富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

二月四日(月)曇。先週末より咳あり昨晩は呼吸で気管支ががさがさとうるさく眠れず黄昏Robinson RoadのL医師の診療所。一二度診療を受けただけだったが沙田の競馬場で遭遇しそれ以来掛り付けとなる。聴診器で呼吸を確かめ咳止めのシロップは強く睡魔に魘われる故に晩もう寝てもいい時間に服用すべしなどとL医師に愉快な事を告げられ帰路自宅にあがる昇降機の中で一口服用す。お酒より上品に酔えるのが好し。Robinson Roadといへばかつては日本人観光客もちらほら見えたBruce Lee Cafeが潰れていたことを先週耳にしていたがL氏診療所の斜め向いがこのBLCにて中を覘くと残骸。かつてはRickshow Bar(力車=人力車である)なるかなり植民地色の強い名前で此処と数軒隣りにて現在ジャズ屋Brownになつている場所にあったDriftersなる二軒は蘇呆地区などできる以前から場所柄知る人ぞ知る毛唐バー。97返還の頃にDrifters(この名前も日本語ではすっかり「ドリフ」だが実はかなりな名前である)が一旦Animal某(失念するがアニマル浜口でなき事だけは確か)なる店となり案の定すぐ潰れHappy Valleyにて開業したばかりのBrownが店を開きJazz Spotとしてそこそこ人気。Rickshow Bar、麦酒で腹がふくれ小用にとトイレという矢印に従い階段を上るとジムがあるというかなり不思議な店でかつては在港邦人のバンドなども土曜の午後などライブす。名前をBruce Lee Cafeと変えしは店主の西洋老人香港在住長くかつての香港量産映画でいわゆるDHエリックの如く何であれ「ガイジン役」にて映画に出ており李小龍の『怒りの鉄拳』だか何かにも役がつき関係者といえば関係者。それ故に故人を偲びこの名前にし、店に故人に由縁の品を展示したまではよかったが、この路線に旧来の客が離れ一時は少なからず李小龍ファンが訪れたが単なるバーといえばバーにて、ジムも会員集まらずレストランと模様替えしPizzaが美味いと評判にもなったがそのシェフが去り閑古鳥鳴き続けたり。▼幼児が34インチのテレビの搭載された台の引出しを開けようとしてテレビ転倒し幼児圧死。74kgのテレビを載せるには余りにも貧弱な家具にて狭い家に必要以上の大きさのテレビを設置する悲劇。香港の地域型災害である。▼小泉支持率49%に激減。不況や改革に無策でもそれを厳しく問えず田中外相更迭というだけでこの不支持とは小泉君本人の問題よりつまりは雰囲気にて「小泉さんなら何か変えてくれる」という国民の安易な支持とそれからの乖離にて政府も最悪だが問題はその政府を維持する国民にあり。▼本日の『信報』林行止専欄に「大型公關及反環球化生意經」つまり「大型Public Relations反グローバリズムのビジネスとしてのつながり」という文章あり。ちなみにPublic Relationsは日本語では宣伝、広告とされるが対公共関係の意としては宣伝、広告といった狭義では捉えきれず漢語の公關のほうが政治的正確か。文章の大意は、World Economic Forumが今年は初めてスイスは達沃斯の地を離れ紐育にて開催されしは表面上の理由はこの会議(つまり世界経済)が911惨劇に見舞われし紐育市に対して支持と信心の表明にあるが、実際の理由はスイス当局がこの会議の保安費用についてすでに高負担感あり、考えてみればこの非貴即富(政客でなく企業主とCEO)のRich and PowerfulGatheringを標的とするテロと反グローバリズム化分子によるデモ活動のための支出は多く紐育市はこの会議のために配置し2,700名の会議関係者の身の安全を守るため市警の10%にあたる四千名の警官を動員、紐育観光協会はこの会議開催がUS$15Mのカネを紐育に落とすと皮算用するが会議会場となった華爾道夫酒店と一部の高級レストランを除けば一般の小売業や飲食店など実利もなく、この会議はすでに何を語りあうかなど重要でなく単に公誼與公關性(企業間友好と対公活動)程度の意義しかないものにて、真摯に経済を語ろうとする者はすでにこんな会議に出ておらず、と林行止。それに対してこの会議に異を唱える反グローバリズム組織もその大型の組織活動を見ればその財源は何処に?。ここに視点を向けるのが信報が一流の経済紙である由縁なのだが、世界的なこういった第三勢力団体の資金源は大きく二つあり、一つは桑港のFoundation for Deep Economy(基金としてUS$150Mから200Mを保有する反大企業寡占、自然保護などに重点を置く投資基金)を筆頭とする基金であり、もう一つが欧州の労働組合にて、各国政府は97年でいえばオランダがUS$6.7M、独逸がUS$60Mなどスウェーデンノルウェー、カナダなど政府与党が「社会的公共利益に組みする」組合の票確保のため公的資金を拠出しておりそれが反グローバリズムに流れている、と指摘。つまり資本主義社会にあって反資本主義を標榜する者たちの資金がつまりは資本家と納税者から拠出されている矛盾があるのだ、と林行止。