズム。その昭和の初めに「国家の尊厳が行き過ぎて国家破壊が起こり軍人同士が殺し合いをする荒廃した状況」であったのが事実。この平沼二世だと三菱ふそうの自動車問題も個人の尊厳の行き過ぎか(嗤)。
▼昨日有事関連七法案の成立。これほど重大なことが讀賣では三菱ふそうの自動車問題より扱い小。プロ野球パリーグの球団合併の方が国民の関心高し。亡国の様極まれり。朝日は社説にてパリーグ維持のために巨人(=讀賣)二分割してパにも巨人軍を、と。朝日が衆議院で圧勝の自民に参議院でも奮起期待するが如し。巨人などセリーグにあるだけで十分なり。

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