富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十一月十八日(月)曇天。昨日に引続き尖沙咀東に参る。昼にこの食文化不毛地帯にて何を食すかと思案 しふと思い出したるは幸福中心地下のらーめん一平安(ヤッピンオン)。幸福中心地下といへば焼鳥の五味鳥 こそたまに訪れるが一平安は十二年ほど前に尖沙咀に屡々遊んだ折、当時、日本食など高値の花、此処でらーめん食すこと多し。五年ほど前に富柏村の文章にて この店を過去形にて紹介し失礼したことあったが十年ぶりに味噌らーめん食してみれば今でこそ日式らーめん多いなか開業1984年といふ老舗の格が麺の腰と 茹で具合といいスープの熱さといいご立派、敬服。尖沙咀東、日本人と茶筒もった大陸人の観光客多く、観光客相手の時化た小売店あるだけで何ら興趣なき場に て路頭に迷う様まことに哀れなり。晩に尖沙咀東より海底隧道潜ろうとするとひどい渋滞にて遠回りでも東隧道を経由し正解。事故か何かと思えば北京中央より 引退目近の朱溶基首相の来港にて(事故か、これも……笑)「国内」の移動でこの厳重なる警戒の様、米国大 統領とてここまでSecret Serviceの警戒つかぬだろうといふ程にて幹線道路を通行止めにて朱鎔基を搭せた車隊疾走する様かつてのソ連の莫斯科での共産党幹部専用車の如く(共 産党幹部だから朱鎔基車隊も当然か……笑)しかし当時の首都莫斯科の幹線道路には共産党幹部車専用車線があったという話もありそれなら庶民の足に迷惑かか らずそっちのほうがよっぽどマシか。「国内での首相の」警備にヘリコプターを飛ばし銃撃手ビルの屋上からテロリスト現われるを狙ふ香港の幼稚な過剰警備は B級映画の見過ぎにて北京にても北京飯店より眺めていたが人民大会堂に出入りする車あってもこれほどの厳重なる道路規制はしておらず。特区行政長官董建華 が通るだけでも返還前の総督の場合に比べかなり厳重警備にて総督が白バイ一台に総督車のベントレーで走っていたのに対して行政長官BMWは白バイ数匹蝿の ように先飛びし道路規制するのもやはり市民の反感多くいつ市民に襲われるかを警戒してのことか(嗤)。香 港警察のVIP警護するSPに一人どう見ても警官の中で武力よりも容姿端麗であるが故に目立つこの職にまわされたSPおりいつも要人のすぐ横、いちばんカ メラ映りする場所はこのSPの担当。それで警察の話題性、イメージアップ狙っているかと思うと幼気。で、朱鎔基何故に来港かといえば明日より国際会計士協 会なる組織の総会で挨拶、と。まぁ朱鎔基が経済改革と経済体制の是正に努めた(が結果はイマイチ……『信報』社説も指摘 していたが政府によって経済体制の改革はできても金融改革は企業の自助力によるもので政府指導の経済政策で引張っている中国では限度あり、と)朱 鎔基としては会計監査など大陸で重要な分野であろうし、この人は本当は共産党幹部なんかしたいのではなくて財界賢人会議などで指導的地位に立ちたい人、こ ういう会議のためなら飛んでも来よう。朱鎔基のニュースなど見ながら湯豆腐。鰹節切らしている大失態、ポン酢にZ嬢日曜に大澳で購ったXO醤(蝦味)混ぜ てみるがなかなかの味覚。湯豆腐終わってうどんをいれてこの蝦味XO醤ポン酢に即興でキムチと韓国海苔入れたら美味。
▼日本「まだ」最安値更新。日本は、少なくても今のこの「反テロ」が利用できるうちはブッシュに任せ経済対 策は停滞を赦し「反テロ」が下火になった頃には共和党穏健派か民主党の経済改革案に乗換えるかといった判断をしてゆく米国のそういった選択もなきまま、企 業は政府の抜本的改革、経済対策が進んでいないことを指摘し政府は民間金融機関の所為にして、もうそれで十何年? NTTだかの社長が自分たちの企業の業 績と関係ないところで株価が激しく上下しており、これは対処できぬ、といふようなコメントしていたが、ここまで総体的な株価上昇が期待できぬ時代にあって はこの不安定な値動きでの利ザヤだけを期待するシテ株がかつての相場以上に動くであろうし、何よりも通信関連株の下落がこの業界への投資者の期待薄を真っ 当に反映したもので、もともとグループ企業の株の持合いにて株維持してきた日本の企業にとって本来の末端の株主たちによって雇われている使命感はなかろう から理解できぬのだろうが、世界に名だたるNTTの経営者がこのお手上げ発言ではどうしようもあるまひ。かつて「英国病」と呼ばれた病あり絶対にもう治癒 しまひと言われていたのがサッチャー政権にて発作的に目覚めたようだったがあれは少なくても80年代の低成長ながら重工業から情報工業への産業構造の変化 が背景にあっての、そういう景気がよくなる前景あっての新保守主義の台頭であり、そういった産業的な前景なき時代の石原待望論は無策どころか自殺行為。し かしその「上質の覚醒剤」の注入しか期待できぬほど何もないのか。
▼新聞で斡旋収賄の斡旋は「あっせん」と平仮名書きしていたがダム見直し問題でダムの「堰堤」だの「浚渫」 工事や漢字書き(但しルビつきだが)。なぜ「えんてい」だの「せきりょう」は良くて斡旋がダメなのか。こ のダム見直し問題、ダム底は土砂で埋まり殊に発電用ダムなど浚渫工事怠ってきたため治水どころか水害だの河川氾濫の原因になっている、と。長野県知事の脱 ダム宣言に異を唱えダム推進で知事不信任案したオトーサンたち、知事再任されたばかりか国のこのダム不要傾向で今何を思うか。
▼『噂の真相』の中森明夫「月刊ナカモリ効果」にて卓越した文章拝読。中森明夫呉智英の、読売のナベツ ネ、日テレの氏家、西武の堤清二など学生時代に左翼だった大企業経営者あり転向左翼が優秀なる財界人を産むと思えば共産主義に存在意義ありといふ理屈を引 用し(呉智英も同じ左翼から封建主義者!への転向組)アイドルも同様、と。浜崎あゆみ華原朋美ELT持田香織などJポップ歌姫たちがB級アイドル だった過去をもち椎名林檎さへホリプロのタレントスカウトキャラバンで決勝落ち組のアイドル志願でありアイドルとは左翼である、と。アイドルは世相を反映 し美空ひばりが高度経済成長の、山口百恵石油ショック以降の低成長期の、松田聖子はバブル景気の、と時代の先触れとして彼女たちが現れ時代が彼女らを模 倣する、という中森明夫理論あり。不良債権問題でみても銀行もアイドルも信用を売る商売で、紙幣が金兌換できぬようにアイドルが処女であり排泄をしないと は誰も今は思わぬように信用は幻想だけど幻想を保証するにも限度あり。広末涼子で見れば、98年までの広末銀行は有料金融機関であり旧来のイメージ先行型 CMアイドルとは異なり正価としての写真集やCDが異性ファンに売れるといふ実体を伴っていたが早稲田入学あたりで狂い始め、これは広末の自己資本比率= 学力を考えればせいぜい亜細亜大学一芸入試ぐらいが順当な融資限度額であり男性問題など債務の焦付きが生じた。ここでもし事務所サイドが正確な査定に基 づく公的資金導入し引当金を積むべき(=交際宣言して女性ファンの共感へシフトするとか)だったのに不良債権(=交際の事実)などないような顔で大手行と の合併=高倉健主演の大作映画出演を試みたり外資系=フランス映画で一発逆転を狙うなどしたが奇行目立ちプッツン女優(=経営破綻)などと呼ばれる頃には ペイオフ解禁後の預金者よろしくファンもスポンサーも逃げてヒロスエ銀行破綻寸前。この分析、ナカモリ先生本人曰く、竹中大臣より説得力あり松下整形塾に 対向しナカモリ政経塾開けるか、と。御意。