富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

三月二日(日)片道HK$100もかけてAirport Expressにて空港。九時からAdidasのKing of the Roadの10kmレースに参加。五回目?、香港で始めて本格的に時間順位測定のためのChampion Chip導入、先週のGreenpowerの50kmから全然運動しておらず走り出してどうなることかと思ったが、どうやら余の身体は最初1kmで目が覚めて3kmで酒が抜け胃がこなされ1kmでウォーミングアップされるようで最初5kmは6km/分くらいだったものが5kmから楽になり5km/分には上がったようで結果的に56分で終了。香港マラソン(ハーフ)、50kmに今日と3週レース続き、これで今季のメインレースはほぼ終了……と思ったら今月末にマカオのコロアネ(ハーフ)あり。なかなかナイスなTシャツもらって空港バスで帰宅。わずか10km、1時間弱走るために往復でHK$140。往復路たまった新聞乱読。「一門や東西の壁を超えて落語会に革命を」と気鋭の話家「六人の会」結成。小朝と釣瓶にこぶ平志の輔、昇太と花緑。曾ての志ん朝、談志、三平と円楽が若手で活躍していた頃はこんな会など結成する必要もなかったし、それどころか高座で己のの芸風磨けば相乗的な勢いが出ていた時代、それに比べると悲しき現実。それにしてもこぶ平の顔がいちだんとよくなってきた。三平逝去の頃はこれで林家の看板背負えるのかと心配だったし、書く文章、殊に音楽評は素晴らしいが噺はイマイチだったがいい顔だ。ところで小朝、ますます見た目が美輪明宏先生に似てきてないか?(笑)。かなり旧聞に属すが21日の朝日新聞「首相の姿がかすんでいく」なる社説の出だし読み空港リムジンバスの座席から転げ落ちそうになる。社説曰く「『自民党をぶっ壊す』。2年前、そういって国民の喝采を浴びた小泉首相の姿はしょせん幻だったのではなかろうか」って(笑)、そんなこと誰でも幻だったととっくに気づいている。最初から幻想だったのだ。小泉三世など自民党という魑魅魍魎跋扈する奇界にあって変人と揶揄され疏外されていたものが、もう誰も自民に首相のコマなくなった時、自立した思考力乏しく国際情勢のなかでの日本の置かれた深刻な立場理解できぬまま安易に他力本願で「小泉さんなら何か変えてくれるのでは?」などという澹い、本当に呆れた8割の国民の支持を受けて、真紀子モンスーン吹いて首相になっただけ。自民党をぶっ壊すという発言も党内で「また小泉が……」と嘲笑されていたばかりか、実際には小泉三世のこの在任中、自民党という組織はますます強固なものに変貌を遂げているのだ。自民党を壊すどころか自民中興の祖。結局、日本という国家にとっていちばん大改革を要したその時期にこの変人を首相に当てたことで改革どころか本来もうこれではやってゆくことのできない自民党官僚財界政治を強固にしてしまった。このツケが、結局は「小泉さんなら改革をやって『くれる』んじゃないか」と期待した8割の国民にツケとなってまわってくる……残り2割の国民にも同じだが。政治もひどいがこんな社説書く朝日も大丈夫だろうか。完全にズレてしまっている。晩に銅鑼湾に出て富臨飯店にて阿二鮑魚にしようか味千拉麺にしようか迷って(嘘)にんにく屋経営のK氏新しく開いた和三郎なる香港初の手打ち蕎麦屋、ざる蕎麦と鴨南蛮。香港に天麩羅屋とんかつ屋鮨屋とあって蕎麦屋だけないのが惜しかったがついに登場、決してそれほど期待せずに訪れたがなかなかどうして外地でこれだけしっかりした蕎麦供するは大したもの。欲をいえば蕎麦細すぎてコシに欠けるか。Culture CentreにてCesaria Evoraのコンサート。Cape Verde、といっても余も知らなかったがアフリカ大陸の西端から更に600km西の太平洋上の諸島、ポルトガルの植民地で今は共和国として独立しているが、Cesaria Evoraが歌うのはCriouloと呼ばれるポルトガル語に西アフリカの言語混じった土地の言葉。Cabo Verdeは15世紀末にポルトガル人によって「発見」されたときには無人島であったらしく、そこへ西アフリカから多くの奴隷が送り込まれポルトガル本国からも移民が入植、19世紀末に奴隷貿易が廃止されるまでアフリカとアメリカの両大陸をつなぐ奴隷貿易の中継地、でおそらくポルトガルから入るラテン音楽にアフリカの多くの音楽もここを通過し或いは種を落としてキューバプエルト・リコなどに流れていったのだろう……と引用はこちらから。その無国籍な音楽が80年代末にフランスで火がついてプレイクする。Cesaria Evoraはステージを見てもけして物凄い歌い手ではない。正直言って歌唱力もこのくらいの歌い手はラテンから南の音楽に少なからずいるはず、音程だってちょっと#がかって不安定、だがその普通さがCesaria Evoraのよさか、西欧により「発見」され世界音楽に組み込まれた感あるが音楽としては「歓びだの悲しみだの通り越したところでリズムにフレーズが乗っていう、というその感じ」が実に心地よい。ただ音楽会の会場で姿勢正して聴く音楽ではないはず。自分で音に合せて身体揺らし酒でも飲みながら場末の酒場の一角で酔っているのが気持ちいい音楽なのだ。今年の香港芸術祭はこれで終わり、次は香港映画祭
自民党といえば、この党のもうどうしようもないオヤジ体質がこれ。オヤジだから老齢化して消え去ってくれればいいのだが不幸なことに長寿大国、このオヤジ体質がますます強くなっている。大阪府議会28日の一般質問で大阪市中央区より選出の自民党府議・八木博、府立高校卒業式にチマチョゴリやチャイナドレス着て参加する生徒いることを「いぜんはチョゴリ、チマ、アオザイ、それからチャイナドレスで、どっかキャバレーに来たんちゃうかな、そんなような卒業式もございました」と発言。「チャイナドレスのスリットが深かったことを『キャバレーのようだ』と言うつもりだった。民族衣装は文化の一つと尊敬している。表現の仕方がまずかった」と弁明。
この日の府議会の中継見ると、八木は議長の指名され失言でも多くかなり有名な議員センセイなのか笑い声や私語ざわめくなか壇に上がりあがり質問を前に突然「本日、私、府立高校の卒業式に行ってまりまして」と語り始め(これは議会の一般質問ではかなり異例)、この学校は大阪府夕陽丘高校であることがあとで言明されるが、「卒業式は指導に従わずいぜんはかなり乱れていたものが今日は入り口に校旗と国旗日の丸が掲げられ檀上にも校旗と国旗日の丸掲げられ、この学校は私服なのだが卒業式は振り袖の生徒がいるなど華やいだ雰囲気で……」と続け、そこで「いぜんはチョゴリ……」と問題発言。議場からは笑い声も聞こえ(唖)議長の向かって左に坐る男は笑い顔。府議会の公開している画像はこの発言の最後がちょっと切れている感じあり(作為的か?)。いずれにせよ八木は「ではここからが一般質問ですので」と質問の台本を見せ議場からは苦笑、いつも質問等で脱線するのが八木の十八番か。つまり大阪府議自民のトリックスター的存在かといえば実はこの八木博、平成5年から府議会議長も勤めたことあり、もともとは歯科医師中央区谷町の空堀商店街にて八木歯科医院(中央区谷町7-2-30 電話(06)6761-0640 Fax(06)6768-8267)を開業。府の歯科医師会をバックに府議をしている御仁。それにしても韓国朝鮮系の市民多い大阪(大阪府サイトもハングル版あり)の議員でチョゴリ=韓国キャバレーといふこの認識、しかも高校の卒業式からそれを連想、こんなのが自民党選出府議……八木博本人よりもこれを選んだ自民党中央区民、府歯科医師会も愚行を恥じ入るべき。
▼香港から日本への渡航者に課せられている査証取得が年内にも免除になるような話。低迷する経済の刺激として観光業の促進があるのだろうし日本訪れる旅行者年間500万人の1割が香港。査証免除は大きいが在香港の総領事館は50万人からHK$71のビザ手数料をいただいていると思えば実に年間HK$35.5百万(5億6800万円)也?、この収入減は大きいはず。一人の旅行者がかりに20万円日本に落としてくれるとしたらわずか2840名分でビザ免除になれば多少増える旅行者者からいえば確かにビザ免除か。それにしても過去から日本からの来港者は当然査証免除で不公平、かなり望まれていた査証免除も所詮、日本の台所事情で決まるという独善か。
▼日本といえば『信報』に香港大(教育)の程介明(元立法会議員で民間への機密漏洩で有罪となった程介南の兄、こんなことで何故議員辞職で有罪?と日本の議員には理解できぬだろうが)、日本の大学の国際化について述べている。程教授、日本のT大学(おそらく筑波大)に招かれ大学主催の国際化の諮問部会に参画。程教授曰く日本の教育が国際化を提唱したのは1987年の教育改革で学校の個別化と並んで改革の二大重点とされて以来のことだが、当時、日本の学生の留学促進、留学生受入れ、英語能力向上、年度9月開始、第二外語など提唱されたが10数年経ってみてそれは「只聞樓梯響」ただ階段に響いているだけ=何もなされていない。国際化を提唱しつつ、日本の大学に行ってみればわかることだが留学生非常に少なく、外国籍教員は殊の外少数、使われるのは日本語ばかり。いくら国際化を提唱してもこの環境では国際化など難しいのは明か。今回、程教授を招いたのはT大学のコロンビア大学のPhDをもつ教員。ユネスコのパリ本部で働いた経験がありユネスコの在北京教育代表を勤めた後にコロンビア大に復学し国際関係論学び博士論文のテーマが「中国農村の教育発展」で、その指導教官に程教授が当った、と。程教授が奇怪に思うのは、これほど優秀で経験豊かな教員がT大学に得た職が「情報テクノロジーと国際関係」なるもの。程教授はこれがその教員に的確かどうか疑うが、能力ある研究者ゆえ適任なのかとも思ったが大学がその教員が勤務始めて最初に与えた課題は「何をもって国際化と呼ぶのか」を明確にする、ということ(笑)。この大学は国際関係企画室を開設、と。この感覚が日本の大学の焦りを象徴していまいか、と程教授。立命館太平洋大学は全ての授業を英語で行い早稲田は英語用いる国際研究所を開設したが、このT大学も全面国際化を狙っている。この大学の留学生の数は800名で日本でも屈指なのだが1,100名いる常勤教員に外国籍は一人もおらず。とにかく英語推進をすること、それに尽きる、と程教授。英語なくして国際化はできるはずなし。つまり、英語浸透が日本語の衰退につながる、なんて感覚なのが「我が国」なわけだから英語推進=国際化なんて無理、ということ。世界の孤児のままだね。
朝日新聞といえば読売を好んだ祖父逝去のあと母が朝日に変えて以来もう30数年間朝日を愛読、大学の頃に新聞購読料延滞し配達止められた時もコンビニで買い求めていた朝日だったが、月に1万円だかかけて国際衛星版購読しており、こうして日剩に悪口書く点では余に貢献してくれているが(笑)、日に300円以上かかっていると思うと余り読まず(読めず?)無駄、ぢゃ読売か、ってナヴェサダ逝去するまでは読売は購読せず、ともう20年ほど決意しており、産経など言語道断、ちょっと好きな毎日、それに祖母愛読していた都新聞(東京新聞)は香港は航空便輸送配達で朝刊朝に届かず、で結局、日経に変えようかと思案中。
▼築地H君より演劇人による反戦集会、結局は司会は渡辺えり子だけ。やはり中村屋は「交渉」失敗か。だろうな。中村屋のお気軽さだったのか松竹という壁か……。
▼27日に築地H君教えてくれた勁草書房から『それでも私は親米を貫く』の著者・阿川尚之センセイ(駐米公使)、23日の朝日にインタビュー出ていたのを読む。ジョージタウン大、同代Law School卒、米国憲法専攻で慶應総合政策学部教授経て外務省民間人登用により駐米公使。一読しやはり呆れる。リンカーン演説を用いた9-11の1周年の式典でニューヨーク州知事の演説に感銘しているが、リンカーンの時代と今の米国では国威なるものの作為性が全く異なっているのだ。純粋な自由と民主主義の理想実現とは思えまいに。阿川センセイの「テロの前までは米国人は自分たちの国には色々問題があると考えていた。が、ユナイテッド航空93便では普通の市民が "Let's roll" と抵抗したために飛行機が墜落、テロリストの攻撃を阻んだ」ってのも凄い、93便の乗客の抵抗で飛行機が目的に撃墜しなかったのは事実だが、ありゃ「テロの攻撃を阻んだ」んじゃなくて、もうあの段階でテロに襲撃されていたのだ、この修辞、かなりあやしい。また、米国の愛国心高揚について好意的に受け止め「日本には日の丸を拒否し、君が代を歌わないことが染みついた世代がいる。米国は国旗に忠誠を誓うことで統一を保っている」と言及、これも凄い発想、米国憲法専門でも米国の理念が全く理解できておらず。米国にも国旗を、というより現状でのブッシュ政権に見られる国家主義の象徴としての国旗なら拒否する者はいくらでもいる、ただ米国の建国以来の自由と民主主義の象徴と理念として米国という国家への愛国がある、といふこと、それが米国。それをそのConstitutionないままただ漠然とした「日本」というものに対して、その国家主義の象徴たらんとする日の丸と君が代を否定する者がいるのは当然、それへの盲目的な追従に疑問をもち日の丸拒否、君が代歌わぬ市民を否定しようというこの幼稚な発想……これが米国公使、いやこんなレベルの親米派だから外務省が米国公使に登用できた、と考えれば理解可。「米国は最後には力が平和を守ると考えているが、何も悩まずに力に頼っているのではない」としてマジに「ブッシュ政権は極めてまじめな政権」って本当に言及してる。そりゃそうだ、確かに「何も悩まずに力に頼っているのではない」のである、本当は「何も考えずに力に頼っている」のだから(笑)。仏独を中心にした厭戦感について日本がそれを気にするのは「日本には欧州コンプレックスがある」からだそうで(驚……米国コンプレックスだろう、実際にはこのセンセイにょうに)「日本にとって重要なのは米国だ」と……ホントにこれは只者ぢゃないぞ、正真正銘の××だ。これが米国公使、それを米国公使にする外務省、すごいなぁ日本政府。ちなみにイラク問題の安保討論会(2月20-21日)62カ国・機構が発言して仏独などの主張する査察継続支持が約50と大半占めるなか米英支持をしたのは僅かに日本、豪州、アルバニアウズベクスアン、マケドニアラトビアなどのみ。日本が国際政治で責任ある立場担うというのはこういうこと?。ただの米国の腰巾着。豪州や他国も10カ国とはいへ支持している、と見えるが、見ての通り、日本を除けばイラク周辺各国は真にイラクを脅威と思うかイラク石油が打撃受ければ国益上ルわけで、豪州だけ???だが実は安全保障上最も対イラク攻撃の余波受けぬ資源大国、中東が壊滅して最も儲かる国だろう。つまりみんなイラク攻撃の国益あり、世界で唯一のバカ国家がイラク産石油の安定供給という恩恵受けながらそれの打撃を支持する日本。米国のためなら国益失うも致し方なし、か。なぜそんな政府与党を財界、右翼が支持するのか理解できず。