富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

八月十二日(火)晴のち雨。ホテル退出し荷物発送など依頼、昨日購った皮靴を昨晩さっそく酒場にて踏まれて傷にはならぬだろうが気になる跡残り新宿駅西口で靴磨き捜すがかつて路上にずらりと並んだ靴磨き屋も小田急前にて捜して漸く一人見つかり傷隠しのインキ塗って靴磨き。丸の内線で銀座。歌舞伎座に手荷物預け大野屋にて手拭い数本、和光にて懐中時計用の腰紐は黒に染めた絹にて和光特製を購う。日比谷より三田線にて芝公園。外務省仮庁舎。厳戒警備にて構内に、そして本館に入るのにも身分証明書の提示求められかりに保険証見ても本人のものかどうか証拠もなく顔写真入りの例えば免許証見せたところで本人確認できても入館記録に綴るでもなく不審者かどうかの確認はできぬだろうに。香港の永久居民用のIDカード見せるが一瞬怪訝に思ったようでも外務省勤務のM氏と近くにてインド料理。大門より浅草線で新橋。銀座歩いて歌舞伎座に戻り文明堂で母とZ嬢と待合せ、午後の部で勘九郎丈の牡丹燈篭。東の桟敷席。中村屋圓朝演じるが上手い役者だが口跡だけは多少明瞭感に欠けるところもあり。当代で圓朝演じさせてニンがあり口跡のよさでは仁左衛門だろうか。けして本筋の台詞もなければもともと上方の役者でもできぬ役ではなし。橋之助福助の兄弟と三津五郎という中堅のいい役者揃い熱演。八十助といへば踊り上手で勘九郎橋之助対手にいい踊りをいくつも見たが、伴蔵役の三津五郎はかなり恰幅ありこれがあの八十助か、と見紛うほど。ただし最後の本水使った雨の場面などやはり身体の動きは若い頃の八十助らしさ。橋之助はさすがハッシーの芝居上手で源次郎役はニンあり。女房のお国役の扇雀は台詞が早くなるとどうもテレビドラマの如き現代の会話に聞こえる。伴蔵の妻役の福助は久しぶりにみてやはり芝翫の流れの古風な女形と納得。最後、圓朝勘九郎)もう一度現れて話を締めるかと思ったがあっさりと終わってしまい客席から「これで終わり?」という声もあり。日暮れて実家に戻るが路線で列車故障だかあり1時間ほど遅れ。気温ぐっと下がり21度とか。3月に香港に参られた中学時代の恩師の家に招かれ夜遅く駅からK先生宅に直行。近くの川にて採れた鮎の塩焼きなど庭で炭焼きでいただく。酒はさつま焼酎の明治の正中。琉球泡盛・忠孝の古酒いただく。二年ぶりにて実家。