富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

二月十日(火)晴。気温十五度位迄上るが風強く寒さ昨日などより更に厳し。ジムに寄る時間もなく遅く帰宅し夕餉に鍋。十年以上前に香港を離れ米国に戻る某氏夫妻に譲られたる頑丈なる電気式鍋先日終に変調来たし象印の直火に掛るも可の鍋購ひ初めて用いる。ここ数日の新聞読む。香港にては政務司長Donald曾蔭権君に司法長官梁愛詩及び政制事務局長某君の一向上京し基本法及び〇七年直選導入などにつき政府関係者及び御用学者らとの協議に向ふが政府からは冷遇され御用学者らには単にお灸据えられる様、哀れ。深センにてウイルス感染の疑いあり隔離入院させられし香港市民が退院後に隔離施設での治療、設備内容は国家機密にあたり他言せぬ旨の宣約書書かされたのに続き香港を含むマスコミがウイルス感染について政府当局の発表待たず伝聞などで報道するは国家機密の無責任なる漏洩に当たるとして厳重注意。さすが一党独裁国家。たとえば上海の経済発展とて所詮この意識レベルの国家によってなされていると思ふと本当の意味での社会基盤がどこまで構築されたのか、されているのか疑問に思わざるを得ず。
吉野家、本日にて牛丼の販売中止。但し他のメニューにせし場合に周辺の店との競合厳しい競馬場競輪場などにある店と築地店だけは牛丼だけでの販売継続、と昨日だかの報道にあり。では築地店とは何か。明治三十二年に当時日本橋の魚市場にて牛丼屋始めたが最初にて震災の後に心機一転の築地店は当時からの伝統を再現し店の内装などにも執り吉野家にとっては記念館的存在の旗艦店とか。それゆへ築地は牛丼の火を消さず、と意気込み理解可。だが余が疑問は確か従兄弟S兄の中学の同級生だかに当時の吉野家創業家の子息だかおり文京区千駄木の付近。吉野家といへばどうも余の記憶では秋葉原だったかあのへんにあって突然テレビにて「味の吉野家、牛丼一筋八十年〜」と流れた記憶あり。幼き頃に交通博物館への行き帰りにまさか肉の万世吉野家は誤解せず釈然とせぬものあり。
吉野家より歴史が短いのが日露戦争の百周年。戦勝百年記念の麦酒まで発売とか。日本が勝った戦争であり平成の時代に政治的なる利用されること必至だが、今あらためて理解すべきことは当時の戦争と現代戦争は全くことなるもの。確かに負ければ国家にとって致命的であり露西亜日清戦争の清も亡国避けられぬ運命となったは事実ながら、戦争ぢたいでその国家が壊滅的打撃受けず。戦争とは当時、軍隊なり艦船が決められた戦地に向い当然一般市民の巻き添えなどなくゲームの如く戦ふもので、確か、当時は夜間や日曜の戦役中止だの軍幹部による敵軍施設の視察だの戦争終り勝敗決まったあとの敵軍とのいわばノーサイドだのかなり紳士的な面もあり。一般人が巻き添えくらい命落とし徹底的に敵国の壊滅目指す近代戦とは異なるもの。その戦役の勝利が今とは全く異なることをよく理解すべき。
自衛隊イラク駐在部隊の濱田なる広報官。どこの方だろうか。栃木か福島か。広報官にしては「いかにも」木訥とした北関東から阿武隈にかけてのイントネーション。どこか緊張感緩む感あり。それが自衛隊の狙いか……。
▼東京の或る関係筋の話によればやはり後藤田先生、党員として自民党籍あるゆへ党議に反してイラク派兵反対とはいへぬがご意見は人が聞けば誰でも反対とわかるように発言とか。西澤潤一首都大学とうきょう総長もは齢七十七歳にて「晩節を汚さねば」と思ったがもともと「このテ」の御仁であり今更に晩節もあるまひか。仙台にて西澤君の東北大時代のお住まいが米ヶ袋、同じ米ヶ袋に住まう知人より氏は「米が袋の恥」「町内からこのような人物を出したとあっては対岸に佇む政宗公の霊廟にも顔向けが立たない」と。七十七歳で任期何年務められるつもりか知らぬが「後進に道を譲る」ということを知らぬのはわが国古来の淳風美俗たる謙譲の心を知らぬふるまい、「心の東京革命」は先ず己の心から。それに対して梅原猛先生。みやこ新聞以来の東京新聞愛読する築地のH君によれば昨日の同紙夕刊に梅原翁曰く(要旨は)70過ぎたら人生はお釣と心得て本当に書きたいことを書く、自分は七十のときに二度目の癌患い幸い命とりとめてそういう心境、しかし世間をみれば、七十超えても色恋に狂って家族に迷惑をかけたり、権力や地位に執着する人が大勢、梅原先生そういう姿を醜いと思ふ…というような文章。この権力や地位に執着する人として誰が挙がるかは明白。西澤と梅原のいずれも老人家、何れが「子孫に道を説く」に相応しいか答えは明らか。ところで梅原猛も後藤田も八十年代には首相中曽根の懐刀。有事法制を批判した栗原祐幸氏も中曽根内閣の防衛長官。こうしてみると中曽根大勲位も逸材を得。二十年後で小泉内閣からはどう見ても傑出せぬ逸材なり。
▼ちなみに今朝の産経新聞は一面トップが「学校や塾の送迎 わが子に警護 治安悪化で利用急増」と典型的なな「ヒマダネ」ってやつ、と築地のH君。左肩が来月からの紙面改革のお知らせ。右下にやっと「イラク支援 陸自本体始動」と来るが昨日の国会の派兵承認についての報道なし。最下段に3段も使ふ「きょうの紙面」にも派兵承認なしといふ念の入れ様。「産経的には」国会の承認などニュース性なしといふ判断か。二面の政治面左上に四段の細い見出しで「参院 自衛隊イラク派遣を承認 国会の手続き完了」と漸く記事となるが「手続き完了」とは(笑)。「単に手続きなんだから、どうっていう意味はなし」という主張か、とH君。読売ですらトップではないが一面にはこの報道あり。産経ほど徹底せぬのは読売の情けない限り。