富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月十八日(火)雨。晩に香港大学創立90周年記念校慶之夜"Grand Reunion"開催され大学美術博物館員でトレイルと競馬の畏友AH君より誘われ灣仔Convention Centreに趨く。250卓3,000名余のGalaにて大学関係者、卒業生に加え政府財界の方々多く余は香港美術博物館の卓の末席につく。此処にて爆弾炸裂すれば政府は行政長官以下司長局長部長級高級官僚、司法立法之長、財界は賭王スタンレーホー君筆頭にお歴々集うが故に香港木端微塵、唯一胃痛(笑)にて不参加の政務司司長ドナルド“蝶ネクタイ”曾君の天下か。AH君より大学博物美術館館長Y氏、香港歴史博物館の総監T博士など紹介される。HK$600/人のコストと聞いて食事も充実かという噂もあったが記念品の香港大学本館ミニチュアはかなり精巧な出来のアイテムにてこれが実はコスト高か、だいたい3,000余名も相手の料理で美味かろうはずもなく、葡萄酒も卓に白と赤1本ずつで追加は有料。英国の仕来に則り港大は実際の学長はVice ChancellorにてChancellorは名誉職にてかつては香港総督が務め1997年以降は行政長官たる董建華君がCHancellorを務めしが董君と港大といえば記憶にまだ新しきは昨夏の董君による港大が実施した世論調査への圧力介入であり自らの支持率低下を憂い董君が側近を使い港大の学長(VC)に世論調査中止を求めその意向が学長からの指示で副学長より世論調査を実施する研究所講師に伝えられたもの。この講師が政治介入を新聞に投書し昨夏港大は独自の調査機関を設け真相解明にあたり結果的に学長(VC)と副学長が辞職に追い込まれたが董君の介入じたいは有耶無耶なまま事実は葬り去られたり。これが政務司司長・陳方安生女史(港大出身、女性で初の上級公務員試験合格者)が董君と袂を別ち亦それが北京政府にも反北京と睨まれ辞職に至った一因でもあり。その董君は当然のことながらChancellorとしてこの晩の大宴会の主賓。この90周年が一年前あれば夏の世論調査疑獄の悪臭抜けずさぞやキナ臭く面白きものを。董君はまさに厚顔無恥、昨年の悪態もまるで何も無きが如く檀上にて祝辞述べたり。祝辞は新エリート主義なるテーマにて、かつては上流階級の子弟だけのためであった高級学府=港大も戦後の香港の経済政庁にて中産階級、また貧しき家庭からも学意さえあらば学ばさんと門戸を広げ今日に至り、かつてのエリート主義が上流階級による市井の民への施政ならこれから大切なのは低層の貧しき家庭からも秀でた英才がエリートとなり政経に加担していくべき、なる馬鹿馬鹿しきスピーチ。董君が所詮家父長主義に基づき、出自はどうであれエリート(と自らを誤解する凡才ども)が統治すれば社会は発展する、という野暮な発想に呆れる。翌19日の蘋果日報にて嶺南大学政治與社会系副教授季彭廣が言う通り董君が知識型経済を標榜するなら「全民提升人力素質」が必要であり社会的人的インフラの向上なければならず新エリート主義とは全く異るもの、と正にその通り。董君の祝辞終わり拍手はせず。卓にて向かいに坐る某講師も拍手せず視線あいお互い苦笑す。港大の華・陳方安生(次期学長という噂すらあり)と董君は卓も離れ遭遇せぬよう配慮あり。昨年の学長辞任にて暫定学長に推挙されしIan Davies教授はそのスピーチに知性人徳満ち溢れる御仁。宴は学部毎、学生寮毎の檀上にての盛り上がりとなり大宴会を辞す。