富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2003-07-10

七月十日(木)晴。今朝六時半頃に九龍半島の付け根をTsuen Wanより屯門へと抜ける屯門公路の高速道路から貨物車の暴走に絡まれた九龍巴士の二階建大型バスが35mの崖を転落(写真)、死者廿数名、重軽傷者同じく廿数名の惨事。海岸線走る青山道の旧道から仰ぎ見るこの高速道、実は路肩わずか5mほどで急崖に僅か1m余のガードレール備えただけにて惨事あらば大型バスでなくとも崖下に落ちるは必至の危険な構造。そこを大型車もキョービ性能良く時速100kmにて暴走。バスとて80kmの高性能で車高4.4mがこの曲線多き道を爆走。惨事起こらぬほうが不思議。大型バスの必要以上の高性能は大気汚染の厳重なる要因でもあり、何故にここまで大型かされねばならぬのか疑問。大型バスも貨物車もこの高速での走行はもはや一運転手制御可能なる機能に非ず、高速道の安全対策も必須だが市街地とて暴走するバスに毎朝大量の排気ガス浴びせられ困惑も甚だしく大幅な速度規制は急務。
▼昨日の立法会議堂を取り囲みし市民集会に対して23條立法支持する議員らがバスにて退出を余儀なくされた折に親北京の中華総会選出の立法会議員黄宣弘がバスの車窓より嘲笑の如き表情にて中指立てて Fuck! を示し(写真)それをテレビカメラが写し放映され市民の大きな反感買い本日その粗悪なる行為を本人市民に対して陳謝表明するも表情からして誠意なく陳謝後の議会にてもダラシナイ居眠り続ける。このような野蛮なる輩が立法議員にて23條立法支持。
▼昨晩のNHKニュース10など眺めておれあば、米国の襲撃受けたイラクにて米国による制壓の後バクダッドなど治安悪化甚だし。攻撃中は進駐後の治安維持、改革など1945年の日本を例に平和裡なる東京モデルを踏襲などと嘯いていたが現実はさに非ず。この誤謬は、メソポタミアの貴重なる遺産が博物館から、そして軍部より武器弾薬の類が略奪されし光景見て、それと対照的に半世紀以上前の日本の皇民が帝国陸軍の武器弾薬も奈良正倉院の財物も掠わず桂離宮に勝手に住み着く輩もなきことを以て大和民族民度高く誠実にて、バクダッドの市民が野蛮ゆえの結果とは言へまひ。日本にては共和制なり共産主義標榜する市民革命起きずとも寧ろ米国進駐あっても国体の象徴としての天皇陛下を頂き賜り続けることにて実質的には戦前と何等変わることなき現実ながら敗戦にてさも禊ぎ済ませ「新しい時代がやってきた」と晴々れと戦後の復興期待せしわが国と、言いがかりにて国土襲撃され悪しき点もあれどイラク統治の中枢であるフセイン政権打倒され謂わば国体失って無政府状態に放たれたイラク市民との状況の差異。かりに米国が東京モデルを用いるならばフセインイラク国民の象徴としての実質的権力なき神格に仰ぎ、その下にて立憲君主制にでも移行することこそ東京モデルの踏襲ではなかっただろうか。無理だが。米国が侵略すれば結果がこうなることは明白。大量破壊兵器も核資源も見つからぬこの世紀的愚挙は米英は元よりそれ支持せし日本など奴隷国家の責任は如何に。新聞に載ったバクダッドの僅か9歳の浮浪児が喫煙し傍らの子が興奮剤を吸入する光景(写真)(豊かさと平和(そうな)世界に在るこちら側から見れば画像としてはイタリアのneorealisomo映画の如き一光景なれど)は、戦後のあの上野の山の浮浪児を彷彿せざるを得ず。ただ半世紀前の上野とバクダッドの大きな違いは当時は少なくともあの貧困の将来には20世紀の経済成長と豊かさが待ち受けていたのに対しキョービの高度に発展し尽くした資本主義においてはすでに豊かさなるものは陣取り済み後進に甘んじたる地には搾取されし貧困しか将来になきことなり。
▼米国といへば一連の対米テロへの国防強化のため米国への入境者に対しての管理強化(こちら)。「機械読み取り式でない旅券」所持者には米国短期滞在目的に当たり従来どおり査証免除の扱いを授けるものの旧来の旅券保持者の場合はビザ取得を科し、これまで実質的には形式的であった旅券確認を集中管理。そればかりか2004年1月1日以降は米国査証保持者の入境にて指紋及び顔写真を採取。更に2004年10月26日以降からは「電子化された生体情報(顔画像)が搭載されていない旅券を所持している外国人の入国」に当たっては機械読取り式旅券であっても査証取得が必要。わが国は旅券こそ機械読取り式であるもののデジタル化された生体情報搭載した旅券の発給は極めて難しく現行にては「米国政府が同方針を予定どおり運用するか否かは明らかではありませんが(準備に一層の時間を要する可能性等もあり)米国政府の今後の対応如何では今回新たに「機械読み取り式旅券」に切り替えた方についても2004年10月26日以降は査証を求められることもありますので予めご了解願います」と。それにしてもこの外務省の物言い、米国の出入境管理について「この点宜しくご理解頂きますようお願い申し上げます」だの「上述の米国政府の新入国管理制度の適用対象となりますのでご注意願います」だの「予めご了解願います」だのと米国の措置を自国の国民に告げるのに何たる丁重ぶり。半世紀に渡り築きたる親米関係が真事ならば正々堂々と「日本はこの御沙汰より除かれ給われし事御願奉上候」と米国に求めるべきか。いずれにせよ、これが米国の措置だけなら米国嫌いの余も桑港、シアトル、ボストン、紐育など知己もおり愛しき街ながら「米国には今後一切足を踏み入れず」にて済むのだが更に深刻なる問題は外務省「我が国も遠くない将来、生体情報を搭載した新たな旅券を発給することを検討中であり、その場合には、新たに旅券の切替が進められることが考えられます」と。世界の自由主義の冠たるはずの米国の措置も尋常ではなきものながら、わが国も生体情報が国家により管理されるといふことは、憲法に謳う基本的人権への抵触ある大きな問題、外務省が米国情報の末尾にて「検討中」とさりげなく触れて、で済む問題ではない。で、外務省サイトにてこの生体情報入り旅劵の検討について捜すが何も情報なく電話にて旅劵課に確かめると、これについては検討といっても先般海老安サミットにても今後この生体情報入り旅劵の普及が話題になったが未だ将来的にそういう方向になるということで具体案はなく世界各国との基準検討がまだ机上でされている程度、住基台帳だの個人情報についての問題もあり、それ故この件について外務省としての具体的見解を述べるには時期尚早、と。説明は理解できるが(少なくとも境域基本法改正を提唱し準憲法に値する教育基本法の原文すら搭載せぬ文部科学省に比べ真っ当)それならばこそ、米国の査証措置の末尾でのみこうもさりげなく述べることは問題あり、と意見呈す。いずれにせよ結局のところ米国の管理強化措置を事由に「ほら、不便でしょ、米国行くのが」と他国がこの規制強化に追従し世界標準が生まれるのであろう。唯一の希望は国境すら取り払おうと挑む欧州連合にて、EUがこの規制にどう対応するか。嗚呼、我々の住まう21世紀のこの世は日々恐ろしき様に相成る。