富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

五月十四日(金)昼前にひどい雷雨あり。早晩にFCCの酒場で新聞読み資料整理。久々に日刊ベリタに記事送稿。倶楽部内でのワイヤレスLANの設定をもらうがつながらず。スコッチのモルト酒のTamnavullin飲む。Y氏来港にて此処の酒場で落合い一酌。Y氏来しなに蘭桂坊の坂下にてバス一輌走行に過失あり家屋に突っ込む事故あり周辺大混乱との話。テレビのニュースに映るは金庸記の隣りの奇華餅家なり。狭い坂道の交差点に高性能の大型バス走り而も交差点の二カ所にて地盤工事で道路幅狭まり事故おきぬほうが不思議。車雇いY氏とHappy Valley。Z嬢来て益新に食す。卓につくなり黙っていても紹興酒が一瓶置かれるはこういった小さい店ゆへのこと。店の主人に石班の芝麻班を苦瓜と湯葉と供す料理勧められ食すが実に美味。店内に映画『金鶏』の主演女優・呉君如らの姿あり。Y氏が松山の皆美館の話され此処のみな美なる料理屋が東京にも凝れど日本橋に出店ありと言われそのコレドなる場所何処かわからず「あ、昔の白木屋」と言ってしまふ。結局三人で紹興酒二本飲み更に源遠街の葡萄酒酒場にて赤葡萄酒一酌。車雇いY氏を銅鑼灣の地下鉄站まで送り帰宅。リベタの記事手直し。
▼中国側からの香港の選挙介入あり。選挙人登録を求められる、親中派への投票を大陸の親戚だの取引先から求められる、そればかりか投票所にては投票用紙記入の際に携帯電話にて投票用紙撮影し証拠としての提出だの、尋常にあらず。翌十五日の朝日にはベタ記事で出るが日本とて田舎の村長選挙から国会議員選挙まで投票勧誘だの買収すらあり中国を罵る立場になし。
衆議院健保調査会の昨日の公聴会猪口邦子上智)、川本裕子(早稲田)、小熊英二(慶応)、文化人類学船曳建夫(東大)、山崎正和(劇作家)ら公述人として参加。朝日新聞本日の報道によれば(不思議とインターネット上の朝日新聞には一切報道なし(何故だ?)……ゆえに下記の発言もコピーできずいちいち打字)
船曳君……憲法を改正してはいけない、という言い方は平和主義者の発言であってもそれはある種の脅迫。だが結論としては、九条の制限あるのに自衛隊を有し自衛権はあるという苦しい議論jを続けた、これは六十年の積み重ねによる財産。論理的には苦しくとも九条を保持し続けるほうが得策。世界は次第に戦争をしなくなってきており、戦争ができにくいことは理念的にも現実的にも認められている。世界は日本の考えに近づいている。世界が動く方向と逆に日本が進むのが危険。国家百年の計に非ず。
猪口君……国民は半世紀を超え憲法守り抜き理想を目指し努力。まぎれもなく憲法は国民のもの。それを否定することは戦後を誠実に生きた無数の国民の努力を軽んじることになりかねぬ。自衛のための実力組織について憲法上言及する可能性は研究に値するが軍縮・不拡散・人道支援で九条の平和哲学を確保しつつ実行は可能。
山崎君……(九条改正に柔軟な氏だが)戦後民主主義か愛国的国家観といった二項対立や漠然としたイデオロギー対立は排除してほしい。九条改正といっても、どう改めるのか具体的な選択肢を政治が示していないのだから国民が混乱した答えを出すのは当然。教育基本法の改正の議論でも「愛国心の涵養」という言葉使われるが日本の伝統文化への尊敬と愛国心は別のこと。九条にまつわる具体的問題とイデオロギー的問題が一緒に包括的に議論されることがおかしい。
小熊君……憲法九条は米国による押しつけという面もあったが日本の非武装化天皇制の維持とがバーター関係だったことから当時の保守陣営は歓迎。冷戦激化や朝鮮戦争で日本を改憲させ反共のため再軍備させる方針に米国が変換しても、これに当時の革新と「保守の一部」が反対。米国の傭兵になるという危惧。吉田茂首相は九条と国内の反対世論を理由に再軍備要求を値切り経済成長に専念。それが日本の基本姿勢。イラク問題でも世論の反対があるからこそ米国の要求を抑止。押しつけ憲法だから自主憲法という議論は感情的。改憲は必要か、という世論調査の疑問が「改革」が必要か、と受け止められている。何となく行き詰まっているから改革は必要だ、というもの。
吉田健一(一般・弁護士)……自衛隊イラク派遣など憲法に従って政治が行われていない中で憲法「改正」すればそれが正されるのか。戦争への道進む憲法改正は認めるわけにいかぬ。平和主義が危うくなれば人権保障も危うい。前文や十三条をもとに権利の救済を求めてきたが改憲を口にする人はこうした救済に対して寧ろ足を引っ張っている。
日高明君(一般より公募)……憲法前文と九条は不戦条約に始る世界の戦争違法化の流れで確立されたもの。とくに広島長崎への原爆投下の教訓。前文は不安からの脱却を視野に入れた「人間の安全保障」の必要性を定めたもの。これは誇り。
などと供述。じつに真っ当。それに対して
川本君……憲法は国の基本法として経済的自由を保障すべき。政府の経済介入の制限。
など川本女史の早大大学院ファイナンシャル研究科というその狭義での学問?の範疇だけでの発言で、実際に憲法には経済的自由は保障されており政府の経済介入は憲法問題ではなく政策的技術論であり現行憲法でも自衛隊があるのと同じこと。それと傑作は
安保克也(一般・日本電子専門学校専任講師)……戦争のあり方が大きく変化しハイテク戦争やサイバー戦、情報戦といった視点が重要で、サイバー戦争に対応するためには従来の警察組織では不十分で、九条を「国軍は、サイバー軍、陸軍、海軍、空軍の4軍から構成され……」などと改正し、情報省を新設……
などと殆ど???の域での発言(笑)。実況中継をばみると更に迫力あり(こちら)。……と一部を除き非常に真っ当なる発言ばかり。自民党の元文相・森山真弓君の憲法前文への「愛国心」なる言葉入れるがふさわしいという意見には「国会議員はどうしてこれほど愛国心を語るのか不思議。国政の政治家は国が愛されないと困る。野球選手が野球人気を気にするのと同じ」(船曳)、「憲法まで持ち出した愛国心教育より二十人学級実現のような具体策が有効」(小熊)、「憲法問題というより技術的な問題」(山崎)と森山愛国心ににべもなし(笑)。これが常識的な知識ある人たちの発言。これと世論の過半数改憲に賛成というのは乖離みられるが、結局、マイケル=ジャクソン似のロッカー小熊君の指摘する「不透明な現状から改革の必要性が改憲気分」となっていること。これだけ有意義な発言あっても深刻なる問題は、もはや改憲は現実日程で、この公聴会とて定数二十五人を九名下回る十六名の参加のみという低調さ。国会議員の非常識、知識水準の低さに呆れるばかり。ところで、産経新聞がこの公聴会の護憲的内容を記事にもできぬのはわかるが、是が非でも改憲したい(だけの)読売新聞は「改憲巡り賛否…衆院公聴会で公述人の意見分かれる」と一瞬、これは事実の改竄か、と驚くが「一般公募と政党推薦の公述人3人から意見を聞いた」と紹介される意見は、まずサイバーオタク安保氏の「憲法前文に「日本国民は祖先から受け継いだ文化、伝統、言語を保護し、国力に応じた国際平和協力に貢献する」などの表現を盛りこむべきだと主張」と改憲主張を紹介。そして「憲法9条についても「国軍は(電子戦などを担う)サイバー軍、陸軍、海軍、空軍の4軍で構成する」と明記するよう求めた」と、この改憲主張1名だけが実は改憲派で、仕方なく一般公募の吉田氏と日高氏の護憲主張を添える。当然の如く猪口、小熊、船曳、山崎ら諸氏の護憲論、慎重論は紹介することもなし。これこそ偏向報道。だから読売新聞などだけ読んでいてはいけぬ証左なり。……と書いたら、この読売記事読んだ築地H君より「サイバー軍、って巨人軍かと思った」とメールあり(笑)。だが読売新聞はすでに軍を保有。いま日本で軍を名乗っていいのは巨人軍と救世軍くらい。その「特権」を国軍創設でみすみす手放す気か、読売新聞社。軍をもってる新聞社なんて素適。革命家の如し。いっそのこと読売の改憲試案で、国軍の創設するのに巨人軍を軍隊にするのはどうか。相手が戦争しようとしているのに野球で挑む! これぞ平和主義。
▼教育署前署長にて現在、教育統籌局常任秘書長の要職にある羅范椒芬女史、最近、暴言続く。余の日剰四月十一日並びに十三日に綴ったは「学生に行政長官董建華批判する資格なし」だが今月に入っても立法会での教育改革に関する質疑に対して「教育改革は麻薬のの如し。一度始めればやめられぬ」と妄言。それに続き十日には「若い教員の就業機会確保のためベテランの教員は早期退職するか非常勤への転職を」と暴言。羅女史、かつては香港政府の花形にて市民の信望も厚きものが、今では様相からして変わり、この常軌逸する発言の数々。四月の董建華非難否定の発言のあと本人ばかりか海外に学ぶ女史の子どもまで精神的圧力あり、とラジオ番組で溢すが、どうであれ本人の暴言が原因。同情する気にもなれず。
▼先日のラジオ政談家・鄭経翰氏の降板(五月四日に記述あり)に続き鄭経翰氏の畏友にてやはりラジオにて「名嘴」と賞されし黄毓民氏も同じく商業電台の政治談義番組「政事有心人」より降板。「心身疲労甚だしく休息をば要す。申し訳ないが暫くマイクに向かって話せず。皆の幸運を祈る」と書き置き。言論自由への抑圧ますます強まる。

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