富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十月十五日(月)晴、極めてHazy。朝遅く建国門外の秀水市場。京客隆は北京のいかりスーパーか紀之国屋というわけでU嬢お勧めの焼栗を購う。1斤14元と高級品。秀水市場にてカシミヤと云われるセーター見るが触れれば安物の混合羊毛であること明白、友誼商店でしかいわゆる羽仁五郎加藤周一モードの黒のタートルネックのセーターは見つからず香港よりHK$500安いということで購入。普通の1号路バスが1元なのを3元も徴収する特1のバスにて西単。新華書店の総本店の大きさにも驚いたが昔ながらの街並みは何処、巨大なショッピングセンターのビルばかりで入る気にもならずタクシーで前門。都一處にて焼麥を昼に食す、至極。店に郭沫若が揮毫の「都一處」の巨きな額、1963年にこの店にて乾隆帝より店が賜ったという帝揮毫の「都一處」に落款がなかったこと(没落下款)に郭沫若敬意を表し自らも落款せず。見事な揮毫の目下の卓にて昼餉とは心地好し。一旦ホテルに戻り90分ほど時間あり急ぎ故宮。実に五度目の上京にて初めて故宮に足を踏み入れるたり。但し午門より北の神武門までを一気に30分余で駆け抜け恐らく故宮見学最短時間かと思う。どうせなら北京マラソン、ゴールを天安門とし走者最後は宮内へと参入し太和門を潜り太和殿にて完走の栄誉を授かるくらいの演出は如何か、と思う。順貞門を出てところでばったりと香港の知人H先生と遭遇する奇遇。八旬を越えた老母を連れ都見物。ホテルに戻りタクシーにて北京空港。Z嬢と一旬記念にと免税店にて1992年のDom Perignonを奮発し購う。某ラウンジにて京客隆の焼き栗と青島麦酒はいいマッチング。港龍航空903便。機内にてJRAの『優駿』と橋本治『二十世紀』読む。橋本治は言ってみれば結果論で歴史を語ってるんだけど結果論じゃない歴史なんてないわけで徹底的に結果論で歴史の因果関係ってのを紐解いてみると歴史ってこんなことで動いてきたのかという実に誰かの、そして民族の恣意なわけで、二十世紀ってやつは「終わってしまった十九世紀の痕跡を九十年もかけて消そうとしている世紀」だったりして……と治ちゃん口調。橋本治が語ればこの二十一世紀初頭のポスト冷戦の宗教っていったい何なのかと気になる。香港に戻り遠くまで続くビルの夜景に北京の大気汚染を念う。眠れず『二十世紀』読み続ける。