富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

七月十六日(月)雨。IOCに君臨せしサラマンチ引退す。誰一人口答えできぬ王国を築きしサラマンチここであらためてサマランチが西班牙フランコ独裁での党最高幹部の一人でありカタロニアで労働者の反独裁闘争に流血の弾圧を加える責任者であったこと、そのファシストフランコ後の左翼政権下でIOCに逃げ商業オリムピック主義を徹底し、バルセロナにてのオリムピックにどういう背景があったか等を考えてみる必要あるが、サマランチのこの影に言及するマスコミは稀、ここ数日で目にしたるは香港の経済紙『信報』のみ。一昨日黒澤『七人の侍』見たる夜より黒澤映画を様々考察するにふと合点いきたるは『影武者』にての勝新太郎の降板なり。天才監督と天才役者の組み合わせ、何がまずかったかといえば、黒澤にてその良さが発揮される三船敏郎志村喬と異なり勝新は黒澤の演出が不要なこと、他者へのまなざしの交差がエロティスズムを生む黒澤の世界において勝新は自分の演技に酔えるから他者を「まなざし」としては見ず(他の役者など見てもしょうがない!)、何よりも演者も製作員もとにかく黒澤を拝む世界にあってそれをできぬ勝に居場所なし、ということなのか。