富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

四月廿九日。先帝御誕生日。ところで瘴癘(しやうれい)といふ言葉あり。M君調べると「人ガ山林ノ間ニ到ル接觸ニ因リ熱蒸ノ毒氣發スル所ニ生スル疾病」つまり「気候・風土のために起る伝染性の熱病。風土病。」(広辞苑)にて杜甫にも「江南瘴癘地,逐客無消息。」とあり。灼熱のボルネオであるとか帝国陸軍ルソン島ならまだしもなぜ今更この言葉かといへば外務省に瘴癘度なる言葉あり、それがバングラディシュとかならまだ理解に能ふが中国が上海を除き北京もこの瘴癘之地(笑)。で、当然の如く海外勤務手当も高くなる、と。今どき中国がこれでは外務省の感覚も感覚だが中国政府は真剣に抗議すべきでは? ところで唐詩といへば本日の蘋果日報の陶傑氏の随筆で陶傑氏「君」なる言葉取り上げ中文において漸々消え失せる言葉がこの「君」である、と。「君」なる物言いの礼節と深い感情は称号は称号でも「先生」の堅苦しさと「兄」の気安さの間に丁度いいところにあり杜甫の音曲師・李亀年に宛てた「正是江南好風景、落花時節又逢君」の、この「君」といふ言葉での親しみ。中国製の安タオルに「お早うございます」の意味で「祝君早安」とあるのも趣きあり。この「君」は仏蘭西語のtuに対するvousのニュアンス、英語のyouにはなき感性か。田中長徳の『ライカを買う理由』読了。ライカであるとかコンタクスの透視ファインダーの写真機を使う者が、一眼レフ=目に見えるものを写すのに対して、透視ファインダーから被写体のなかに「見えないもの」を写そうとしているのだ、といふ点を除けば余りにタメにならず。
週刊読書人四月三十日号に一頁大で池田大作先生『人間革命』執筆四十周年に寄せてといふ記事あり。西川潤、中島誠といった人たちのこの著作への賞賛あり記念記事ゆへ通常の書評とは違い褒め言葉になるのはわかるが、確かに山下肇による戦前から敗戦直後にかけての戸田城聖の回想など面白いが、ここまで大絶賛となると広告記事とも見える。通常この週刊新聞にてありえぬこと。

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