富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十一月十七日(土)快晴にて新しいトレイル用の靴を下し寶雲道を走り陽明山荘から紫羅蘭山を駆け登り淺水湾凹を抜け南岸まで1時間40分。海岸で矢野誠一エノケン・ロッパの時代』岩波新書読む。曾て某局プロデューサーM氏の下で戦前喜劇に携わったことありこの本も既知の事多かれどエノケン、ロッパとも明治36、7年の生まれにて余の祖母と同年代とは知らず。二人とも壮年時に遠逝したことでかなり過去の人物と思っていたというわけか。音楽の友社創設の堀内啓三が浅田飴本舗の御曹司であること、中山呑海の存在など知る。それにしても見たいのは菊谷栄の書いた『最後の伝令』の芝居であり黒澤明の映画『虎の尾を踏む男達』である。戦争末期に撮られ七年後に公開された作品にて大河内伝次郎の弁慶、藤田進の富樫、仁科周芳(岩井半四郎)の義経狂言回しとして強力役のエノケンとは。午後遅くまた走って帰宅しようと淺水湾凹に入ろうとすると南湾道の向こう側から手をふる御仁あり、見ればA氏。ちょうど山より降りてこられたところにてリパルスベイの大佛口食坊にて巻貝を肴にビール飲みバスで帰宅す。夜、M君、T君来宅。ドライマティーニ、M君持参のBillecart Salmonなるロゼの発泡酒、伊のCorvo'00、南豪のWolf Blass'00、Z嬢お手製のアイスクリームありポートでTaylor's '95にアマレットまで飲む。

そうそう先日読了せし橋本治『二十世紀』にて忘備すべきこと。1991年の湾岸戦争の項にてイランのイスラム原理主義を捉え曰く、
一体、二十世紀において「革命」とはどんな意味を持つものだったのか……この答えがまだ出ないのは、イスラム原理主義革命その後が見えて来ないからである。その革命が「巨大なる国家の支配」にしかならなかったソ連社会主義革命が潰えて、「革命」という言葉は色褪せたように見えた。しかし、「革命の二十世紀」は、まだイスラムの世界に生きているのである。
と、この問題提起を二十世紀末にし、この本としての上梓が2001年1月であると思うとまさに9.11をば予感するが如き達見である。