富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

六月二日(月)快晴。晩に出先にて日経の付属誌に月一連載の原稿呻吟。出先にて原稿書き送れてしまふのだから便利。これまでも出来ないことではなきところ電脳ぢたいが携えるには重く煩わしく辞書くらいなら電脳なりに装備していても資料検索ができず(実は原稿書いているより資料蒐集に大きな時間を割いていた)どうしても書斎なり使いこんだ図書館なりでの執筆を要したがインターネットで資料検索が格段に容易となった結果。もともと余は原稿なるもの頭のなかで想像と構想続いていれば実際に打字するのは早いのだが1,600字を1時間余でできるのは字や言葉を査すのに時間浪費せぬため。
自民党麻生太郎君、東京大学の学園祭で朝鮮での創氏改名についてそれが日本の強要ではなく朝鮮人が望んだことなどと言及。驚くほどのことではなくこういった歴史観自民党にとって常識であり寧ろ自民党の代議士で日本の朝鮮半島支配に心から深謝し支那侵略だの虐殺を認めるほうが稀。基本的に日本は東アジア諸国の発展に寄与してきた、のである、彼らにとって。ただ理不尽なことがいくつかあり、まず、この東大での発言、麻生君曰く「学生にわかりやすく説明しようとして言葉が足りなくなり、真意が伝わらなかった」と(こちら)。キョービの東大の学生、麻生君にここまで易しく説いてもらわぬと近代史理解できぬほどバカか。そこまでひどくはない。それにしても、麻生君、自民党に多い地方の田舎漢代議士とは異なり、太郎君は麻生財閥の創業者であり衆議院議員の太吉の孫であるから麻生三世でいいのだろうが、母側の祖父が吉田茂、祖母は牧野伸顕の娘、牧野は大久保利通の次男であるから大久保から数えたら五世、太郎君の妹は三笠宮寛仁殿下の妻であり、太郎君の妻は鈴木善幸の娘(ここだけ多少格が落ちる)、とまさに自民党サラブレッド。それにしてもそういう人がなぜこんな陳腐な発言を?と思ってはならぬ。まず筑豊の麻生家であるから朝鮮とそれほど疎遠感はないはず。むしろ一衣帯水。しかも宮家だの裏千家だのもともと朝鮮から渡ってきたといふ古い家々と姻戚関係にあり、朝鮮に憎悪などないかも。で、この発言、よく読むと、本人にしてみたらこれに「朝鮮」差別はないのでは? 朝鮮の王家、家柄のいい財閥とならなんの隔たりも偏見もなくご近づつきあいできる。この人は麻生家の感覚として、日本による朝鮮支配という現実があるから(明治の元勳とこうも繋がっていては明治の国策を肯定して当然、それの是非は問わず)日本名のほうが便利だし差別されないのであり、民衆への識字も支配階級で文化と学のある者が施すのが当然といふ「善意」にすぎず。筑豊の炭鉱で朝鮮からの強制労働があったことも、そこに産業があり労働力が必要でその供給地が朝鮮半島であった、という認識も可能となるかも。かういふ人だから考え方が間違っているといってもはじまらず。寧ろ問題は自民党の未来の首相候補が東大での講演でこんな陳腐な話題しか呈せぬこととそんなのを拝聴してしまった最高学府の悲劇である。朝鮮側にしてみたら民族感情逆撫でされたろうが「もともと東ひむがしの蛮族に文化どころか文明供しその東国支配したのも我らが祖先」と嗤ってしまへばよろしいこと。