十一月十二日(月)曇。黄昏に灣仔を歩けば利東街は年暦聖誕祭賀状類扱う店並びいまだ暑き日続けど年の瀬季節柄朱に金と目出たき年暦いくつも店先に並べ賀状を選ぶ人々にて店繁盛する街頭に一軒客で満つる粥屋あり靠得住と一風変わった名にてふと賞味せむと思いたるが店の看板の字体最近流行りの台湾風喫茶の洒落た意匠にてそれだけで店の亭主のセンスに馴染めず軒を潜らず。中国WTOに加盟す。『なぜ人を殺してはいけないのか』小浜逸郎(洋泉社新書)をかなり期待して読むが従来の倫理以上の何かを感じられず。共同社会を維持するために……といわれても個々の構成員の魅力のなさ故にその共同社会に価値がもてぬ以上どうすればいいのか余には皆目わからず。橋本治『二十世紀』もかなり日を要して読了す。六十年代くらいまでその年のなにか一つの事象それも普通の歴史家が着目せぬ事象を取り上げ独自に語る治ちゃんに喝采であったが六十年以降に治ちゃんが記憶ありし時代となると単に出来事を並べるだけに陥ってしまい残念。