富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

二月十六日(土)薄曇後晴。Z嬢未踏破のMcLehose Trail Stage-6(金山)より歩こうということになり朝から恐ろしく野猿多く猿どもに囲まれ乍ら多勢に無勢にて城門水塘に向い生きた心地せず針山(532m)草山(647m)と登り大帽山(957m)に登るつもりもあったが一週間後には香港マラソン(half)もあり無理はせぬかと昼すぎ城門水塘に戻る。Tsuen Wanに出るが折角ここまで来たのだからと深井に赴き裕記大飯店にて焼鵝瀬粉を食すが蘭心鵝心なる炒め物が何かと思えば西蘭花(カリフラワー)の芯(花の部分はないわけだから西蘭芯である)と鵝の心臓なわけでなるほど蘭心鵝心、名前もいいが味も格別。焼鵝はやはりこの店のが私にとっては香港のベスト(つまり世界一か)。赤ミニにて佐敦まで暴走し九龍公園にて来週の香港マラソンのゼッケンなど受取り帰宅。中上健次『奇蹟』読み続ける。ところどころやはり中上君特有の文章構成が読みづらく何度も前述を読み返しそれでも不明朗の箇所少なからずとも面白き物語なり。被差別民たる路地のうちでも中本の<高貴にして澱んだ血>まさに差別が天皇制に絡む問題だが、その血を受け継ぐ若衆のうちでも『千年の愉楽』の若衆たちより何よりこの物語のタイチ少年の若さと研ぎ澄まされた刃物のような美しさ。ふと『チボー家の人々』のジャック少年を彷彿す。思えばこの『奇蹟』は廃刊数年前の朝日ジャーナルに連載されていた物語にて当時連載小説なるもの(今もだが)ほとんど読む習慣なく(当時丁度朝日新聞に連載されていた宮尾富美子『きのね』を除く)かりにこれを読んでみたにしても週刊誌連載では前述に戻れずとても読み続けられまい。▼江沢民国家元首専用機に盗聴器仕掛けられし事件を合州国のWashington Times紙がこの盗聴は李鵬によるものと報道。面白きネタだが李鵬には対江沢民などという浮れた野心はなく単に李鵬家族による贈収賄不正商取引がどう進展するかを怖れる由にて。但し報道がWashington Times(紐育時報でも華盛頓郵報でもなく統一教会系といわれるこの新聞)であるところがミソ。誰が何を意図しての報道か愉快。▼昨日も述べた中国での香港旅行団のバス惨事は半年で22名の死亡!。本日の『信報』社説は秀逸。要約は以下の通り。この問題は単純な安全性であるとか運転手の資質訓練程度規律の問題に非ず大凡これは法律と道徳を受け入れられぬ放漫な資本主義初級段階にあって承認は貪欲、公務員は法に従わず汚職腐敗が厳重であることに問題がある。中国は公式には社会主義の初級段階にあるというがこれは現実を欺く論法にて現実には資本主義の初級段階にあり資本主義にて金儲けができる官吏と市民は血眼になり合法非合法手段を選ばず利益に走る。この事故とて利益を得るには人件費などのコストを下げ(400km以上の長距離走行には運転手二名が法規定ながら一名のみ)本来そういった違法を取り締まるべき官憲が贈収賄で見逃す法風土に問題あり、と。▼李鵬マカオ訪問は賭場経営権問題の平和裏での割譲に見られるマカオ特区政府の安定した政策に対して中央政府が全面的な支持表明であり今回賭場経営権についても中央はマカオ特区政府の自主的な運営に任せ、また対台湾交渉窓口の内陸以外での初の事務所をマカオに設けたことも信頼の表れ、と『信報』までが報じるがこれは明らかに誤解。賭場など基本的人権も民主主義も関係ないから香港の問題(内地子女の居留権、香港では「まだ」合法の法輪功問題など)と異なりマカオ役場に事を任せられるのであり李鵬訪問も対台湾窓口事務所設置もマカオは邪魔な「報道がない」のと「権力の自由」があるから北朝鮮高麗航空を飛ばし在マカオ総領事館が機能しているのと同様マカオが重視されていることが事実。▼ブッシュ君「小泉改革に期待を表明するため」訪日(笑)。森首相のアフリカ訪問の際の「給油のためのテクニカルストップオーバー」での香港滞在海都海鮮酒家での食事のほうがまだ「美味いモノ喰いたいんだよ」と本音見えて「森君自身が給油か」とまだ具体的。ブッシュ君の明治神宮参拝、なぜ反米右翼の諸君はそれを阻止せぬのか。石原君はこの参拝を容していいのか。いずれにせよ明治神宮じたいが一木一草綿々と宿る神々とは全く関係もなき明治以降の国家主義装置にすぎず。小泉君は流鏑馬だけの見学などといわず堂々と参拝すべし。▼明日のG1フェブラリーS(東京11R/1,600m)はまたペリエ騎にてノボトゥルー?。アグネスデジタルかと思いつつやっぱり地方競馬からの参戦トーシンブリザードに期待。それにそてもフェブラリーSとは味気ない野暮な名前。如月賞はあるから使えぬか。▼栃木県矢板市にて開校準備されつつある小中高一貫校の設立計画に対し文部省は学習指導要領に則さねば学校として認めずと。独逸のシュタイナー教育に依る学校にて文部省の学習指導要領でシュタイナー教育を斬ろうとはたかだか国家教育機関がシュタイナーに対して身分不相応な振舞い。むしろ文部省はシュタイナー教育の爪の垢でも煎じて痛飲すべし。▼サイード君、本日の大江君への書簡にて<テロリズム>なる語の不明朗な用法であることを述べる。余なら<テロリズム>とは「きっかけは間違っていないが手段は正しからず結果がでない闘争」とでもするか。思わずコロンビア大学のサイトから氏のアドレスを知り一文を送り序でに石川啄木の「ココアのひと匙」があることを即興にて英訳し送る。

"A tea spoon of chocolate"
15 June 1911
In Tokyo

I understand his sad heart of terrorist,
a heart cannot divide to words and real action.
His words was robbed,
then he just have to do it by action.
A heart throw us and our body against our enemy.
It's sadness always honest and earnest men has.

Taste a cold chocolate, a tea spoon of chocolate
after our endless discussion,
its a little bit bitter taste
I understand his sad, sad heart.