富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

八月十三日(月)晴。朝、ホテルを出て九段下、靖国忠魂社前より皇居一周走る。初めて宮城を一周してみれば北に靖国なる宗教、千鳥ケ淵に霊園と桜林、西北に英国大使館なる唐国、国立劇場という文化、最高裁判所という司法、そして国会が立法、霞が関の行政、丸の内に企業とよくぞここまで各種各様の象徴が皇居を囲むと知る。ホテルに戻り銀座。銀座二丁目のトラヤ帽子店にてトラヤ特製のサシAポークなる品番の黒の夏用帽子購う。教文社にて雑誌漁り。昼にX社総研部に勤務する図鑑君と天賞堂模型売場にて待ち合わせ、煉瓦亭にてオムライスとカニコロッケ食す。図鑑君には九龍バスの勝利二型のミニカーを渡し、バーターでバンダイウルトラセブンポインター号、マッハGo Go Go! のマッハ号、流星号のミニカーを受け取る。午後、歌舞伎座裏の喫茶店にて朝日新聞編集部のH君、芝居のことなど情報交換。築地にて月本裕氏と待ち合わせ『ソトコト』編集部にて打ち合わせ。夕方理由もなく表参道から神宮前、渋谷と歩く。東京にて唯一ここだけを眺めていれば景気がよさそうな、まだまだ何か生まれそうな活気のある一帯(実はそうじゃないのだが)。恵比寿の上海なるバーにて十数年前の如くZ嬢と待ち合わせるが、信州の蕎麦や肴を供すななき、酒寮さいきはお盆にて休み、鉄板焼のうめやとつくねをまくらと云う名前失念の焼き鳥屋はすでに消滅しており落胆、路頭に迷い極めて空腹にて香月でねぎらーめんで済ます。恵比寿駅前に野上彌生子全集29巻10,500円と大きく掲げる、変貌甚だしい恵比寿にあってここだけは変わることのない古本の戸山書店にふらりと立ち寄るとさがしていた矢田挿雲の『江戸から東京へ』(中央公論社)全9巻を10,000円で見つけ購う。戸山書店の温情とウィットあふれるご亭主と暫し談義、名前失念の焼鳥屋の名は豊勝といい曾ての店はビルとなったが裏の山手線土手沿いにて仮店舗にて営業中と聞き訪れるがやはりお盆休み。『江戸から』を携え歩けず一旦ホテルに戻る。総武線の車内にて乗客の会話でZ嬢が夕方遭遇せし靖国上空に蝿のように舞うヘリコプターの群れが小泉君の靖国参拝と知る。ホテルに荷物置いてまだ乗ったことのない南北線にてZ嬢と麻布十番、六本木まで散歩、六本木に我らが腰を落ち着けるような飲み屋は存在せず青山ブックセンター、雑誌数冊、栗原彬・小森陽一ら編『越境する知5・文化の市場:交通する』(東大出版会)を購う。六本木よりやはり初めての大江戸線にて都庁前経由にて飯田橋に戻る。駅毎の設計が斬新というか奇抜すぎて醜悪、駅にあれだけ資金を投入する前にあの騒音と揺れのひどい列車本体をどうにかすべし!
首相小泉君靖国神社十五日参拝の英断を撤回し急遽本日参拝せし。小泉君はA級戦犯云々ではなく数多くの戦没者に対しての哀悼というが国家神道の神社にて数多くの戦没者のうち一部の英霊なる神のみを祀る場所への参拝にて小泉君の観念は正しからず。これを以て無知な民が「外国の圧力に屈して」と感じ外国への反発心のみ高めるわけで全く無益。