富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月二十六日(木)小雨。薄暮ジム。Z嬢Citysuperにてオリエンタルマースカリーを仕入れ賞味す。昔の、あの好く言えば懐かしく悪く言えば安っぽい味のカレーにてオリエンタル社は「 終戦直後から作り始めいまも粉末タイプにこだわる」と宣う。あまりの味の単調さに「特製マースチャツネ付き。チャツネを入れてじっくり煮込むと、味に深みが出るカレールウです」と紹介あるのでZ嬢そのチャツネを入れ忘れたのでは?と質すとちゃんと入れてその味(笑)。このマース`ャツネ「フルーツのほのかな酸味と上品な甘味に、スパイスの辛さがほどよく溶けあって材料の旨味とまろやかさを引き出します」そうだが一瞬火星のMarsかと思い神秘的だと感心するが、Mango、Apple、RaisinのSpiceの略にてチャツネはカレーの調味料を意味するChutney。懐かしいのは味よりも、あの夢路いとし・喜味こいしの『がっちり買いまショウ』がグリコの提供になるまで昭和40年代初頭だったかこのオリエンタル社の提供だったこと。内田百●『東京日記』読む。黒澤明の『夢』の映像彷彿する奇譚。新聞(朝日)に北朝鮮拉致問題と「よど号」関連の記事あり拉致容疑に八尾元店主とあり八尾元(やおげん)の店主かと一瞬思うが八尾なる女性がスナック経営をしていたがためそのスナックの店主で八尾元店主。しかしこれはスナックならやはりママ、男性ならマスターのほうが良し。
▼だいぶまえの『信報』に掲載されし評論であるがオックスフォード大学に寄す劭新明なる経済学者のもので一読にかなり値する。
香港が第二のアルゼンチンになるか?ならぬか?と考えることは荒唐か。国家破綻せしアルゼンチンに比べ香港は銀行も隠定、政府備蓄も充裕、比較にならぬ、と思えるだろう。しかし共通点は固定相場制。98年当時IMF亜爾然丁政府の穏健なる財政管理と貨幣規制を称賛しており、香港は今年になってもIMFがその通貨管理制度とUS$1=HK$7.8のPEG制度が評価されている。政府支出がGDPの24%であることはアルゼンチンと香港はほぼ同率。香港の財政赤字GDPの5.5%でアルゼンチンが97-98年は僅か2.5%で2000年に3.6%に上昇したが香港より低い数字。公務員は全人口比で香港は10%、アルゼンチンは12.5%。対外債務については対GDP比でアフガニスタンは50%に及ぶが香港は無債務にてこれは評価できるが香港は個人外債はGDPの2.2倍!。IMFは今年七月のアルゼンチン問題検討会にてアルゼンチン財政危機の原因として、財政赤字の増大と日々疲弱する財政政策の二つを挙げた。まさに香港もこの問題に直面しており香港の毎年HK$600億から700億を推移する財政赤字ではあと五年以内に政府備蓄が底をつく。
問題点を整理すれば
まず「香港ドル危機が訪れることは時間の問題」であること。香港ドル切り下げも予測される中で財政赤字解消のため増税では経済に更に打撃を与えるだけで政府支出の大幅削減をするしかない。公務員人件費が政府予算の70%、一般家庭の「一戸当りの総収入」平均が月額HK$19,000なのに対して中級職で月給HK$24,000(38万円!)、問責制官員となれば年収HK$400萬、金融管理局総裁はHK$800萬、大学教員の給与はハーバード大学より40%高い。固定相場制を続ける香港ドルは対米ドルで40%過大評価されており、対人民元ではそれが80%に及ぶ。では変動相場制にすればいいのか。しかし問題は香港には貨幣政策をとれる真才実料の中央銀行がない。一般人は金融管理局をそれと誤解しているが、固定相場制に安住しており変動相場制で為替や通貨政策をする経験に欠けており、かりに変動相場制に移行するならその前に金管局の領導層の入れ替えが必要。
第二に「貧富の差の拡大」も深刻。収入分布を示す堅尼系数(調べたらジニ係数というもの)が96年0.476だったものが現在は0.53にまで上昇しており、これが「1」となると一個人がその対象地域の収入を独占することになり、この数値が1に向けて高くなるほど革命のおきる確率も高くなろうというものだが、アルゼンチンでも99年で0.49はフィリピンと同率、中国「ですら」0.42と香港よりマシである。
最後に香港社会がかなり不安定となっていること。公務員の贈賄などを監督する廉政公署(ICAC)による警察の高級警官の逮捕について警察側が正面からICACを非難し、ICACの代表である廉政専員の交替で新任は警察のトップである警務処長より等級の低い職にある公務員となり警察の立場が上になってしまったこと。警察と暴力団の親密化など汚職の深刻化が懸念される。また董建華は公務員上級職を集めてブレインストーミングの会合など開催し才能ある職員を積極的に昇進させ活用していく方針ではあるが、それなら何故に外部から官公庁トップを招聘する問責制が必要なのか。我々の指導者(董建華)はこのようにアホで幼稚であるのなら、香港が第二のアルゼンチンになっても不思議ではないのではないか?
世界が香港のことをおもい悲しみに涙する日が来ないことを望むばかりである。
▼新聞各紙に李登輝氏が「尖閣列島は日本領土と発言」とあり沖縄タイムスの単独会見で言及とあり香港マスコミには「中国人にあるまじき」反李登輝感情があるからまた李登輝の「日本が日本領土と主張する歴史的根拠も理解できる」といった発言をマスコミが改竄とまでは言わぬが拡大解釈でもして報道したものかしらとも思ったがなにせ「22歳までボクは日本人だったんだ」の岩里政男さんであるから……と思い沖縄タイムスみたら確かに、尖閣諸島の領土問題について「中国が領土だと主張するのは、石油埋蔵の問題があったからだ。だが、同諸島には軍隊が駐留しているわけでもない。尖閣は明らかに日本の領土」と断言。「香港の人に扇動された台湾漁民が騒いでいたにすぎない」と強調した、と(汗)。これじゃ報道の通り。マズイ(苦笑)。領土抗争ほど根拠なき泥仕合はなく尖閣列島が日本か中国か、はたまた台湾かというまえに琉球であり、では琉球が日本に「帰属」する根拠は……と問ふていけばキリはなし。尖閣列島無人島であるからまだよいが、もし島民があり独立を叫んだ時点で尖閣列島琉球帰属すら根拠が危うくなるというわけ。あえて石油埋蔵などの利益には目をつむりキャンプ場でもつくり日本、韓国、中国、台湾からの自由乗り入れでも認めて交流すべし。