富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

人々の幸願ひつつ国の内めぐりきたりて十五年経つ (御製)

一月十五日(木)薄曇。夕方に掃桿埔の香港大球場傍らの體育大樓に在る香港アマチュア陸連の事務所にて週末の美津濃ハーフマラソンのゼッケン受領。掃桿埔からCaroline Hillの南華運動場をばぐるりと周り銅鑼灣に至る道は銅鑼灣からわずか十分ほどの距離にありながら市街の喧噪もなく街路樹茂る道に歩く人も僅かに一人、二人。ビートルズホワイトアルバムよりWhile My Guitar Gently WeepsだのBlackbirdなど聴きつつ独り散歩に好し。Leighton道まで出でHaven街の甜味屋・一品斎にて「紅豆沙」食す。美味。狭い店の路地に面した食台に背中丸め熱い汁粉食すうちに耳許ではビートルズは“Rocky Racoon”流れ余りにこの一品斎の店先にこの“Rocky Racoon”が合適ってしまひ涙禁じ得ず。この一帯、南華體育會の所為か何処からかレスリー張國榮とマギー張曼玉が映画『阿飛正傳』より六十年代そのままに現れそうな気配今でもあり。藪用あり油麻地。以前から気になっていた徳成街のMonitor RecordなるCD屋に入れば確かに予想通り香港でこれまで見たことなきかなり凝った音楽ばかり余は殆ど知らぬ演じ手、楽曲ばかり。前衛だのハウス系だののジャンルすら余にはさっぱりわからず。藪用終って畏友M君と遭いM君の遅い晩飯に付き合い尖沙咀のAustin Avenue(Austin Rdに非ず)15番地に位置する、以前からかなり気になっていた「北京餃子」なる名前はどこにでもある「北方風味」ながら予感あたり北京のそのままの餃子や麺をば供される。主人は何処から誰が見ても北京人以外の何者でもなき華北顔に立派な背格好。この主人の話すかなりR化した純な北京官話も心地よし。M君の車で送られ帰宅。
▼昨日宮中にて歌会始あり。畏れ多き陛下の御製は
人々の幸願ひつつ国の内めぐりきたりて十五年経つ
と。この陛下の御製は歌の技としての巧みさでは習作の如し、だが十五年のご在位を謳うにも「人々の幸願うこと=天皇の在位意義」と詠み陛下らしさ。皇后陛下の御歌は
幸くませ真幸くませと人びとの声わたりゆく御幸の町に
皇后陛下からしても夫である天皇陛下は、記者団をば前にした皇后両陛下でのお言葉でも「今ほど陛下がおっしゃられましたように」と言われるように、最上人なる陛下には皇后=妻であっても敬語といふ不思議な世界。この歌も「訪れた先々で人々が天皇陛下の健康と幸せを願っている様」を、この皇后といふ一歩も二歩も退いてしまった独特の距離感で詠むところに、この「妻から見た夫への祝福」といふ面白みあり。