富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

四月廿七日(火) 昨晩読みし荷風先生日剰昭和十三年の大晦日書抜き。戦の足音忍び寄る年の暮れ荷風先生浅草界隈珍しく朋伴連れ立ち楽しげに過される。晦に浅草に集ふ人たちの苛しき暮しの中での束の間の幸ひまで眼に浮ぶ如し。
十二月三十一日。陰。朝の中食料品を買ひとゝのへて後再び眠る。午後三時ごろ豬場君市川より電話を寄す。日の暮るゝを待ち吾妻橋丸三屋に至れば氏既に在りて餘を待てり。今半に一酌する時平井君稻毛より來る。十時過六區の森永に至るにオペラ館既にはねしと見榮竹下よし美高清子生田某谷中氏等居合せたり。年越しの酒汲まんとて一同千束町角の成駒に至り踊子高杉千慧子をも招ぎて除夜の鐘を聞く。やがて盃を納め一同女逹を車に載せそれぞれ其寓に送りて後玉の井の里に行きぬ。いつもは夜二時かぎり戸を閉す規則なれど今夜は何時までといふきまりもなし。俳優生田は二十過ぎたるばかりの者なればまづこの男を三部保立といふ家に送り込み一同路地裏を歩み廻り東武電車に乘りて淺草に戻るに夜のふくるに從ひ西新井へ初詣せむとする人々停車場の構内に押合ひたり。既に繭玉護符提げて歸り來る人も多し。仲店のあたりは雜衆最甚しく横切り難きほどなり。漸くにして六區の森永喫茶店に至りて憇ふ。女連の客一組去れば又一組來りて客の出入絶え間なく明け方近くなるに從ひ店内ますます賑なり。銀座の飮食店の如く泥醉したる者なくいづれも皆樂し氣に見ゆるなり。六時近くになりて外に出でしが夜は猶明けやらず燈火のあかるきこと昨夜の如し。再び玉の井の里に行かむとて一同又もや東武の停車場に至りぬ。
本日早朝に強雨。黄雲警報。すぐに青空広がる。香港の政制経緯についての文章粗綴。とてもまとまらず呻吟。

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