富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

六月初三(木)晴。諸事に忙殺されさしたる事もなし。Z嬢が日本の旧国鉄のジャパンレールパス購入す。訪日の外国人の為の便宜ながら海外在住の日本国籍者も条件満たせば購入可。かつては海外に十年以上といふ条件が今年四月からだか居住地の永住権ある者と変更あり。香港の場合、七年居住で永住権得られるとせば十年といふ旧条件より寧ろ改善かと一瞬思ふが近頃は七年居住の場合にUnconditional Viza(無制限滞在)発給されても永住権の発給には香港政府も余り積極的でないが事実。無制限で居住出来るのだから永住と実質一緒でしょうが、といふのがお上の言い分。だが実際には永住権与えることは選挙権だの余計な権利の付与にて積極的にならぬのが事実か。芸術新潮誌六月号に磯崎新君の「日本建築史を読みかえる6章」なる特集あり一読。「読みかえる」の「かえる」の意図不明。此処に日本の象徴的建築として古来の出雲大社などから語り始め現代の二例として代々木の国立代々木競技場と水戸芸術館の塔を挙げる。周知の通り水戸芸術館は磯崎君自らの設計にて其の塔を「無限としての柱」と本人称す。この施設ぢたいに何の責任もないが一頁大の鳥瞰写真見れば周囲の無味乾燥なる水戸市街の中にこの施設と象徴としての塔が異質。塔の側らには石山といふ仏具屋のトタンで葺いた屋根と壁の倉庫があり芸術館正面は京成といふ百貨店の搬入口にトラックが並び、市街は此の三十年の間に(芸術館と幾つかのマンション建築を除けば)殆ど変化がなく閑静といふより空き地多く駐車場ばかりの地方都市にありがちな幽都ぶり。本来、劇場だの公共施設は市街の一部であり、其の核たるもの。此の芸術施設の中ではいくら積極的な動きがあろうとも周囲の市街に其れへの「呼応」なければ此の施設が此の市街に存在する意味はなし。本来、此の芸術館に聚まる人々がいて其の衆が此の街に遊び市街が此の芸術館と連動してこそ価値あり。ただ此の館での企画に人が来るのは其の衆は同じ企画あれば東京まで足を運ぶ積極的な愛好家であり亦た遠方より此処に来る客も亦た水戸に来るのではなく芸術館に来るのみ。此の施設の建設に邁進せし当時の若き市長、故・佐川一信君の期待は此の地にあつた伝統ある小学校移転させてまで(画家中村彝の母校なり)此の施設をば市街の中心に据えることで泰西の市街のドームだの教会前の広場だの巴里のオペラ座の如く其の施設を核に人が遊び市街活性化すること。それが普段閑散とした施設から仏具屋の倉庫だの百貨店の搬入口眺めては寂寥の感ばかりなり。
▼香港競馬界にてCruzにたった一人続く不世出の天才と讃えられながら見習騎手時に素行不良にて騎手資格剥奪され調教手となった余健雄君、勤務態度良ければ香港競馬界の地場騎手の不当りもあり騎手復帰かと噂されマカオ競馬での再出発も一時話題となったが数ヶ月前に彼の自家用車車内より攻撃性武器(といっても一本の鉄棒ながら「その筋」の方誤用の専門道具なり)が警察の取締りにて発見され(一斉取締りの場所手前で徐行運転せし車の存在に警官気づき検査せば余君の自家用車で「武器」の発見)昨日の裁判で懲役四ヶ月の実刑判決にて即刻入監。才能あり美しき騎乗ぶり感嘆に値しながら絶望的に破壊的でもありまるで尾崎豊君の如し。

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