富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月二十九日(日)ランニングクラブ有志にて油塘の地下鉄站よりWilson Trailに入り砲台山、五桂山を越えて将軍澳へと走る寶琳路を渡り深朗の窪地抜け清水湾道渡り井欄樹の村の先にてWilson Trailから小径に分入り飛鵝山方面へと向い西貢見渡す絶景に祀られる孫文の母の墓地を参観し飛鵝山の頂目指し東陵を標高差340m20分ほどにて一気に登り頂上。奇しくも視界厚き雲に覆われ絶景を逃すが微かに雲の絶間より霞の向こうに柔らかき光さすDiamond Hillの街並が現われるはさながら空中に未来都市が現われるが如し。象山を越え東山にてWilson Trailに再び合流し大老山から慈雲山の茶屋まで進むところ飛鵝山を発てば噂には聞いていた薮の茂むことすさまじく殊に象山を越えてからは薮のなかにどうにか踏み固められた道なき道を進めば稜線から外れ崖に這い蹲るが如く昨晩の雨と露にて急勾配は滑ること甚だしく真面に冷や汗帽子の鍔より流れ落としながら象山からの勾配下れば薮の向こうに立て看板なる文明を見出して読めば「断崖にて侵入禁止」と(冷汗)。McLehose Trailから下る道では次々と10月下旬の100kmトレイルにむけての練習か毅行者幾人も現われ昨年一昨年の苦行を彷彿しつつ慈雲山の恒益茶屋。秀逸なる鶏のカレーを食し青島麦酒一飲。慈雲山より小巴士にて黄大仙。黄大仙の祠の東南、かつて難民アパートと罵れし公共団地はすでに解体されその姿もなし。周囲には新しき団地そびえ唯一往時の面影を伝えしはミニバスの站側らの大排档のみ。汚らしき店先にて美味そうな麺など茹で供すはかういつた風情なくならぬうちに改めて食しておくべき。西湾河に住まわれし趣味人Y氏とかつては観塘まで故に観塘線と名付けられた由来など思い返しながら油塘乗換えとなり不便になった地下鉄にて帰宅。今にも雨降出しそうな雲行きの黄昏になぜか心地よく書斎の整理などしつつタンカレーにてマティーニ一飲しカザルスの無伴奏チェロ組曲聴く。午後三時に茶屋にてカレー食したのにざるうどん。但し先週からの摂生功を奏して体脂肪率は20%を下回り安堵。荷風日記昭和十一年初春よりを読む。二二六事件。荷風先生の観察眼震災の夏の猛暑など天変地異生じるまえの異常気象に敏感にて二二六事件の二月も帝都の豪雪を日々語り続けたり。