富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2003-05-23

五月二十三日(金)快晴。遅晩にイスラエル映画『Yellow Asphalt』看るつもりが藪用あり断念。イスラエルイラク攻撃など不穏な時期にもかかわらず(というかこの時期だからこそ、なのだろうが)政府観光局による観光客誘致の宣伝などかなり盛んで(バスのなかで放映されている映像にもかなりの頻度)、この5月下旬もイスラエル映画祭と銘打って6本だかの映画上映があり。この『Yellow Asphalt』はパレスチナ扱っており、いったいどういった捉え方かは未知数ながらだからこそ看ようと思っていたため看れず残念。某氏と尖沙咀東の五味鳥。相変らず開店から半時間ほどで満員、予約の一卓あり何組も来た客が入れぬ盛況。本当にお見事としかいえず。遅く尖沙咀の酒場二軒梯子。尖沙咀のCarnavon Rdに映画イージーライダーの如き派手に改造したバイク集団(写真)。暴力的などでもなく改造バイク乗るだけだが信号青になっても進まず後続の仲間来るの待つなど威勢はる。或る浴池にて垢擦り。新参の垢擦りの師傳、最近は垢擦りなどとは名目だけのお座なりの「身体洗い」が多いなか、この人かなり技巧に優れ、みるみるかなりの垢が擦られ敬服。尋けば北京の人、半年前に香港へ、と。話せば大阪に4年住んだこともあり、89年よりといふので六四に触れていいものかと余が思案していたら自ら89年の春に日本へのビザ申請しており発給されたのが6月5日だと。それで七月に大阪へ。天安門事件の最中でもこうしたビザ発給など続いていたことも認識しておくべき事実。余が北京を誉めると「香港など広州周辺の田舎者が出て来たにすぎない」とホンネも。それ故に文化も流儀も遜色る、といふわけ。
▼香港の地下鉄にてホームの密封化進むが既存の路線にも敷設。それも通常の営業続け終電のあと工事続けるが現場は、といえば封鎖も一切なく工事の済んだ部分も済まぬ部分も通常通りに利用できる(写真は手前が工事前、奧が工事済み)。それに比べ尖沙咀のKCR線地下延長工事での醜悪なる露天掘り(写真)などどうにかならぬものだろうか。
自民党の山崎幹事長、大きなマスクに顔隠して国会に。下半身にも絡む醜聞続く故かと思えば北京訪問して二日間公務自粛後だそうで、北京に同行した保守新党、公明の幹事長もマスクして、お三方で「公務復帰宣言」などまで公開。二日での公務再開に非難もあり。いずれにせよ大騒ぎすぎ。
▼そうそう、突然フラッシュバックのように思い出したが、小津の『突貫小僧』でのこと。映画始まり字幕でいきなり「今日はひとさらいの出そうなひより」とあり。ヒトサライの出そうな日和りというのはいったいどういう日なのだろう。わからぬ、がなんとなくわかりそうな。いや、やはりわからぬ。
▼エベレスト山(チョモランマ)にヒラリー卿初登頂して半世紀。今月のNational Geeographic誌の特集もこの世界最高峰だったが、それに三浦雄一郎氏70歳で登頂し最高齢記録を更新とか。今日の日経「春秋」も書いていたがヒラリー卿は登頂に成功し頂きに掲げたのは英国、インド、ネパールの旗とともに国連旗。そういう時代であったのだ。いまはそんな国連への期待であるとか誰も掲げぬ悲しき時代。エベレストで旗といえば数日前に中国隊、当然のことながら「中国の」チベットより登頂し山頂極める映像を生中継に初めて成功。その映像世界に流れたが問題は登山隊の掲げた旗が山頂の厳しい状況とはいへ裏返し(写真)。これはマズい。裏返しでもそれがバレぬ日の丸はよかったね。国旗掲揚に内心反対する人が良心の呵責に耐えかね実は裏返しに掲げていたりとか。
▼武蔵野のD君によると、D君の愛読紙産経新聞(ところで靖国参拝奨励で参詣新聞という題は如何か)が台湾人医師のSARS感染について朝日新聞がこの医師を「加害者呼ばわり」したこと、また医師の「買春の有無」を尋ねたことを非難とか(5月20日付)。産経は本来「わが国益をおびやかす外国勢力に毅然とした態度をとるのは愛国的行為」だったはずで売買春もまた「正当な商行為」ではなかったか? だが「これが北京の医師だったら、朝日は同じような態度をとるだろうか?」と自分で勝手に仮定の問題を設定して批判(笑)。本来のその「外国勢力に毅然とした態度をとる」が社是でであればわが国国民の安全と健康を防衛するために毅然とした追及を行った朝日の同胞記者を批判して外国勢力に阿ることこそ産経的にはもっとも忌まわしいはずの「自虐的」態度では?とD君。なぜここまで朝日が憎いのか?と築地H君と鼎談となったが、H君曰く「そうやって憎んでいることが「影響力」の源」であろう、と。ただ産経がそこまで攻撃する「左翼としての」朝日もリトルネベツネ化した社長の許で慘澹たる現状。H君興味深い例えを挙げ、有胎盤哺乳類のいない豪州では有袋類が適応放散して相応のニッチ(生態的地位)獲得、有袋類が形態上も収斂進化して系統上の類縁関係は全く縁遠いのに有胎盤哺乳類と相近した外観を発達させる(フクロオオカミ=オオカミとか)。だが競争力は弱い所詮二線級の「モドキ生物」であり、ホンモノの有胎盤哺乳類が移入されるとあっというまに駆逐されてしまうのが自然の摂理、と。日本の本来の革新思想不毛の風土では総評=社会党朝日新聞といった疑似サヨクでもじゅうぶんニッチであったわけだがグローバリゼーションによる(国家を越境した)本物の資本主義社会の移入によってあっという間に駆逐されてしまった、とH君。御意。だが、しこの場合、駆逐されるのは憐れな草食獣だけでなく有袋類全般なわけです。「日本式経営」だの「日本らしさ」に拘りそれに依拠する「抵抗勢力」たる保守本流派もまた風前の燈びか。残るのは新保守主義ファシストのみ、それがグローバルスタンダードか、とH君。D君も余も暗澹たる未来にただため息をつくのみにて鼎談終わる。
新保守主義といえば小泉三世訪米。昨日の空港での写真見れば政府専用機のタラップにて手を振る首相の背後に安部三世。安部君その自信漲る表情は昨年の日朝首脳会談に訪朝する小泉三世のやはり背後に企っていた「まだ安部三世に足元掬われる以前の」外務省アジア大洋州局長田中均君の表情彷彿させるもの。今回は小泉三世こそブッシュ牧場にて歓待されるものの実質的には安部外交に小泉君が随行しているようなもの。牧場にてブッシュ君の牛馬に小泉君飼葉でも施す間に安部三世は着々と新保守主義の基盤固め。
▼それにしても小泉三世といえば「自衛隊は実質的に軍隊」発言。小泉君がそう思っていないほうが不思議であるが、一国の首相たる者、憲法に基づく国政の代表者であり(立憲制)、一介の保守政治家に非ず、それが軽軽しくも憲法の精神に反するこの発言、しかも「30年ぐらい前に、ああいう発言をしたら野党が怒って国会はストップしてたでしょうね」とも軽口叩く。この法治の原理すら理解できぬものに国政委ねるこの国はいったいどうなっているのか全く理解できず。